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少し借りるぞ
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ファルケとヴォルフが顔を見合わせるのは、本日何度目になるだろうか。
予想だにしないディランの反応に、二人は思わず立ち上がった。
「我々以外にこの話題は振らない方が良いな」
「ディラン、少し涼んだ方が良いです。場所をバルコニーにでも変えましょう」
「何言ってんだお前ら」
パートナーの居ない者、いや、居たとしても、邪な思いを抱く者が出るかもしれないと危惧した二人の気持ちはディランには伝わらなかった。
実際にそんな輩が出たとしても、ライオン族かつ皇子であるディランにはそうそう何か出来るものではないのだが念には念を、だ。
気味悪げに見上げるディランの肩に、ファルケが手を置いたその時。
「ディラン」
大柄なファルケの腕を掴み、無遠慮に押し退けた者がいた。
青い瞳が熱く燃え盛り、パシンっと長い縞模様の尻尾が床を叩く。
「げ」
まさに話の主題であった影千代から顔を隠すため、ディランはまたテーブルに額をぶつける羽目になった。
(向こうで他の奴らとそのまま話してろよ!)
気持ちの整理が付かないまま会いたくはなかった。
声をかけられてしまったからには何か会話をせねばならぬと思うが、本音を言うとこのまま無視してしまいたい。
そんなディランの気持ちはお構いなしに、腕を強く掴まれる。
引き上げられて、椅子から転げ落ちないためには立ち上がるしかなかった。
顔を上げると、アイスブルーの瞳としっかり目が合う。
久々に影千代を近くで見たせいで、心臓が暴れだしていた。
なんとか赤い顔を隠そうとしていると、視界が急に暗くなり影千代の匂いに包まれた。
影千代の白い羽織を頭から被せられたのだ。
「な、なにすんだよ! とれ!」
「すまない、少し借りるぞ」
「借りていたのはこちらなのでお返ししますよ。廊下を出て右手に寛げる部屋があるのでどうぞごゆっくり」
「助かる」
抗議の声を上げて藻掻いたにも関わらず、頭を影千代に押さえられているらしく外れない。
そうしている内に、影千代とヴォルフが流れるように会話して、この後のことを決めてしまったようだ。
くつろげる部屋、というのはパーティーで盛り上がった二人が互いの相性を確認し合う部屋だ。
ディランは何度も雌とその部屋に入ったから知っている。
ソファしかないため本格的なことは出来ないことにはなっているが、気にせず体を重ねる者もいる。
ディランは何も見えない状態で腕を引かれ、大いに焦った。
「ちょ、ヴォルフ! ファルケ! 待て待て影千代、待てって!」
しかし抵抗という抵抗も出来ない。
影千代に導かれるままについていくことになったのだった。
ディランと影千代を見送ったヴォルフは、一仕事終えたように肩から力を抜く。
そして、ファルケへと労りの目線を送る。
「大丈夫ですか?」
「袖が無ければ羽がもげるところだった」
影千代に爪が立つほど握られた腕を摩りながら、ファルケは楽し気に笑った。
予想だにしないディランの反応に、二人は思わず立ち上がった。
「我々以外にこの話題は振らない方が良いな」
「ディラン、少し涼んだ方が良いです。場所をバルコニーにでも変えましょう」
「何言ってんだお前ら」
パートナーの居ない者、いや、居たとしても、邪な思いを抱く者が出るかもしれないと危惧した二人の気持ちはディランには伝わらなかった。
実際にそんな輩が出たとしても、ライオン族かつ皇子であるディランにはそうそう何か出来るものではないのだが念には念を、だ。
気味悪げに見上げるディランの肩に、ファルケが手を置いたその時。
「ディラン」
大柄なファルケの腕を掴み、無遠慮に押し退けた者がいた。
青い瞳が熱く燃え盛り、パシンっと長い縞模様の尻尾が床を叩く。
「げ」
まさに話の主題であった影千代から顔を隠すため、ディランはまたテーブルに額をぶつける羽目になった。
(向こうで他の奴らとそのまま話してろよ!)
気持ちの整理が付かないまま会いたくはなかった。
声をかけられてしまったからには何か会話をせねばならぬと思うが、本音を言うとこのまま無視してしまいたい。
そんなディランの気持ちはお構いなしに、腕を強く掴まれる。
引き上げられて、椅子から転げ落ちないためには立ち上がるしかなかった。
顔を上げると、アイスブルーの瞳としっかり目が合う。
久々に影千代を近くで見たせいで、心臓が暴れだしていた。
なんとか赤い顔を隠そうとしていると、視界が急に暗くなり影千代の匂いに包まれた。
影千代の白い羽織を頭から被せられたのだ。
「な、なにすんだよ! とれ!」
「すまない、少し借りるぞ」
「借りていたのはこちらなのでお返ししますよ。廊下を出て右手に寛げる部屋があるのでどうぞごゆっくり」
「助かる」
抗議の声を上げて藻掻いたにも関わらず、頭を影千代に押さえられているらしく外れない。
そうしている内に、影千代とヴォルフが流れるように会話して、この後のことを決めてしまったようだ。
くつろげる部屋、というのはパーティーで盛り上がった二人が互いの相性を確認し合う部屋だ。
ディランは何度も雌とその部屋に入ったから知っている。
ソファしかないため本格的なことは出来ないことにはなっているが、気にせず体を重ねる者もいる。
ディランは何も見えない状態で腕を引かれ、大いに焦った。
「ちょ、ヴォルフ! ファルケ! 待て待て影千代、待てって!」
しかし抵抗という抵抗も出来ない。
影千代に導かれるままについていくことになったのだった。
ディランと影千代を見送ったヴォルフは、一仕事終えたように肩から力を抜く。
そして、ファルケへと労りの目線を送る。
「大丈夫ですか?」
「袖が無ければ羽がもげるところだった」
影千代に爪が立つほど握られた腕を摩りながら、ファルケは楽し気に笑った。
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