子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

虎ノ威きよひ

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第二章

寝たふりしちゃお

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 アレハンドロと街をうろちょろして夕方には宮殿に戻った。
 街を歩きながら喋ったりお店に入ったり、楽しい時間を過ごした。

 デルフィニウム公爵の場所を聞くと、皇帝と2人で庭に居るらしい。
 仕事の息抜きデートかな。
 庭ってどこからどこまでが庭なんだろうと思っていると、アレハンドロには心当たりがあるらしくついていくことにした。
 
 たどり着いたのは、煌びやかな花が咲いているわけではない、木に囲まれた緑の芝生がある場所だった。

(静か……木陰で昼寝しやすそうな場所だなぁ)

 そう思って木陰を見ると、丁度、皇帝が大の字になって寝ていた。
 その横では木の幹に背中を預けてデルフィニウム公爵も目を閉じている。

 私はアレハンドロと顔を見合わせた。
 まさかの父親2人でお昼寝中だ。
 腕枕とかしててくれたらもっと面白かったのに。

「……お父様の寝顔なんて久々に見た……」

 小さな声でアレハンドロが言葉を落とす。
 やっぱりお父様って呼んでたんだ。

 忍び足で寝ている2人に近づいていく。
 ピクリとも動かない。
 完全に眠りに堕ちている。

「お疲れなんだろうな、2人とも」

 囁くとアレハンドロが深く頷いた。

 デルフィニウム公爵と合流して帰る予定だったが、もう少し後でもいいだろう。起こすのが可哀想だ。

 私は皇帝の真似をしてゴロンと芝生の上に横になった。芝が冷たくて気持ち良い。
 夕方になって、日陰が大きくなりとても心地の良い時間帯だ。
 驚いた顔のアレハンドロが見下ろしてくる。
 私は笑うと、ぽんぽんと隣を叩いた。

「気持ちいいぞ」
「学園じゃないんだぞ」

 呆れたように言いながらも、口元を緩ませてアレハンドロが隣にやってきた。
 寝転びながら見る横顔も整っていて眼福だ。
 穏やかな表情と声でアレハンドロが口を開いた。

「子どものころは王都に来ると、よくここで3人でのんびりした……」

 今も子どもだろお前は、と思いながらまだまだ明るい空を見上げる。
 3人、というのは皇帝皇后、そしてアレハンドロだろうか。

「最近はしていないのか?」
「即位なさってからは、忙しかったからな。両陛下も、私も……」

 即位されたのは確か私が10歳の時だから、アレハンドロも10歳か。
 現皇帝は本来なら皇位継承順位第5位だった。ゴタゴタがなければおそらく皇帝にはなっていない。

 なる予定もなかった皇太子に急にならされて意味不明だっただろうな。
 この子の情緒が安定しない理由はなんとなく思春期と皇太子としてのプレッシャーとかかなーとか思っていたけれど。
 私には想像もつかないストレスだ。

 大変さを共有出来なくて申し訳ないなと思いながら隣を見ると、目を閉じてしまっている綺麗な顔があった。

(寝るの早っ!)

 さっきまで喋ってたのに!やっぱり幼児なのかもしれない!
 とは思うものの、気持ち良すぎて私も眠くなってきた。
 今日は暑い中歩き回ったせいだろうか。
 それとも、この心地よい陽気と芝の匂いのせいだろうか。
 
 体も瞼もどんどん重くなっていって、私の意識は途切れた。
 
 
 ◇
 
 
 ふわふわふわふわと体が浮いているような感覚があった。意識は少し浮上しているのだが、まだ体が動かない。
 こたつで寝てしまった時に親が布団まで連れて行ってくれてる時のような、そんな感じだ。

(気持ちいいからこのまま寝たふりしちゃお……)

 目を閉じたままでいると声が聞こえくる。

「アレハンドロ、いつの間にこんなに重くなってたんだ……! 最後に抱いたのは即位直前くらいだったか? 急に抱いたりおぶったりを嫌がるようになったから……」

 笑いの混じった、おそらく皇帝の声。
 疲れているであろう両親への遠慮だったんだろうなそれ。
 逆に抱っこさせてくれよ疲れてるんだから癒しをくれ。なんて子どもには分からないしな。

「10歳ころになればそうなんだろうな。シンは……赤ん坊のころしか抱いたことがないな。抱いてほしいとも言ったことがない。下の2人は随分長いこと甘えていたものだが……特に娘なんて未だに」

 デルフィニウム公爵の苦笑する声が聞こえる。
 下の2人が標準です多分。私は自分で動けるようになったら抱っこ必要なかったんだよ。
 ハグには付き合ったけども。
 
 微睡みながら2人の会話を聞いていて、何か違和感を覚えた。
 が、ベッドに寝かされた感覚と共に再び夢の世界へ旅立ってしまった。
 
 
 どのくらい経ったのか。
 私はアレハンドロの、

「なんで貴様がここにいるんだ!?」

 と言う声で目を覚ました。
 デジャブか。

「え? なに? ここ、どこ?」

 私は寝ぼけていてキョロキョロするしか出来なかった。
 窓の外はもう暗い。
 
 2人して状況把握できないでいると、皇帝とデルフィニウム公爵が食事しながらこちらを見て、爆笑しているのが目に入った。

「ようやく起きたか!」
「2人とも年相応な表情で何よりだ!」

 アレハンドロと唖然と顔を見合わせる。
 さては酒が入ってるなこの人たち。
 
 まぁ、楽しそうだからいいか。
 
 ゲラッゲラ笑うおっさんたちを見ながらつられて笑った。
 
 
 あ、違和感わかった。
 
 デルフィニウム公爵、陛下にタメ口きいてたわ。
 私には雷落としそうな顔してたくせに。

 その辺の事情を後で根掘り葉掘り聞いてやるから覚悟しておけ。
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