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第二章

第65話 神殿長の誘い

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「全員治すのならワシを優先してもかわらないはずだ」

「い~ち」

 残念。
 引かなかったからには見せしめに四肢の一本ぐらいは、貰わないと引っ込みがつかなくなってしまった。
 「はぁ」短い溜息を付くとそのまま息を止め水に潜るように上体を沈める。
 そのまま前にだした足をバネにして飛び掛かり、前に出ていた左脚を斬り飛ばした。

「ぎゃぁぁあああああ!!」

 舞う血しぶきがうっとおしいので即座に【ヒール】で、傷口を塞いで最低限止血してあげる。

「【ヒール】……愚かだ。実に愚かだ。素直に引き下がっていれば可能性を掴み取る聖なる右手と、立ち上がるための左脚を奪われることはなかったと言うのに……それと持っていけお前の脚など俺には要らない。鋼鉄製の義肢を生やすでも高位の回復術士に頭を下げ足を繋げて貰うなり好きにするがいい」

 そう言って斬り立てホヤホヤの脚を投げ渡してやる。
 器用なことにこちらを向いたまま逃げる姿は滑稽だった。

「さて諸君。治療を受けたいものは順番を守り文句を一つ言うな、言った瞬間お前の怪我は治さない。思い上がるな俺は善意で行っているだけだ」

 魔力ポーションを飲みながら淡々と【ヒール】で欠損部位を治していく、女性なら体の傷も治してあげるサービスって奴だ。
 
「嘘、キズ後まで治ってる……」

「私の火傷もよ!!」

 前世なら大量の魔力を使うか、キズ後を削ぎ落すぐらいしか治す方法はなかったのだが今の俺には難なく出来る。
 恐らくだがのだろう。
 今回の事件で致命的な怪我を負えたを治療し終えたときだった。

「この騒ぎは何事かね?」

 豪奢な法衣に身を包んだ白髪の太った神官が現れた。
 見るからに悪役と言った雰囲気だが、神が実在する世界で成り上がった男だ何かしらの魅力や美徳があるのだろう。

「神殿長お早いお帰りですね」

「ああ予定通り商人共から寄進を受け戻ったところだ……そちらの子供は?」

 猛禽類のような鋭い眼光が俺を捉えた。
 値踏みするようなそんな不躾な視線だ。

「こちらはコッロス公爵さまの庶子のナオス・スヴェーテさまです」

「ナオス? ああ『魔力ゼロの加護なし』で庶子に落とされた子供か……」

 副神殿長は神殿長の誤解を正す。

「神殿長今回のサラマンダー事件では初動医療、そして今この場で数十人にも及ぶ欠損部位の再生を魔術でやってのけた大魔術師です」

「ワシでさえ月に数人再生するのがやっとだと言うのに、欠損部位の再生を数十人行ったと言うのか?」

「その通りです」

「馬鹿な! 『使徒』さまや『聖女』や『聖人』に並ぶ存在とでも言うのか!?」

「齢を加味すれば上回る存在かと……」

 信じられないと言った顔で周囲を見回せば、覚えのある患者ばかりなのか納得した様子で答えた。

「確かに見覚えのある患者ばかりだ……ナオスの実力は本物のようだ。一日で数十にも及ぶ部位を再生するなど神々の寵愛を受けた者に勝るとも劣らない腕前だ」

「『使徒』ってことはつまり、勇者さまに匹敵する回復魔術の実力って……コト!?」

「『聖女』や『聖人』って勇者さまと共闘し魔王を滅ぼしたって言う凄い人でしょ? そんな人たちと並ぶなんて凄い!」

――と俺に治療された患者達は俺を褒めそやす。
 褒められて悪い気はしない。

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