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第一章
間違ってたら恥ずかしすぎる
しおりを挟む「なるほど、じゃあ彼女が才女と名高い婚約者、オルキデ侯爵家のラナージュ嬢か」
私は今、座り心地の良い一人掛けのソファに座って温かい紅茶を飲んでいた。
仲良くなりましょうの握手の後、アレハンドロの希望通り教科書に名前を書くために部屋を移動した。
ものの数秒で目的が済むと、アレハンドロが茶でも飲んでいけと言うのでお言葉に甘えている。
アフタヌーンティーの時間は少し過ぎていたが、お茶をするのは何時でも嬉しい。
皇太子の部屋は私の部屋より随分と広い。
浴室まであったため、もしかして自分でお茶を入れるスペースがあるのかと思いきや、もちろんそんなわけはなく。
寮の食堂で働いている人が、部屋まで紅茶とクッキーを持ってきてくれたのだ。
さすが皇太子、学園でも特別扱いだ。
しかし皇太子の部屋でテーブルを挟んで向かい合わせになりながら、お茶をいただき優雅に雑談しているなんて。
今朝からは全く想像出来なかった。
仲良くなるの早すぎでは?
まぁ学生時代は友情を育む時間がこんなもんだった気がしなくもないけども。
甘い香りのする紅茶に幸せを感じつつ、実はずっと気になっていたことを切り出していた。
バルコニーで見た、一緒にいた女子生徒についてだ。
答えはもう出ている通り、皇太子の婚約者だった。
皇太子の婚約者がブロンド縦巻きロールとは。
そんなテンプレートなことがあるとは。
アレハンドロが言うには、私の部屋番号は彼女が教えたらしい。
いや怖いわ。
「なんでお前の婚約者が私の部屋番号を知っているんだ」
私ですら部屋に入る時に聞いて知ったばかりなのに。
「私の役に立ちそうな優秀な人材の情報は全て把握しているそうだ」
アレハンドロはなんでもないことのように言いながら教科書に書いてある名前を確認している。
心配しなくても誤字はないというのに。
「どうやら身の丈に合わない高評価を頂いているようだな?」
「心当たりはあるだろう。デルフィニウム家長男」
(ある)
口では謙遜したが、私が魔術の天才であることは上流貴族の間では有名な話だった。
なぜなら、まだ幼い自慢の息子をデルフィニウム公爵が社交会に連れ回したからだ。
有名すぎて、現在は既に崩御されている前皇帝に呼び出しをくらったほどだった。
当時はまだ5歳だったのだが。
そういうわけで、ラナージュ嬢が私を「将来皇太子に仕えて欲しい優秀な人材」としてピックアップしていても、不思議なことはなかった。
なかったがなんで部屋の番号まで知ってるんだやっぱり怖い。
「貴様の名前も、ラナージュに確認をとった。間違い無いと思ったが、万が一ということもある」
「間違ってたら恥ずかしすぎるだろうからな」
四角いチョコレートクッキーを口に運びながら言うと、ジロリと無言で睨まれた。
実際恥ずかしいだろう。
あのテンションで名前を呼んでおいて人違いは。
穴があったら入って布団被って出てこられないレベルだ。
「お前と一緒にいた、ネルス・クリサンセマムとエラルド・ユリオプスの名前も言っていた。あの2人、食堂の件で妙に注目されていたからな」
(お前のせいでな)
他人事のように言うなと内心つっこんだが、そんなことより是非伝えたいことがあるのを思い出した。
「エラルドといえば、お前を助けたのはあれが2回目みたいだぞ」
本人は決して自分から言いにきたりはしないだろう。
2回目とは言ったものの、食堂でのエラルドの行動がアレハンドロを助けたのかというと疑問ではあるが。
「どういうことだ?」
アレハンドロはすぐに興味を持って教科書を膝に置いた。
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