80 / 124
第二章

第79話 抗議

しおりを挟む
 騎士団長を引き連れた俺は本邸の執務室に来ていた。

「約束が違いますけど?」

「約束? ああ出発の日時の変更のことか……それがどうした?」

「あの日した約束と異なるので契約内容の変更による不平等な契約を解消しようかと思いますして……」

「契約の解消? はっ! 今更何を馬鹿なことを……」

 そう言って椅子から立ち上がり窓を向き背を向ける。
 それはこれ以上話をしないと言う意思表示だった。

「ですから当初の予定通りの三十日に契約を履行させていただきます」

「――っ! それでは遠征に同行出来ないじゃないか!」

「約束と違うぞ!?」

 二人から抗議の声が上がる。
 手を上げ二人の言葉を遮ったのは側近を努める乳兄弟の男だった。

「ですがナオスさまは、治療するさいには一人当たり神殿への寄付金の1.5倍を支払うことに加え、神殿と兄弟姉妹からの干渉を極力防ぐことで合意したハズです。それを一方的に覆すのはどうかと思います」

「先に覆したのはそちらでしょう? ですのでこちらにもっと譲歩した条件に変えて欲しいのです」

「それはっ――!」

 またも次兄の言葉を遮って側近は発言する。

「お話を訊かせて貰ってもよろしいでしょうか?」

「もちろん。まず時期を変更したのは契約違反なので、そちら側に本来契約を続けるかどうか選ぶ権利はない。ことを理解してもらいたいのですが……」

「……」

 二人に視線を向けるが理解はしているものの、ここで「はい。そうです」と答える訳には行かないようだ。
「はあ……」と短く深い溜息を付くと説明を続ける。

「まあいいでしょう。ですので俺に遠征に同行して欲しい場合はより一層の誠意を見せて欲しいと思っています」

 「誠意を見せろ」なんて言い方はお客様は神様ですと言う日本でしか通用しない言葉だ。
 直接金銭を要求すれば恐喝にあたるが、こう言った濁した言葉では法的に負けるリーガルアウトを可能性が高いもののこの濁した言い方では負ける可能性は低い。

 こうした言い方をする奴は過去の体験からラーニングし、その行動を決定的な失敗がない限り繰り返す。
 しかし恐喝が明確な罪ではないこの世界では、こんな婉曲表現は奇妙に映ることだろう。

「……誠意とは?」

 予想通りその言葉は震えていた。
 俺の思考を測りかねているようだ。

「金銭と俺を『自由騎士ミリテス・リベリ』に任命することだ」

「自由騎士だと――!」

 『自由騎士』とは特定の主君や国家に帰属せず各地を放浪したり、何らかを求める求道者のように生き、宮廷と戦場を渡り歩く騎士――と言い繕ったところで『牢人』と変わらない。
 『自由騎士』の多くは傭兵や冒険者の真似事をして、日銭を稼ぎ糊口ここうしのぐ者が多く、吟遊詩人のうたわれる。冒険者や傭兵と言った英雄の生い立ちとして比較的多い。

 しかし教育を満足に受けられていない二代目や三代目は、次第に教養とモラルを失い。
 騎士にあるまじき行為に手を染める。
 ある者は盗賊紛いの略奪を繰り返し、果てには領地を奪うことさえある。そんな彼らは『盗賊騎士ローブリッター』と呼ばれ蔑まれることもある。

 しかしそうではなく再び士官できるものもいる。
 騎士オッチョコチョイなどは『自由騎士』の出世の好例と言える。
 元々彼は別の国で代々騎士をしていたが、この国に流れコッロス公爵家に士官した経歴を持つ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ご報告】
 先日06月28日第四世代ファンタジーカップで本作が21位となりました。
 応援ありがとうございます。
 25位までの間で6作品選ばれているのでこの作品にも十分に可能性はあったと感じています。
 他のサイトに公開する場合はその点を踏まえた完全版にしたいとより一層感じました。

 インプットや気分転換を兼ねてアルファポリス様とカクヨムさまの投稿インセンティブで、「真・女神転生5v」の購入と「ウマ娘」のお得課金に使わせていただきたいと思います。
 まあその前にマウスの買い替え費用になりますがORZ……
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...