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第4話:奇跡のパンと黒い噂
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それから数日後。 王都の商店街に、異変が起きていた。
「最後尾はあちらです! 割り込みは厳禁ですよ!」
「ここのパンを食べなきゃ、一日が始まらねぇ!」
早朝から長蛇の列が出来ていたのは、先日私が融資をしたパン屋『麦の穂亭』だった。
店先には、焼きたての香ばしい匂いが漂っている。かつて閑古鳥が鳴いていたのが嘘のような盛況ぶりだ。
私は通りの向かいにあるカフェのテラス席から、その様子を眺めていた。優雅に紅茶を啜っているように見えるだろうが、内心では安堵で胸を撫で下ろしている。
(よ、よかったぁ……! 読み通りに繁盛してくれたわ!)
ジェミニの計算によれば勝算はあったものの、商売に絶対はない。もし失敗していたら、私の虎の子の資金が焦げ付くところだった。カップを持つ手が、小刻みに震えるのを必死に抑える。
「……すごいな」
向かいに座る護衛役のアルド様が、感嘆の声を漏らした。
「最高級の小麦を使いながら、薄利多売で回転率を上げる。味の良さが口コミで広がり、今や王都一番の人気店だ。君の目は確かだったようだね」
「当然ですわ。私の『投資』に間違いはありませんもの」
私はツンと澄まして答えた。本当は、毎日ジェミニに「今日の売り上げ予測は!?」と問い詰めていただけなのだけれど。
その時、広場の空気が変わった。人混みを割って、派手な馬車が乗り付けてきたのだ。
降りてきたのは、見覚えのある――というか、一番見たくない二人組だった。
「何事だ、この騒ぎは! 通行の邪魔だろう!」
カイル殿下だ。隣には、今日も今日とてミナがへばりついている。二人は行列を見ると、不愉快そうに顔をしかめた。
「まあ、カイル様。見てください、あのパン。真っ白でふわふわですわ」
「ふん、平民の分際で生意気な。贅沢は敵だということがわからんのか!」
カイル殿下が大声で怒鳴ると、並んでいた客たちがビクリと肩をすくめた。店の奥から、パン屋の親父さんが蒼白な顔で飛び出してくる。
「も、申し訳ございません殿下! すぐに列を整理させますので……!」
「黙れ! そもそも、こんな時期に高級な小麦を使うなど言語道断だ! 愛国心があるなら、小麦は王家に献上し、貴様らは泥水でも啜って耐え忍ぶべきだろう!」
理不尽極まりない暴言。
ミナも「そうですぅ! 我慢こそ美徳ですぅ!」と無責任に同調している。
親父さんが絶望したように膝をつくのを見て、私の頭の中で何かが切れる音がした。
(……あのバカ王子、また私の投資先を潰す気!?)
恐怖よりも、損害への怒りが勝った。私はカップをソーサーに叩き置くと、椅子を蹴って立ち上がった。
アルド様が止める間もなく、私はカツカツとヒールを鳴らして現場へ向かう。
「あら、奇遇ですわね殿下。こんな庶民的な場所にお買い物ですか?」
「セ、セレスティア!? なぜ貴様がここに!」
私が扇子を広げて立ちはだかると、カイル殿下は露骨に嫌な顔をした。
「営業妨害はおやめください。この店は、私の『大切なお得意様』ですの」
「はんっ、守銭奴め! 貴様が裏で糸を引いていたのか。平民に贅沢をさせ、堕落させるなど……王族への反逆にも等しいぞ!」
「贅沢? 堕落? ……ふふっ、相変わらず経済というものがわかっていらっしゃらないのね」
私は鼻で笑ってやった。周囲の民衆が、固唾を飲んで私たちを見守っている。
「いいですか、殿下。彼らがパンを買い、店が儲かれば、より多くの小麦が売れます。農家も潤い、運送業者も潤う。そして何より――」
私は扇子で殿下の胸元を指し示した。
「彼らが稼いだお金は、巡り巡って『税金』として王庫に入るのですわ。殿下がその派手な服を買えるのも、ミナ様にお菓子を貢げるのも、全て彼らが経済を回してくれているおかげ。感謝こそすれ、邪魔をするなど恩知らずもいいところですわよ?」
「な、なにい……っ!?」
正論という名の平手打ちを食らい、カイル殿下は顔を真っ赤にして絶句した。
ミナが「む、難しい話はわかりませんけど、カイル様をいじめないでください!」と甲高い声を上げるが、周囲の民衆からの視線は冷ややかだ。
彼らはもう、気づき始めている。誰が自分たちの生活を守ろうとしてくれているのかを。
「くっ、覚えていろ! この借りは必ず返すぞ!」
「ええ、お待ちしておりますわ。借用書の利息と一緒に」
捨て台詞を吐いて逃げ去る殿下たちを、私は冷ややかな笑顔で見送った。馬車が見えなくなった瞬間、ドッと歓声が沸き起こった。
「すげぇ! あの王子を言い負かしたぞ!」
「あのお嬢様、口は悪いけど頼りになるな!」
「稀代の悪女? いや、俺たちにとっちゃ福の神だ!」
パン屋の親父さんが、涙目で駆け寄ってくる。
「オーナー! ありがとうございました! 一生ついていきます!」
「ち、近寄らないで! 粉がつくじゃない!」
私は扇子で顔を隠し、後ずさる。まただ。この熱烈な感謝の視線。 胸がざわつき、顔が熱くなる。
(……調子が狂うわ。私はただ、自分の利益を守っただけなのに)
逃げるようにカフェに戻ると、アルド様が優しく微笑んでいた。
「お見事でした、セレスティア嬢」
「……皮肉ですか?」
「まさか。君は、王族が忘れていた『ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)』を、誰よりも理解している」
アルド様の真っ直ぐな瞳に見つめられ、私は言葉を詰まらせた。
違う。私はそんな立派な人間じゃない。
ただ、死にたくないだけ。推しを死なせたくないだけ。
でも、そうやって必死に足掻くことが、結果として誰かを救っているのなら――それは、悪い気分ではないかもしれない。
私は赤くなった顔を誤魔化すように、冷めた紅茶を一気に飲み干した。
「……行きますわよ、アルド様。次は商工会へ向かいます」
「商工会へ? 何をしに?」
私はニヤリと笑った。パン屋の成功は、ほんの始まりに過ぎない。
この国の経済を牛耳るためには、もっと大きな組織を手に入れなければ。
「『銀行』を作るのよ。この国中の現金を、私の管理下に置くためにね」
震える足に力を込め、私は新たな戦場へと歩き出した。背中には、アルド様の頼もしい足音が続いていた。
「最後尾はあちらです! 割り込みは厳禁ですよ!」
「ここのパンを食べなきゃ、一日が始まらねぇ!」
早朝から長蛇の列が出来ていたのは、先日私が融資をしたパン屋『麦の穂亭』だった。
店先には、焼きたての香ばしい匂いが漂っている。かつて閑古鳥が鳴いていたのが嘘のような盛況ぶりだ。
私は通りの向かいにあるカフェのテラス席から、その様子を眺めていた。優雅に紅茶を啜っているように見えるだろうが、内心では安堵で胸を撫で下ろしている。
(よ、よかったぁ……! 読み通りに繁盛してくれたわ!)
ジェミニの計算によれば勝算はあったものの、商売に絶対はない。もし失敗していたら、私の虎の子の資金が焦げ付くところだった。カップを持つ手が、小刻みに震えるのを必死に抑える。
「……すごいな」
向かいに座る護衛役のアルド様が、感嘆の声を漏らした。
「最高級の小麦を使いながら、薄利多売で回転率を上げる。味の良さが口コミで広がり、今や王都一番の人気店だ。君の目は確かだったようだね」
「当然ですわ。私の『投資』に間違いはありませんもの」
私はツンと澄まして答えた。本当は、毎日ジェミニに「今日の売り上げ予測は!?」と問い詰めていただけなのだけれど。
その時、広場の空気が変わった。人混みを割って、派手な馬車が乗り付けてきたのだ。
降りてきたのは、見覚えのある――というか、一番見たくない二人組だった。
「何事だ、この騒ぎは! 通行の邪魔だろう!」
カイル殿下だ。隣には、今日も今日とてミナがへばりついている。二人は行列を見ると、不愉快そうに顔をしかめた。
「まあ、カイル様。見てください、あのパン。真っ白でふわふわですわ」
「ふん、平民の分際で生意気な。贅沢は敵だということがわからんのか!」
カイル殿下が大声で怒鳴ると、並んでいた客たちがビクリと肩をすくめた。店の奥から、パン屋の親父さんが蒼白な顔で飛び出してくる。
「も、申し訳ございません殿下! すぐに列を整理させますので……!」
「黙れ! そもそも、こんな時期に高級な小麦を使うなど言語道断だ! 愛国心があるなら、小麦は王家に献上し、貴様らは泥水でも啜って耐え忍ぶべきだろう!」
理不尽極まりない暴言。
ミナも「そうですぅ! 我慢こそ美徳ですぅ!」と無責任に同調している。
親父さんが絶望したように膝をつくのを見て、私の頭の中で何かが切れる音がした。
(……あのバカ王子、また私の投資先を潰す気!?)
恐怖よりも、損害への怒りが勝った。私はカップをソーサーに叩き置くと、椅子を蹴って立ち上がった。
アルド様が止める間もなく、私はカツカツとヒールを鳴らして現場へ向かう。
「あら、奇遇ですわね殿下。こんな庶民的な場所にお買い物ですか?」
「セ、セレスティア!? なぜ貴様がここに!」
私が扇子を広げて立ちはだかると、カイル殿下は露骨に嫌な顔をした。
「営業妨害はおやめください。この店は、私の『大切なお得意様』ですの」
「はんっ、守銭奴め! 貴様が裏で糸を引いていたのか。平民に贅沢をさせ、堕落させるなど……王族への反逆にも等しいぞ!」
「贅沢? 堕落? ……ふふっ、相変わらず経済というものがわかっていらっしゃらないのね」
私は鼻で笑ってやった。周囲の民衆が、固唾を飲んで私たちを見守っている。
「いいですか、殿下。彼らがパンを買い、店が儲かれば、より多くの小麦が売れます。農家も潤い、運送業者も潤う。そして何より――」
私は扇子で殿下の胸元を指し示した。
「彼らが稼いだお金は、巡り巡って『税金』として王庫に入るのですわ。殿下がその派手な服を買えるのも、ミナ様にお菓子を貢げるのも、全て彼らが経済を回してくれているおかげ。感謝こそすれ、邪魔をするなど恩知らずもいいところですわよ?」
「な、なにい……っ!?」
正論という名の平手打ちを食らい、カイル殿下は顔を真っ赤にして絶句した。
ミナが「む、難しい話はわかりませんけど、カイル様をいじめないでください!」と甲高い声を上げるが、周囲の民衆からの視線は冷ややかだ。
彼らはもう、気づき始めている。誰が自分たちの生活を守ろうとしてくれているのかを。
「くっ、覚えていろ! この借りは必ず返すぞ!」
「ええ、お待ちしておりますわ。借用書の利息と一緒に」
捨て台詞を吐いて逃げ去る殿下たちを、私は冷ややかな笑顔で見送った。馬車が見えなくなった瞬間、ドッと歓声が沸き起こった。
「すげぇ! あの王子を言い負かしたぞ!」
「あのお嬢様、口は悪いけど頼りになるな!」
「稀代の悪女? いや、俺たちにとっちゃ福の神だ!」
パン屋の親父さんが、涙目で駆け寄ってくる。
「オーナー! ありがとうございました! 一生ついていきます!」
「ち、近寄らないで! 粉がつくじゃない!」
私は扇子で顔を隠し、後ずさる。まただ。この熱烈な感謝の視線。 胸がざわつき、顔が熱くなる。
(……調子が狂うわ。私はただ、自分の利益を守っただけなのに)
逃げるようにカフェに戻ると、アルド様が優しく微笑んでいた。
「お見事でした、セレスティア嬢」
「……皮肉ですか?」
「まさか。君は、王族が忘れていた『ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)』を、誰よりも理解している」
アルド様の真っ直ぐな瞳に見つめられ、私は言葉を詰まらせた。
違う。私はそんな立派な人間じゃない。
ただ、死にたくないだけ。推しを死なせたくないだけ。
でも、そうやって必死に足掻くことが、結果として誰かを救っているのなら――それは、悪い気分ではないかもしれない。
私は赤くなった顔を誤魔化すように、冷めた紅茶を一気に飲み干した。
「……行きますわよ、アルド様。次は商工会へ向かいます」
「商工会へ? 何をしに?」
私はニヤリと笑った。パン屋の成功は、ほんの始まりに過ぎない。
この国の経済を牛耳るためには、もっと大きな組織を手に入れなければ。
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