8 / 10
第八話 迫る絶命
しおりを挟む
骸鳥は骨同士をガタガタと震わせる。
イオーネとロナーは一度攻撃を中止し、地上に降りた。
「ッぐ……そうね。翼! 翼の部分を同時に攻撃するわよ!」
「了解!」
もう一度モチに合図を送り、補助魔法をかけてもらう。
そして先ほどと同じ手順で跳躍する。
今度は骸鳥の右側の翼を破壊すべく、同時攻撃に出た。
「せりゃああああァアア!!」
翼の付け根に浴びせた二人の斬撃は、またしても何事もなかったかのように消し去られる。
「マジっすか! ……どんだけ硬いんすか!」
目を丸くするロナー。
同じくイオーネも驚きを隠すことができずにいたが、妙な圧を感じる。
「――はッ!? ロナー!」
「なんすか? ……ってウォォオ!?」
翼に乗っていたロナーと、間近にいたイオーネは突如として噴き出した蒸気によって吹き飛ばされた。
二人はモチとティーガンのところまで転げ落ちた。
「大丈夫!? 二人とも」
ティーガンがすぐさま駆けつけ、二人に回復魔法をかける。
幸い、落下する寸前に異変に気が付いたモチによってかけられた補助魔法によって衝撃は最小限に抑えられた。
「えぇ、だけどあれじゃ近づけない……」
蒸気の成分も気になるところではあるが、何より物理的に近づくことができないでいた。
掴まっている人間を容易に吹き飛ばすことのできるだけの風力。
あれがある限り太刀打ちできない。
「せ、先輩……あれって」
ロナーは顔を青くしながら、彼方に向けて指をさす。
夕陽の向こうからやってきたそれは、まさに絶望に他ならなかった。
「つがい!? そんな……聞いてないわよ」
襲来したそれは、既に対峙している骸鳥より一回り大きい図体をしている、恐らくはオスの骸鳥であった。
翼を羽ばたかせる度に木々は揺れ、土煙が舞う。
メスの骸鳥を守るようにオスの骸鳥はイオーネたちの前に立ち塞がった。
「ま~ずいねこりゃ」
予想外の出来事に笑うことしかできないモチ。
そんなことはお構いなしに、オスの骸鳥は身をかがめて臨戦態勢に入る。
「取り敢えず……ロナー、手分けして戦うわよ」
「手分けって……いけるんすか先輩? まだ一匹だけでも無理なのに」
明らかに無謀な戦法。
端から勝算など無かった。
それは骸鳥が一羽であろうと二羽であろうと同じこと。
ただ死なないレベルの危機的状況が必要だったのだ。
「いいからやるわよ! 危なくなったらお得意の逃げ足を使いなさい」
「わかりましたよ! もっかいバフお願いしてもらっていいっすか」
半ばヤケクソに返事をするロナー。
長い付き合いである先輩イオーネの性格をよくわかっているのだ。
「うい~頑張って~」
モチは軽い言葉を発しながらも、出せるだけ全ての補助魔法を二人に与えた。
ロナーはメスの骸鳥へ、イオーネはオスの骸鳥へ向けてそれぞれ駆ける。
当初は蒸気で近づくことすらできないと思われていたが、あれはどうやら常に使用できるわけではないらしい。
近づくことでわかったが、メスの骸鳥は蒸気を使ったことの影響か体力を少しばかり失っているようにも見える。
この好機を逃すまいと、二人は全力で二羽の翼へ向けて剣を振り下ろした。
「せりゃああァアア!!」
鈍い音が響くが、ビクともしない。
逆に彼女らの腕の筋肉と骨が悲鳴を上げていた。
「くッ……やっぱ全然効かない……」
断念しようと骸鳥から離れた瞬間、ティーガンの声が響く。
「イオちゃん! 危ない!」
「え」
オスの骸鳥から離れた刹那、メスの骸鳥の鋭利な爪がイオーネの腕を切り裂いた。
「いッ……」
血が噴き出し、痛みのあまりそのまま転げ落ちる。
「今回復を!」
ティーガンは彼女の元へ駆け寄ろうとするが、またあの蒸気が噴き出した。
今度はオスの骸鳥によるものだ。
ティーガンが近づけないことを察したモチは、メスの骸鳥がイオーネに攻撃する際に振り落とされたロナーに向けて叫ぶ。
「ロナロナ! イオイオが!」
モチは残量のほとんどなくなってしまったスピード魔法をロナーにかける。
強化されたロナーは、全速力でイオーネの元へ走り出す。
「先輩ッ!」
落下したはずみで意識が曖昧なのか、イオーネはその場から動けずにいた。
そんな彼女を、オスの骸鳥が踏み潰そうと巨大な脚を上げる。
「間に合わない……!」
あと少し、ほんの少しだけ届かない。
あまりにも焦るあまり、脚が絡まりロナーは転倒する。
「はっ……く」
眼前に迫る巨大な足裏。
イオーネは死を覚悟し、目をぎゅっと瞑る。
走馬灯など走る余裕もなく、着実に肉塊へのカウントダウンが始まっていた。
イオーネとロナーは一度攻撃を中止し、地上に降りた。
「ッぐ……そうね。翼! 翼の部分を同時に攻撃するわよ!」
「了解!」
もう一度モチに合図を送り、補助魔法をかけてもらう。
そして先ほどと同じ手順で跳躍する。
今度は骸鳥の右側の翼を破壊すべく、同時攻撃に出た。
「せりゃああああァアア!!」
翼の付け根に浴びせた二人の斬撃は、またしても何事もなかったかのように消し去られる。
「マジっすか! ……どんだけ硬いんすか!」
目を丸くするロナー。
同じくイオーネも驚きを隠すことができずにいたが、妙な圧を感じる。
「――はッ!? ロナー!」
「なんすか? ……ってウォォオ!?」
翼に乗っていたロナーと、間近にいたイオーネは突如として噴き出した蒸気によって吹き飛ばされた。
二人はモチとティーガンのところまで転げ落ちた。
「大丈夫!? 二人とも」
ティーガンがすぐさま駆けつけ、二人に回復魔法をかける。
幸い、落下する寸前に異変に気が付いたモチによってかけられた補助魔法によって衝撃は最小限に抑えられた。
「えぇ、だけどあれじゃ近づけない……」
蒸気の成分も気になるところではあるが、何より物理的に近づくことができないでいた。
掴まっている人間を容易に吹き飛ばすことのできるだけの風力。
あれがある限り太刀打ちできない。
「せ、先輩……あれって」
ロナーは顔を青くしながら、彼方に向けて指をさす。
夕陽の向こうからやってきたそれは、まさに絶望に他ならなかった。
「つがい!? そんな……聞いてないわよ」
襲来したそれは、既に対峙している骸鳥より一回り大きい図体をしている、恐らくはオスの骸鳥であった。
翼を羽ばたかせる度に木々は揺れ、土煙が舞う。
メスの骸鳥を守るようにオスの骸鳥はイオーネたちの前に立ち塞がった。
「ま~ずいねこりゃ」
予想外の出来事に笑うことしかできないモチ。
そんなことはお構いなしに、オスの骸鳥は身をかがめて臨戦態勢に入る。
「取り敢えず……ロナー、手分けして戦うわよ」
「手分けって……いけるんすか先輩? まだ一匹だけでも無理なのに」
明らかに無謀な戦法。
端から勝算など無かった。
それは骸鳥が一羽であろうと二羽であろうと同じこと。
ただ死なないレベルの危機的状況が必要だったのだ。
「いいからやるわよ! 危なくなったらお得意の逃げ足を使いなさい」
「わかりましたよ! もっかいバフお願いしてもらっていいっすか」
半ばヤケクソに返事をするロナー。
長い付き合いである先輩イオーネの性格をよくわかっているのだ。
「うい~頑張って~」
モチは軽い言葉を発しながらも、出せるだけ全ての補助魔法を二人に与えた。
ロナーはメスの骸鳥へ、イオーネはオスの骸鳥へ向けてそれぞれ駆ける。
当初は蒸気で近づくことすらできないと思われていたが、あれはどうやら常に使用できるわけではないらしい。
近づくことでわかったが、メスの骸鳥は蒸気を使ったことの影響か体力を少しばかり失っているようにも見える。
この好機を逃すまいと、二人は全力で二羽の翼へ向けて剣を振り下ろした。
「せりゃああァアア!!」
鈍い音が響くが、ビクともしない。
逆に彼女らの腕の筋肉と骨が悲鳴を上げていた。
「くッ……やっぱ全然効かない……」
断念しようと骸鳥から離れた瞬間、ティーガンの声が響く。
「イオちゃん! 危ない!」
「え」
オスの骸鳥から離れた刹那、メスの骸鳥の鋭利な爪がイオーネの腕を切り裂いた。
「いッ……」
血が噴き出し、痛みのあまりそのまま転げ落ちる。
「今回復を!」
ティーガンは彼女の元へ駆け寄ろうとするが、またあの蒸気が噴き出した。
今度はオスの骸鳥によるものだ。
ティーガンが近づけないことを察したモチは、メスの骸鳥がイオーネに攻撃する際に振り落とされたロナーに向けて叫ぶ。
「ロナロナ! イオイオが!」
モチは残量のほとんどなくなってしまったスピード魔法をロナーにかける。
強化されたロナーは、全速力でイオーネの元へ走り出す。
「先輩ッ!」
落下したはずみで意識が曖昧なのか、イオーネはその場から動けずにいた。
そんな彼女を、オスの骸鳥が踏み潰そうと巨大な脚を上げる。
「間に合わない……!」
あと少し、ほんの少しだけ届かない。
あまりにも焦るあまり、脚が絡まりロナーは転倒する。
「はっ……く」
眼前に迫る巨大な足裏。
イオーネは死を覚悟し、目をぎゅっと瞑る。
走馬灯など走る余裕もなく、着実に肉塊へのカウントダウンが始まっていた。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
辺境の落ちこぼれと呼ばれた少年、実は王も龍も跪く最強でした
たまごころ
ファンタジー
村で「落ちこぼれ」と呼ばれた少年アレン。魔法も剣も使えず、追放される運命だった。
だが彼の力は、世界の理そのものに干渉する“神級スキル”だった。
自覚のないまま危機を救い、美女を助け、敵を粉砕し、気づけば各国の王も、竜すらも彼に頭を下げる。
勘違いと優しさと恐るべき力が織りなす、最強無自覚ハーレムファンタジー、ここに開幕!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる