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第二章

第80話 元勇者は要求する

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 そして貴族としての籍を持つ彼らは、幾つかの特権を有する。
 軽犯罪の免除や入市税の免除と言ったものや、非武装が順守される場所でも武装する権利など平民と比べ多くの特権を持つ、そして彼らの義務は人類共通の敵であるモンスターの排除ただそれだけである。

 つまり『自由騎士』の義務は世界を救った元勇者であるナオスにとって、苦ではないのだ。

「結果的に『自由騎士』に任ずるのなら兎も角、初めから『自由騎士』任ずるなんてありえない」

「『自由騎士』は国や領主、神殿と言ったあらゆる勢力から完全に独立した存在です。オニ兄上とお約束した『神殿と兄弟姉妹からの干渉を極力防ぐこと』の範囲を、国と他の領主にまで拡大しただけです」

「……そこまでの裁量権は今の俺にはない」

 絞り出すような声で兄は答える。

「そうでしょうか? 騎士として国のために仕事をする公爵閣下の変わり、都での差配を長兄がそして領都の差配をオニ兄上がしています。後で報告することが必要とは言え現場での差配を重要視する公爵閣下が、高度な政治的判断を任せないとは考え辛い……違いますか?」

「その通りだ」

「『自由騎士』だったオッチョコチョイを雇い入れたのは、オニ兄上ではありませんよね?」

「……ああ」

「であるのならオッチョコチョイが侵入者に気付けないあるいは、侵入者を見逃すことも想定してたのではないでしょうか?」

「……そんなこと! ある訳がないだろ!!」

 即座に語気を強め否定の言葉を口にする。

「理由ならあるじゃないですか」

「え?」

「俺自身ですよ」

「それはどういう意味ですか?」

「次兄とは『治療時には一人当たり神殿への寄付金の1.5倍を支払うことに加え、神殿と兄弟姉妹からの干渉を極力防ぐこと』を条件に、『自身が流した聖人が調査に同行する』と言う噂を事実にすることを認めました。これは魔力ゼロで格下だと思っていた俺が、聖人級回復魔術師となったことを利用しようとした次兄にとって、耐え難い苦痛だったと考えられます」

「確かに無能の妾胎だと思っていたし、自分の流した噂によって大幅な譲歩をすることになったが、事実上ナオスの後見人になれたことで後継者争いで有利に立てる俺が、そんなことをする必要があるか?」

 確かに言ってることはマトモだ。
 『神殿と兄弟姉妹からの干渉を極力防ぐ』と言うことは、そう言った政治の場と俺を繋ぐ窓口をすると言うことだ。

 現代で言えば芸能人のマネージャーや事務所であり、仕事を紹介することでマージャンを得ている。
 今回の場合のマージンとは俺を紹介することで得られる人脈やコネクション、恩や金銭と言った有形無形に関わらないものだ。

 それを公爵閣下が戻るまでの期間限定とは言え保有できるのだその恩恵は計り知れない。
 公爵閣下が戻ったとしても、俺のマネージャーとしての経験を買われ家として行うときにもマネージャーの立場を保持できれば、直接依頼人とやり取りをするため旨味を享受することが出来る。

「ええ窓口となり有形無形に関わらない恩恵を享受するオニ兄上が俺を殺すとは考え辛い。しかし俺が恐怖心を持ってば自分の庇護かに下る。と考え行動したと仮定すれば辻褄は会いますそれが意図したモノか、はたまた便乗しただけかは今は判りませんが……」

 この際多少の論理の飛躍はどうでもいい。
 この場に居る三人がもしかしたら? と疑念を抱くだけでいい。
 疑いは信頼を揺るがし、判断を鈍らせる。

 疑念が兄に向かう限り兄は満足に動けなくなる。
 もしかしたら「この命令は自分を殺すためのものかもしれない」
 そして千の言葉を尽くそうとも疑念は無くなることはない。
 行動だけが疑念を晴らす唯一の方法となる。

「――ナオスの推理は的外れなものだが、今回の急な日程変更の詫びとしてナオスが望むモノを与えよう。例え公爵閣下に咎められようとも……」

 こうして俺は望んだ立場を手に入れた。
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