9 / 12
損得勘定なしの
しおりを挟む「良い人だったなぁ」
男爵家の屋敷に帰ったセルジュは、必要最低限の家具を置いた部屋のベッドでカルロスを思い出す。
まさか夢の中の少年と会うことが出来るとは。
あんなに素敵な人だったとは。
まるで、物語の住人になったような気持ちだった。
あの人と、損得勘定無しの恋がしたい。
声が枯れるほど大好きだと伝え合って、唇が腫れるほどキスを交わして。
(それから、もっと深く繋がって……)
セルジュは自分の白い頸に手をやった。
カルロスの歯形をここにつけてもらえたら、どんなに幸せだろう。
夢見心地のまま、服に忍ばせていた発情薬を取り出した。
「こんなもの、捨ててしまいたいな」
薄桃色の液体を見ていると、紅潮した頬に影が落ちて本音が口から零れ落ちる。
セルジュは家に帰ってきてから現実に引き戻された。
豪華な調度品に囲まれた伯爵家とは正反対の、質素な部屋。
子供の頃はもっと色々置いてあった筈だが、沢山のものを売ってしまうしかなかった。
そしてつい先程、病気で寝ている父を見舞った時に。
出来るだけ早く財政を立て直して安心させてあげたいと思った。
何も強要されてはいないが、それが後を継げずとも貴族の長男としての勤めだ。
弟はまだ子ども。
自分がなんとかしなければと、ずっと思い込んでいたが。
一人だけでなんとかする必要はないと、カルロスは言ってくれた。
(カルロスは賢いから、財政を立て直す術を知ってるのかもしれない)
今の自分は無力だが、カルロスに教えてもらいながら少しずつでも財政を立て直せれば。
胸を張って彼を婿として、番として迎え入れられるかもしれない。
心を決めたセルジュは勢いよくベッドから起き上がり、バルコニーへと出る。
夜風が頬を撫でるのを感じながら、手に持った小瓶を力いっぱい投げ捨てた。
50
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない
こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。
脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない
綿毛ぽぽ
BL
アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。
━━━━━━━━━━━
現役人気アイドル×脱落モブ男
表紙はくま様からお借りしました
https://www.pixiv.net/artworks/84182395
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる