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第二章

2杯目

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 窓の外を見ると白いものがチラチラと見え始めている。
 天気が良いと思っていたのに油断した。
 一番窓際の席でポカポカと日光に当たろうと思っていたので当てが外れる。
 
 今は冬。
 私は食堂で温かいコーヒーを飲みながら、赤くて分厚い本を捲っていた。
 もう少ししたら期末テストの勉強期間がきて、期末テストがあって、それから冬休みだ。

 二学期は一番長いはずなのにあっという間だった。
 平和だったかというと、色々あったのだが。
 まぁ無事乗り越えられそうだ。
 何事も起こりませんように。
 
 ここ最近、私は魔族について研究中だった。
 演劇を観に行った日に「自分が魔王の可能性」に気づいてしまったからだ。

 元々、「これで魔族じゃないんだからすごいなー」と思ってはいたのだが、よく考えなくても魔族じゃない保証がなさすぎるんだこの世界観。

 それでもまぁいいかと思ってはいたけれど、「魔王」であれば話は別だ。

 役者が身近に揃いすぎている。
 最悪、アレハンドロに殺される。
 それは困る。
 元の世界に帰る条件は生き残ることなんだから。

 どうしたらその「魔王として殺される」フラグをへし折れるか。
 それを今、色々考え中なのだ。
 
 いやいやいやいや。
 なのだじゃないよ。
 なんだこの誰にも言えない、ものすごく痛い悩みは。
「自分が魔王かもしれない」ってまじめに悩んでる15歳、面白すぎるだろ。
 絶対ノートに自作の暗号文字書いてる!!
 
 しかし、実際に異世界転移をしてしまっている以上はどうしようもない。
 転移先で勇者や魔王だったという話はよくある。
 そのくらいなら王道だし、想像の及ぶ範囲内ならなんとか手を打ちたい。
 生き残るために、仕方なく真面目に調べ物をしているというわけだ。

 が。

 魔族についての本はあれもこれも想像の域を出ないものばかり。
 そもそも、誰も魔族に出会ったことがないのだから仕方がない。
 図書館にある魔族に関わりそうなものは手当たり次第に読んではいるものの、なんだかなぁという感想だ。

 今読んでいる本も、魔族は魔王と共に現れ国を乱す「と言われている」。彼らは人を騙し、命を奪うことを楽しんでいると「考えられる」。
 といったような感じだ。

 後は魔族が関わったとされている事件などが書いてある。
 魔族の仕業だったら面白いけど、事件内容自体は魔族じゃなくても出来そうなことだなぁという印象のものばかりだ。
 なんせ人間が魔術を使える世界なんだから。
 
 私は陶器のコーヒーカップを頬に当て、ため息を吐いた。

「あれ?シンさま、今日はケーキはお食べにならないんですか?」

 後ろから可愛らしい声が聞こえて、思わず姿勢を正す。そして即座に本を閉じて鞄に滑り込ませた。

 勉強すると偽ってBL漫画を読んでいたら、部屋の外からお母さんに声をかけられた時みたいな反応をしてしまったな。

 振り返るとアンネとパトリシア、そしてラナージュが会釈した。
 私は軽く手を上げて挨拶を返す。

「ああ、もう食べ終わったんだ。コーヒーだけ2杯目を貰ったんだよ」

 今日はミルクレープだったと伝えると、3人とも嬉しそうな声をあげた。
 
 
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