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第二章

第59話 テーブルマナー

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「ささ、騎士や冒険者達が首を長くして待っていますよ」

 そう言って先導し神殿の大きな扉を開ける。
 神殿の中には複数人の神官や巫女が往来しており、患者の領民も複数居る。
 正に病院の待合室と言った感じだ。
 神官が医者、巫女が看護師と言ったところだろうか?

 騎士達の病室は士官が個室で、それ以外は少人数の部屋だった。
 全ての部屋を回り今回のサラマンダー討伐に関して、善戦したと褒めることを繰り返す。
 ハッキリ言って必要なこととは言え一日に何度もやるのは飽き飽きする。

 確かにミナのように騎士だけとか条件を付けたくなる気持ちが十二分に判った。
 この国の王侯貴族や前世の議員や高官なんかは、こんな精神的疲労が溜まることを出来るのか……手を振ってスピーチをするだけのパンダと思っていたことを心から謝罪したい。

 騎士達を労い終えた俺達は、高位騎士達と共に食事を取りながらあの日の話を訊いていた。
 「同じ釜の飯を食う」と言うのは連帯感を生む。

 こんな戦記モノによくある展開は、春秋戦国時代の将軍である【呉起ごき】が行ったとされる『吮疽せんそ之仁』と言う話が元ネタの故事成語だ。
 「兵士と同じ物を食べ、同じ所に寝て、兵士の中に傷が膿んだ者の膿を自分の口で吸い出す」と言う。いわゆる美談で多くの創作物で、現場型の理想の上官を描く際に用いられる。

 そんな【呉起ごき】将軍を慕う兵達は盛況だったと言う。
 古今東西、兵から慕われる上官と言うのは名将になりやすい。
 「地の果てを求めた征服王アレクサンドロス」や「ローマ絶対殺す登山家ハンニバル」、「禿の女たらしカエサル」、「皇帝にまで昇りつめた男ナポレオン」などがそれらに当てはまるだろう。

 前世に身に着けたテーブルマナーで食事をしていると、ミナ姉さんが口を開いた。

「ナオスは古風なマナーで食事をするのね」

「古風ですか?」

 魔王を倒して四十四年も経過したのだ。
 あの時金持ちなクラスメイトに付き合って貰い。習得したマナーも形骸化するのも頷ける。

「えっといつの時代のものだったかしら……」

救世ぐぜ暦が始まる前の魔降まこう暦時代のマナーだったハズよ」

 ――と少し自身無さげにオットー姉さんが補足する。
 救世ぐぜ暦とは勇者が魔王を倒したあと、魔降まこう暦とは魔王が降臨した時代のことを言う。
 簡単に言えば西暦や和暦と同じで、魔降まこう暦と救世ぐぜ暦が被っている時が存在する。

 元の世界でも食事後食器を置く位置やスープの飲み方一つで、フランス式とイギリス式があったことを思い出した。
 そう言えば他の皆の食事マナーはフランス風で、どう考えてもフランス贔屓びいきな彼女の影響であることは想像に難くない。

「そうでしたか……離れに残されていた書物を参考にしたので古臭いマナーだったようです」

 どうせこの世界のマナーをフランス式に染めるのなら、箸を使ったり食器を持ち上げたり、スープを啜ることを許容して欲しかった。

「そうだったのね……それにしては慣れているようだったけど」

「必死で習得しただけです」

 食事会は好評だったようで、騎士達の視線は二人に向かっていた。
 二人とも系統は違うとは言え美人だからなぁ、同じ男として気持ちは判る。気持ちだけは……
 正しいマナーで食事を終えたんだからご褒美CGがあってもいいと思うのは、ゲームに脳を侵食されているのだろうか?
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