10 / 124
第一章

第10話 スラムのマフィアは貯金箱

しおりを挟む
  今日も質素な朝食を食べて転売業に生を出すため、橋向こうまで足を延ばすことにした。
 ベネチアンは水の都とも呼ばれ、運河によって二つに別たれいる。
 それを繋いでいるのは四本の大橋だ。

 そして領都の要である河から外れるほどに、美しいだけではない人とモノの坩堝としての一面を覗かせる。
 しかし一歩裏通りに入ればその店構えも地味になり、さらに裏通りと潜っていけば、治安の悪いスラム外だ。

 仕事を求め流れて来た流民や、船員としてベネチアンに来たものの置き去りにされたり、果ては他国の犯罪者などその境遇はさまざまである。
 しかし俺にはどうだっていい。
 表通りに近い店は粗方回り、顔を覚えられている。

 保護者役が存在し商人の子供や奉公人と言った身分があれば、怪しまれることはないが生憎と俺にそう言うものは無い。
 つまりこの街で稼ぐには限界が来ているのだ。
 より玉石混交の市場にはなるが、当りを引いた時のデカさは魅力的だ。

 そして今の俺は連日の回復魔術の行使によってが戻った。

 それが――【鑑定眼 スキル

 勇者全員が所有する基本技能で宮廷魔術師曰く、魔眼の一種らしい。
 回復魔術を使って体の一部を、前世もとの状態に戻した。
 数日間に及んで地獄のような苦しみに襲われたがこれも必要経費だったと思う。

 しかし今にして思えば【鑑定スキル】のせいで、武具の良し悪しを測る能力が育たなかったように思う。
 だがそれも武具の転売をしている間に大分育った俺は無敵だ。

 店のドアを開けるとカランカランと鈴が鳴る。
 スラムの店だけあって防犯意識が高いのだろう。

「……」

 この店は俺を客とは思っていないのだろう、いらっしゃいませの一言もない。
 そんな態度なら俺も相応の態度でめぼしいものを買い漁ることにした。
 瞳に魔力を込め鑑定スキルを発動させ武具を見定めた。

「払えるのか?」

 怪訝な顔をされたので腹がったって金貨の入った財布をドンとカウンターに置いた。

「――チっ判ったよ……」

 そんな心地の良い負け犬の遠吠えを訊きながらアイテムボックスに購入した武具をしまう。
 わざとらしく余所者が大金を使って、オマケに高価なを使ったように見えたのだろう。
 すぐにゴロツキはやって来た。

「坊主一人でこんな所歩いてると危ねぇ俺達が家まで案内してやるよ」

「ヒヒヒヒっその代わりと言っちゃあアレなんだけどよぉ……」

「魔術袋と財布置いて行ってくれないか?」

「命までは取らないからよ」

 煌びやかな都には必ず影――つまり格差がある。
 都市に住むわりに税を払わない。
 つまり支配者層にとっては何もメリットがない。
 むしろ公衆衛生や治安を考えれば害悪でしかない。
 から放置された貧しいが故に産まれた社会的棄民。

 そんな危険な場所に子供一人でなんのために出向いたのか? 答えは簡単なことである。小金稼ぎだ。

「自分達が狩る側だと勘違いしているようだな……」

「…………はぁ?」
「このガキ何を言って……」
「頭おかしくなんたのか?」

 唐突に意味の分からない言葉を投げかけて来る変な子供に戸惑うゴロツキ達。

「あまり俺を舐めない方がいい。『魔術袋と財布置いて行ってくれないか? 命までは取らないからよ』だったか?」

 俺はアイテムボックスから朧月夜おぼろづきよを取り出した。

「やるって言うのか!」

 しかし男達が取り出したのは短剣程度……刀の間合いと比べれば玩具みたいなものだ。
 俺は鞘から刀を抜き放った。



しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...