星は夜に抱かれ光り輝く〜人の顔がお金に見えちゃう貧乏貴族オメガは玉の輿にのりたい!のに苦学生アルファに恋する?〜

虎ノ威きよひ

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損得勘定なしの

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「良い人だったなぁ」

 男爵家の屋敷に帰ったセルジュは、必要最低限の家具を置いた部屋のベッドでカルロスを思い出す。
 まさか夢の中の少年と会うことが出来るとは。
 あんなに素敵な人だったとは。
 まるで、物語の住人になったような気持ちだった。

 あの人と、損得勘定無しの恋がしたい。
 声が枯れるほど大好きだと伝え合って、唇が腫れるほどキスを交わして。

(それから、もっと深く繋がって……)

 セルジュは自分の白い頸に手をやった。
 カルロスの歯形をここにつけてもらえたら、どんなに幸せだろう。

 夢見心地のまま、服に忍ばせていた発情薬を取り出した。

「こんなもの、捨ててしまいたいな」

 薄桃色の液体を見ていると、紅潮した頬に影が落ちて本音が口から零れ落ちる。

 セルジュは家に帰ってきてから現実に引き戻された。
 豪華な調度品に囲まれた伯爵家とは正反対の、質素な部屋。
 子供の頃はもっと色々置いてあった筈だが、沢山のものを売ってしまうしかなかった。

 そしてつい先程、病気で寝ている父を見舞った時に。
 出来るだけ早く財政を立て直して安心させてあげたいと思った。
 何も強要されてはいないが、それが後を継げずとも貴族の長男としての勤めだ。

 弟はまだ子ども。
 自分がなんとかしなければと、ずっと思い込んでいたが。
 一人だけでなんとかする必要はないと、カルロスは言ってくれた。

(カルロスは賢いから、財政を立て直す術を知ってるのかもしれない)

 今の自分は無力だが、カルロスに教えてもらいながら少しずつでも財政を立て直せれば。
 胸を張って彼を婿として、番として迎え入れられるかもしれない。

 心を決めたセルジュは勢いよくベッドから起き上がり、バルコニーへと出る。
 夜風が頬を撫でるのを感じながら、手に持った小瓶を力いっぱい投げ捨てた。
 
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