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第24話 鶴翼の陣2
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飛び跳ねるようにして逃げる鹿などの雑魚は、矢や投石によって討ち取られるか、事前に仕掛けられたロープに足を取られその隙に倒される。
血走った目をし猿のような雄たけびを上げ突進する農民兵に対しては恐怖以外の感情ない。
「キエーイ!」
「肉オイテケー!」
「毛皮ヨコセー」
明らかに慣れてる……。
それもそのはず外征の際には領民兵が徴兵されている。
つまり年齢を重ねた農民ほど精兵なのだ。
薩摩隼人と妖怪肉オイテケ、毛皮オイテケが撲殺し、刺殺させる。
接敵する前線を短い頻度で交代し休息をとるその姿はまるで、最精鋭時の古代のローマ歩兵だ。
猪は老いり若い従士や猟師の手で倒される。熊や魔物は従士の手によって倒された。
魔力を用いた身体能力強化があれば熊にも勝る。
「はぁ!」
抜剣からの一閃で熊は地面に倒れ込む。
どしん。
剣技で岩が切れるマンガ世界だけど、熊が一撃なんて……嘘だろ……。
『あるじのおとーさんすごいー』
地に倒れた熊を横目に父に質問する。
「父さま終わったようですね」
「ああ熊の肝は薬になる」
「高く売れるといいですね……」
親子二人で会話を続けていると、駆鳥に騎乗した従士が寄ってくる。
「騎獣上より失礼します」
「構わん話せ」
合理性を重視する父にとっては、この形式的なやり取りさえも「無駄」と思っていることだろう。
「はっ、ご報告いたします。獣共は“穴”から逃走するもかなりの数の討伐に成功しました」
「報告ご苦労。予定通り最小限の人数で残敵を掃討しつつ、成果を運ぶように……」
「はっ。では失礼します」
そういうと駆鳥を走らせる。
獣相手の山狩りとは言え、『鶴翼の陣』を使って『両翼包囲』を成功させた事実に感嘆した。
秘伝たる『使役魔法』は、通信技術が未成熟なこの時代ではチートに等しいものの軍を指揮する将としての父の手腕には憧れる。
「やったぞ! エル、ステップド領を蹂躙する害獣共を打ち破ったぞ!!」
思いつめているように見えた父の顔は、憑き物が取れたように晴れ晴れとして見える。
「エルも初陣でよく頑張ったな」
父はそう言うと俺の頭を乱暴に撫でたせいで、さらりとした長髪が見事にざんばら髪になる。
「強いです」
父の力は強く思わず顔を顰めるものの、これ以上強く抗議するつもりはない。なぜなら父に抗議の言葉を口にしても無駄であり、なおかつ父が俺を労わり愛する気持ちが伝わってくるからだ。
「父さま俺に秘伝の魔法と普通の魔法を教えてください!」
俺は願いを口にした。
戦いとは戦前も戦後も面倒なものだ。
特に戦前は希望的観測や苦渋の決断により開戦するものだが、戦後の処理が上手い事例は数えた方が早い。
戦争の理由や戦争中の軍事行動を考える人間は多いのに戦後となると結果次にどうなるか? と戦後処理を考え学んだ人間が減るからだ。
狩りが終わってからの数日間。何十、何百キロにも上る獣を集め、内臓を処理し、燻製やソーセージといった保存食に加工する日々が続いている。
血や内臓も一滴足りとも無駄にはせずブラッドソーセージに加工してしている。
ブラッドソーセージ自体牧畜が盛んなヨーロッパから東アジアまで広範囲に広がる加工食品で古くは、紀元前8~6世紀頃に成立した叙事詩オデュッセイアにも登場する。
多少癖が強いものの鉄分やミネラル、ビタミンが豊富で慢性的に栄養失調状態である領民や俺には必要不可欠な食事になる。
癖じたい香辛料やハーブを加え調理方法に気を遣うことで美味しく食べられる。
肉とパンはあっても酒がない現状に農民だけでなく従士までも不満が溜まっている。
ビールの消費が加速するだろうこうとは想像に難くない。
「本当に骨も持って帰るんですか?」
「スープ食べたくないのか?」
「食べたいですけどこの量はいらないでしょ?」
うずたかく積みあがった骨の山を持って帰ると言った俺の言葉に、従士は呆れたようだ。
「スープだけに使うつもりはない。実はな……」
「はあぁぁぁぁああああああああ!!」
従士の驚く声が山林に響いた。
血走った目をし猿のような雄たけびを上げ突進する農民兵に対しては恐怖以外の感情ない。
「キエーイ!」
「肉オイテケー!」
「毛皮ヨコセー」
明らかに慣れてる……。
それもそのはず外征の際には領民兵が徴兵されている。
つまり年齢を重ねた農民ほど精兵なのだ。
薩摩隼人と妖怪肉オイテケ、毛皮オイテケが撲殺し、刺殺させる。
接敵する前線を短い頻度で交代し休息をとるその姿はまるで、最精鋭時の古代のローマ歩兵だ。
猪は老いり若い従士や猟師の手で倒される。熊や魔物は従士の手によって倒された。
魔力を用いた身体能力強化があれば熊にも勝る。
「はぁ!」
抜剣からの一閃で熊は地面に倒れ込む。
どしん。
剣技で岩が切れるマンガ世界だけど、熊が一撃なんて……嘘だろ……。
『あるじのおとーさんすごいー』
地に倒れた熊を横目に父に質問する。
「父さま終わったようですね」
「ああ熊の肝は薬になる」
「高く売れるといいですね……」
親子二人で会話を続けていると、駆鳥に騎乗した従士が寄ってくる。
「騎獣上より失礼します」
「構わん話せ」
合理性を重視する父にとっては、この形式的なやり取りさえも「無駄」と思っていることだろう。
「はっ、ご報告いたします。獣共は“穴”から逃走するもかなりの数の討伐に成功しました」
「報告ご苦労。予定通り最小限の人数で残敵を掃討しつつ、成果を運ぶように……」
「はっ。では失礼します」
そういうと駆鳥を走らせる。
獣相手の山狩りとは言え、『鶴翼の陣』を使って『両翼包囲』を成功させた事実に感嘆した。
秘伝たる『使役魔法』は、通信技術が未成熟なこの時代ではチートに等しいものの軍を指揮する将としての父の手腕には憧れる。
「やったぞ! エル、ステップド領を蹂躙する害獣共を打ち破ったぞ!!」
思いつめているように見えた父の顔は、憑き物が取れたように晴れ晴れとして見える。
「エルも初陣でよく頑張ったな」
父はそう言うと俺の頭を乱暴に撫でたせいで、さらりとした長髪が見事にざんばら髪になる。
「強いです」
父の力は強く思わず顔を顰めるものの、これ以上強く抗議するつもりはない。なぜなら父に抗議の言葉を口にしても無駄であり、なおかつ父が俺を労わり愛する気持ちが伝わってくるからだ。
「父さま俺に秘伝の魔法と普通の魔法を教えてください!」
俺は願いを口にした。
戦いとは戦前も戦後も面倒なものだ。
特に戦前は希望的観測や苦渋の決断により開戦するものだが、戦後の処理が上手い事例は数えた方が早い。
戦争の理由や戦争中の軍事行動を考える人間は多いのに戦後となると結果次にどうなるか? と戦後処理を考え学んだ人間が減るからだ。
狩りが終わってからの数日間。何十、何百キロにも上る獣を集め、内臓を処理し、燻製やソーセージといった保存食に加工する日々が続いている。
血や内臓も一滴足りとも無駄にはせずブラッドソーセージに加工してしている。
ブラッドソーセージ自体牧畜が盛んなヨーロッパから東アジアまで広範囲に広がる加工食品で古くは、紀元前8~6世紀頃に成立した叙事詩オデュッセイアにも登場する。
多少癖が強いものの鉄分やミネラル、ビタミンが豊富で慢性的に栄養失調状態である領民や俺には必要不可欠な食事になる。
癖じたい香辛料やハーブを加え調理方法に気を遣うことで美味しく食べられる。
肉とパンはあっても酒がない現状に農民だけでなく従士までも不満が溜まっている。
ビールの消費が加速するだろうこうとは想像に難くない。
「本当に骨も持って帰るんですか?」
「スープ食べたくないのか?」
「食べたいですけどこの量はいらないでしょ?」
うずたかく積みあがった骨の山を持って帰ると言った俺の言葉に、従士は呆れたようだ。
「スープだけに使うつもりはない。実はな……」
「はあぁぁぁぁああああああああ!!」
従士の驚く声が山林に響いた。
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