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第二章

第64話 命の音《カウントダウン》

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「かなりの人数ですが大丈夫ですか?」

「やれるだけやって見ましょう。若い人と第一線の人間優先でお願いします」

「立場……例えば冒険者ランクは?」

「今までの貢献ではなく、これからの貢献度です文句があるなら治さないだけです」

――と釘をさして順番に治していく。
 次代を作ってきた老人には悪いが、「未来の負担になるのなら頼むから死んでくれ」と言うのが偽らざる本音だ。

 先のない軍人を戦えるようにするより可能性のある人間や、現役バリバリの奴の方が期待値が高い。
 手足がなくても知識や経験からくる話は頭と胴が大丈夫なら、伝えることが出来るだろうから ヨシ!

 そんなことを考えていると老人が騒いでいる声が耳に届いた。

「ワシを誰だと思っている! グイフォン戦役で武功を上げ前公爵閣下より朱塗りの槍を賜った無双の勇士だぞ?」

なにそのグリプス戦役と皆朱の槍のパチモン……。

「暴れないで下さい」

 ――と必死に誰かがキレる老人を諫めている。
 どんな世界のいつの時代にも老害クレーマーと言う奴は存在するらしい。

 キレる老害を横目に回復魔術で即座に脚を治し、まるで前世のかかりつけの内科医のように「お大事に、おーい次の人よんでよぉー」と声を上げると、肩を怒らせて老人が俺の前に出て来た。

「おい治療の邪魔だ! さっさと退いてくれ」

 シッシッと手で追い払う仕草をするが、じじいの目には入っていないようで自分の言いたいこと言う。

「おい小僧! 回復魔術に優れるらしいな一刻も早くワシを治せ」

「治すのはいいけどじいさんの優先順位は し・た。現役バリバリで長くやれる奴優先なの、俺権威とか大嫌いだからそう言うこと言うなら絶対に治さないよ?」

「若者が死んで被害を拡大させてもいいと言うのか!!」

 じいさんは怒声を上げた。
 辺りはしんと静まり返り俺の言葉を待っているようだ。

「俺は別に誰が死のうが構わない。今日治した人間なんて一か月後には多分全員忘れてるから、今日のことだって縁を作ろうとか恩を売ろうじゃなくて、今までの清算として無料の善意で治療してあげてるだけだから、公共への奉仕の精神とか持つ者が持たざる者へ差し伸べる善意とか、そう言う高尚な者じゃなくて純粋に、『ロクに育てもない癖に家族面しやがって気持ち悪いんだよおっさん、手切れ金として騎士や兵士に冒険者を治してやったんだからこれ以上関わるな』って意思表示だよ」

「――なっ!」

 じじいは俺が反権力的な思想の人間だとは思っていなかったようで、金魚のように口をパクパクとさせている面白い。
 思わず悪魔のようなゲラゲラ笑いが出そうになるのを堪え、意思表示をする。

「さっさと立ち去るか食い下がって無事な腕か脚を一本失うか選べ。じゅ~う」

 腰を低く落とし居合抜刀の構えを取る。
 日本刀を用いた斬撃の中で抜きは袈裟斬りや真っ向斬りよりも早いと言われている。
 それは剣を振る速度ではなく、斬撃が相手に届くまでの時間が早いという意味だ。

「――ッ! ま、待て話をしよう!!」

「な~な」

 じじいは腰を抜かし尻餅を付いた。
 彼の年齢から見て『勇者流』の源流に近い使い手を見ていても不思議ではない。
 抜きの速度と威力を知っているのだろう。

「公爵家に逆らってただで済むと……」

「よ~ん」

「そうだ金をやろう幾ら払えばいい?」

「に~い」

 一瞬自暴自棄になって権力の笠を借りるが、俺がコッロス公爵家に媚びないことを思い出して、金銭による懐柔に切り替えた。

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