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第2章 新たなる仲間編

第44話 記者会見と掲示板 Q

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 しかし、流石はプロの新聞記者。混乱状態を自力で解除すると質問を続けます。


『……例えそれが誰かを見捨てる事になってでもですか?』

『はい。二次遭難をしては意味がありません。襲われているパーティーを助けるべきと、講習では教えています。がそれも全ては命あっての物種です。ですから時には見捨てる勇気や決断も必要であると私は考えています』


コメント欄
コメント:『戦わなければ生き残れない!』
コメント:『運命の切り札をつかみ取れ!』
コメント:『綺麗ごとだけじゃ無理って事だな……』
コメント:『バトルロイヤルしてるライダー居て草』
コメント:『最後にジョーカー生き残ってるのも居るぞ』
コメント:『全部主人公が一大事で草』


『弱者を助けるのは、力を持つ者の責務なのでは?』

 質問者ではない新聞社の記者が野次を飛ばします。

『ノブレス・オブリージュのような考え方は素晴らしいですが、それは現実的ではありません。探索者は使い潰される存在ではないのです。
彼らは才ある者です、天より与えらた才を通し社会に還元していますから、欧米の価値観での義務は果たしていると言えるでしょう。
 古代ローマでは貴族や地主は橋や道、公衆浴場を自費で作ったと言います。カエサルや街道を整備したアッピウスが有名でしょうか? 
 武力と言う才能を持つ彼ら探索者に、ノブレス・オブリージュを説くのならば、あなたは彼ら以上に社会貢献を果たしているのでしょうか? 
英国の記録にはこうあります。『確かに、貴族が義務を負うのならば、王族はそれに比してより多くの義務を負わねばならない』と……とても昨今のメディアにそれが出来ているとは私には思えません』

『あ、ありがとうございました。』


コメント欄
コメント:『殴られたら倍返しするスタイルスコ』
コメント:『マスゴミで草』
コメント:『お得意のヨーロッパではを、先に使われて殴られてて草』
コメント:『意気揚々と噛みついたらボコボコにされてて草』
コメント:『蚊の無くような声だけど大丈夫そwwwww』
コメント:『いつも投げてるボールが帰ってきて今どんな気持ち? ねぇ今どんな気持ち?』


『では次にご質問の有る方……ではそちらの女性で……』


 予想外な事に私が指名された。
コニコニ動画は国内動画サイトのため、少し的外れな質問をしても許される風潮がある。
 いわゆる飛ばし記事になるような質問をする事が多いからだ。
 私は緊張で振える身体を押さえつけて、タブレットに移った原稿をナレーションのように読み上げました。


『コニコニ動画の月壬つきみです。ネット上では事態を終息に導いたのは、刀剣を持ったソロの探索者との声がありますがそれは事実でしょうか?』


コメント欄
コメント:『飛ばしネタ過ぎるだろww』
コメント:『ドラゴンころし持ってそう』
コメント:『モン狩りのハンターかな?』
コメント:『いや無双ゲーの主人公だろww』
コメント:『月壬って声優の月壬(つきみ)麻那花(まなか)ちゃんか?』
コメント:『どこの二次元の主人公だよ!』


 私の声で気づいた人も居るみたいだけど構いません。


『一部事実です。』

『『『おおおおおお』』』


会場は歓声に包まれました。


『彼は単身で少女を救い、モンスターを退けましたが、全て倒した訳ではありません。彼の行動は勇気のあるモノですが、大人としては死んだらどうするんだ? と褒めるか怒るか迷うところですね……ここ笑いどころですよ?』


 と、言うと会場がどっと沸いた。


コメント欄
コメント:『マジか!』
コメント:『ゲームの主人公やん』
コメント:『惚れるやろ……』




 コメント欄は加速していきます……


『その人物のお名前は?』


 私の質問中なのに他の記者が割り込んで声を上げます。


『プライバシー保護のため、公開出来かねます』


 すると……『知る権利の侵害だ!』などと喚く人が出ました。


『あくまでも一般人ですので……訴訟覚悟で御得の取材をされればよろしい』


 と一蹴すると喚いて人たちは静かになりました。


『月壬さん申し訳ない。あなたの質問の時間だったと言うのに……』


 申し訳なさそうな声音で支部長さんが謝罪してくれました。


『いえ。本業の記者でない私の質問の仕方がいけなかったんです。
支部長さんが謝る事ではありません。差し支えなければ少女を救った彼と言うのは男性でしょうか?』


『……月壬さんへの謝罪の意味を含めて、コニコニ動画さんにお話ししましょう? プロ記者の方々はみっともなく記事に書いたりはしませんよね?』


 と少し意地悪を言うと……『男性です』と答えました。
 少女漫画や乙女ゲーが大好きな私にとっては、物語の中から出て来たスパダリのようです。


『特別にご回答いただきありがとうございます。』


 私はお礼をいいました。


『いえいえ。次の方……』


 こうして記者会見はつつがなく進んでいきました。
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