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第三章

第89話 ボーナスを上げよう

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「それでいこう。キルケーとグレテル先生エリュシアにはあとでボーナスを与えよう」

「グレテル様は兎も角、私達にも報償金をいただけるのですか?」

 キルケーはおっかなびっくりと言った様子で尋ねる。
 俺はにっこりと微笑むとこう言った。

「もちろんだ。金を貯めて自分を買い戻してもいいし、休日に金を使ってもいい。俺は寛容クレメンティアなご主人様だからな」

「はい」

 キルケーは満面の笑みで微笑んだ。
 金を稼ぐ方法はいくらでもあるからな、可愛い女の子の御機嫌取りとやる気アップに使えるのなら数パーセント程度痛くも痒くもない。

 紀元前の古代社会でも奴隷にも “『飴』” を与えたと記録されている。
 葡萄酒ワインや食事を与え、好いた奴隷オンナと結婚させてやり、時には小遣いや仕立の良い衣類を与えたとある。
 
 『奴隷』なんて大層な名前で呼んでいるものの彼らの本質は労働者に他ならない。
 貴族が資本家や政治家と名を変えたように、無産市民や奴隷は労働者と名前を変えただけ、前の権力者を蹴落とし、名前を変え立場を奪い現代に最適化したのが現代の民主主義、人類には早過ぎる理想が共産主義だと旧帝を卒業したニートの従弟が言っていた。

 中々の暴論だが確かにと納得できる部分はある。
 だから俺は急激な変化なんて期待していない。
 自分の手の届く範囲だけでも良く成ればいいと思っている。

「私の分はいいからその分値下げして貰えない?」

「数パーセントなのでそこまで大きな値引き額にはなりませんよ? 販売後少しの間を見てから自分の取り分を捨てるか判断しては如何でしょう?」

「そ、そうかもしれないわ」

「さてポーションタブレットの改良案も出たことだし、保存用の容器が必要になるな……」

「水に溶けてしまうということは油紙でも包むのでしょうか?」

 油紙は日本では傘や合羽、梱包資材、温室のビニール変わりなど様々で防水、耐水、防錆に使われる優秀な素材だ。

「それもありだが、専用の容器が必要だと思う」

「魔道具ということでしょうか?」

「それもありだけどコストが嵩むし時間も掛かる。ただでさえ高いモノがより高価になれば売れにくくなる。容器は常識的な金額より少し高い程度が好ましい」

「……」

 グレテル先生としては安くしろ。と言いたいのだろうがケチれる部分ではないと理解しているためか口を出してくることはない。

「容器の構造には当てがある鍛冶師を手配してくれ……あとで指示書を渡そう。突貫で宜しくと伝えて割り増し料金も忘れるなよ?」

「判りました」

 カイはは一部だけ長い。アシンメトリーの髪を揺らし一礼をする。
 しかし巨乳揃いの奴隷達の中では、控え目の標準サイズの胸元が揺れることはない。

 こう言った折衝事ではカイとても優秀だ。
 理由は知らないが元は騎士家の産まれらしいものの流浪の騎士『黒騎士《シュヴァリエ・ノワール》』だった過去を持つ。

 『黒騎士』とは簡単に言えば浪人で、貴族の証である家紋を何らかの理由で隠した者達のことであり、ゲームのように闇魔法を使うタンクジョブと言う訳ではない。

 また上記の経験から交渉や荒事にも優れ、槍術とこの世界では珍しい体術を習得しているため、荒くれものの多い工業地区に行かせても安心できる。
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