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11、招待状を受け取った同級生たち⑥:一之瀬 大雅
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「……悪いけど、君に興味ない。」
今日も女性からのほとんど一方的な告白を断っていた一之瀬大雅。
そして、こっちの都合も考えないで強引に告白してきて、断られると決まって泣き出して、一之瀬を「ヒドイ!」と罵って去っていく女たち。
「………はぁっ。」
ひどい頭痛に襲われているのか、こめかみを押せてため息をつく。
「よ! 災難だったな。」
と同僚が肩を叩いて声をかけてきた。
「……ウンザリだ。」
同期でわりと仲が良く、事情も軽く知っていた相手なので思わず本音が漏れてしまう。
「まあ、あれでも減った方か……。」
ーーそう、同期が言った通り、会社だろうとどこであろうと一之瀬大雅はモテた。
それこそ若い新入女性社員から、ベテランの女子社員、お局と呼ばれるようなかなり年上の女性社員からもモテたり。
しかし、厄介なのは自分の会社の女子社員だけならよかったが、時には取引先の女性社員からもモテてしまうこと。
ただ、騒がれるだけなら問題ないが、それこそ取引先の女性社員から告白でもされてしまえば、厄介でしかない。
仕事に影響されないからだ。
だから、いつしかできていたのは《暗黙のルール》。
『一之瀬大雅に告白するならば、会社関係者に力を借りてはいけない』
『一之瀬大雅に告白するならば、フラれる覚悟をもって告白すること』
『一之瀬大雅に告白するならば、フラれても逆恨みしない』
『一之瀬大雅に告白するならば、フラれても会社に苦情をいれないこと』
大袈裟かもしれないが、実際にもめたことがあるから必要な処置であった。
一之瀬大雅は、昔から……それこそ、子供の頃からは勿論のこと、中学の時もそれはもうガッツリとモテていた。それもかなりの数に、学年関係なくモテていた。モテすぎるほどにモテていた。
それこそ会った瞬間に、その場でいきなり告白された経験もあった。
昔からいきなり告白されてきては、どうすることもできなくて断ると、告白を断れば当然のように相手には泣かれて、さも告白を断った一之瀬が悪いと言われる。
そのままでもそうだったけど、悪いと言われたから「何故だ?」と聞き返すだけで、告白した本人は勿論のこと、それ以上にさらに騒ぐのは付き添い女子たち。
特に付き添いで告白する子に付き添ってきただけのはずの女子たちは、本人以上に厄介だ。
「早く行け行け」と告白女子をけしかけては、本当に告白したかったのかわからない子までに無理やり告白させる。
そして、フラれさせる。
ーーこのことに自分が気付いたわけではないが、それでもよくよく思いだしてみればそうだったような気がしていた。
大抵の付き添いという立場を選んだ女は、邪魔者を排除させるために、それこそ告白なんてする気がなかった子にまで告白させて、フラれさせて、自分のライバル減らしをしているのだ。
本人がそれに気付いた時にはすでに遅く、告白した後。
それこそ泣き寝入りするしかない。
告白なんてものにまで、そんなものが存在するなんて、本当に女は厄介でしかない。
「……まあ、とにかく」
同期の声にハッと我に返った一之瀬。
「イケメンに生まれた宿命とでも思って、やり過ごすしかないな。」
そういって肩をバンバンッと叩かれてしまい、不服そうな顔をする一之瀬でした。
「(そう言えば)」と、ふと一之瀬は今朝届いていて、時間がなくてジャケットの内ポケットに押し込んだ『中学の同窓会への招待状』を思い出したのだった。
ーーいつもより少しだけ長く休憩時間を取れることになり、思いきって昔ながらの喫茶店にきていた一之瀬。
サイフォンで淹れられた香り高いコーヒーを味わう。
「ふうっ。」
一息をついてから、内ポケットから封筒を取り出す。
躊躇なしに封を開けて中身を取り出すと、まずは招待状の方を確認する。ざっと読むと怪訝な顔をする一之瀬。
「(何が無料だよ。)」
と、他の皆と違って無料に喜ばなかった一之瀬。むしろ、無料にかなり警戒していた。
それから手紙の方を読み始める。
『……お久しぶりです。お元気ですか?』
『……中学時代、あなたとは……』
『……といった場所や変な場所で遭遇することが多く、むしろ……でした。』
『……それでもあなたが私に……したことを忘れない。』
『……きっとあなたは……と思っているのでしょう。』
『……それでも私は……』
『……だから、あなたは……』
『……それでは、会える日を楽しみにしています。』
ーー手紙を読み終えるた一之瀬のその目には強い光が宿っていて、表情には暗い影を灯していて、到底手紙を喜んでいるようには見えなかったのでした。
今日も女性からのほとんど一方的な告白を断っていた一之瀬大雅。
そして、こっちの都合も考えないで強引に告白してきて、断られると決まって泣き出して、一之瀬を「ヒドイ!」と罵って去っていく女たち。
「………はぁっ。」
ひどい頭痛に襲われているのか、こめかみを押せてため息をつく。
「よ! 災難だったな。」
と同僚が肩を叩いて声をかけてきた。
「……ウンザリだ。」
同期でわりと仲が良く、事情も軽く知っていた相手なので思わず本音が漏れてしまう。
「まあ、あれでも減った方か……。」
ーーそう、同期が言った通り、会社だろうとどこであろうと一之瀬大雅はモテた。
それこそ若い新入女性社員から、ベテランの女子社員、お局と呼ばれるようなかなり年上の女性社員からもモテたり。
しかし、厄介なのは自分の会社の女子社員だけならよかったが、時には取引先の女性社員からもモテてしまうこと。
ただ、騒がれるだけなら問題ないが、それこそ取引先の女性社員から告白でもされてしまえば、厄介でしかない。
仕事に影響されないからだ。
だから、いつしかできていたのは《暗黙のルール》。
『一之瀬大雅に告白するならば、会社関係者に力を借りてはいけない』
『一之瀬大雅に告白するならば、フラれる覚悟をもって告白すること』
『一之瀬大雅に告白するならば、フラれても逆恨みしない』
『一之瀬大雅に告白するならば、フラれても会社に苦情をいれないこと』
大袈裟かもしれないが、実際にもめたことがあるから必要な処置であった。
一之瀬大雅は、昔から……それこそ、子供の頃からは勿論のこと、中学の時もそれはもうガッツリとモテていた。それもかなりの数に、学年関係なくモテていた。モテすぎるほどにモテていた。
それこそ会った瞬間に、その場でいきなり告白された経験もあった。
昔からいきなり告白されてきては、どうすることもできなくて断ると、告白を断れば当然のように相手には泣かれて、さも告白を断った一之瀬が悪いと言われる。
そのままでもそうだったけど、悪いと言われたから「何故だ?」と聞き返すだけで、告白した本人は勿論のこと、それ以上にさらに騒ぐのは付き添い女子たち。
特に付き添いで告白する子に付き添ってきただけのはずの女子たちは、本人以上に厄介だ。
「早く行け行け」と告白女子をけしかけては、本当に告白したかったのかわからない子までに無理やり告白させる。
そして、フラれさせる。
ーーこのことに自分が気付いたわけではないが、それでもよくよく思いだしてみればそうだったような気がしていた。
大抵の付き添いという立場を選んだ女は、邪魔者を排除させるために、それこそ告白なんてする気がなかった子にまで告白させて、フラれさせて、自分のライバル減らしをしているのだ。
本人がそれに気付いた時にはすでに遅く、告白した後。
それこそ泣き寝入りするしかない。
告白なんてものにまで、そんなものが存在するなんて、本当に女は厄介でしかない。
「……まあ、とにかく」
同期の声にハッと我に返った一之瀬。
「イケメンに生まれた宿命とでも思って、やり過ごすしかないな。」
そういって肩をバンバンッと叩かれてしまい、不服そうな顔をする一之瀬でした。
「(そう言えば)」と、ふと一之瀬は今朝届いていて、時間がなくてジャケットの内ポケットに押し込んだ『中学の同窓会への招待状』を思い出したのだった。
ーーいつもより少しだけ長く休憩時間を取れることになり、思いきって昔ながらの喫茶店にきていた一之瀬。
サイフォンで淹れられた香り高いコーヒーを味わう。
「ふうっ。」
一息をついてから、内ポケットから封筒を取り出す。
躊躇なしに封を開けて中身を取り出すと、まずは招待状の方を確認する。ざっと読むと怪訝な顔をする一之瀬。
「(何が無料だよ。)」
と、他の皆と違って無料に喜ばなかった一之瀬。むしろ、無料にかなり警戒していた。
それから手紙の方を読み始める。
『……お久しぶりです。お元気ですか?』
『……中学時代、あなたとは……』
『……といった場所や変な場所で遭遇することが多く、むしろ……でした。』
『……それでもあなたが私に……したことを忘れない。』
『……きっとあなたは……と思っているのでしょう。』
『……それでも私は……』
『……だから、あなたは……』
『……それでは、会える日を楽しみにしています。』
ーー手紙を読み終えるた一之瀬のその目には強い光が宿っていて、表情には暗い影を灯していて、到底手紙を喜んでいるようには見えなかったのでした。
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