9 / 30
初夜の翌朝失踪する受けの話
1-8
しおりを挟む「直巳、なおみ」
「えっわ、はい!」
「いい返事だね。そうじゃなくて、大丈夫?」
恵さんが俺の顔を覗き込みながら言った。やっとぼんやりしていたことに気づいた俺は小さく笑って、大丈夫、と付け加えた。
時は戻って現在、いよいよ明日だった。つまり、俺たちが入籍する日であり――俺が恵さんを解放してあげる日だ。
俺たちは結婚式を挙げないことになっているから、その代わりに新婚旅行はそれなりに豪華な計画を立てていた。行くつもりのない旅行の計画を立てるのは心苦しかったけど、旅費の半分は俺のバイト代から出てるし、あとはまあ、恵さんなら代わりの人も簡単に見つかるだろうからあまり心配していなかった。それこそ彼の好きな子と行ってくれたらいい。
それで、多分、俺は今夜これから恵さんとする。
何となくそういうのは結婚してから、という雰囲気が出来上がっていた中今日がいいと強請るのはとんでもなく恥ずかしかったけど、最後だと思うと結構大胆になれるものだ。
何とかそうと決まったあとは恵さんがホテルを手配してくれた。家はちょっと…らしい。特に場所の拘りもなかった俺は大人しくしていた。とはいえホテルを取ったと言われてかなりテンションが上がったのは恵さんには秘密だ。好きな子が別にいる人に俺を抱かせると思うと罪悪感で胸がしくしく痛んだけど、今日だけだからと言い訳し続けて今日まで来たのだ。だから絶対に失敗したくないし、先延ばしにするのは論外だった。
「本当、大丈夫。ちょっと緊張してるだけ」
実際はちょっとじゃなくてめちゃめちゃしてるし、今にも心臓が口から飛び出そうだったけど、俺は無理に平静を装った。
「無理にすることもないんだよ?」
眉を寄せてそう言う恵さんに、そんなに俺としたくないのかな、とちょっと傷つく。傷つく資格なんて俺にはないのに。
俺は傷ついた事を誤魔化すようにわざとらしく口を尖らせて言った。
「ハジメテなんだから仕方なくない?」
「……」
「それどういう顔?」
「良かった、って顔」
「良かった?」
「何でもないよ。さ、シャワー浴びておいで」
「シャワー……」
思わず口篭る俺を恵さんが俺の手をそっと握った。
「君は本当に可愛いね」
困ったように眉根を下げた恵さんが俺の背中をそっと押す。いつもより性急な態度に心臓が跳ねた。
「いってきます…」
「はい、いってらっしゃい」
恵さんの顔は見れなかった。
401
あなたにおすすめの小説
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
【完結】それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」
【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
俺の好きな人は誰にでも優しい。
u
BL
「好きなタイプは?」と聞かれて世界で一番多く答えられているのは間違いなく「優しい人」だろう。
相手の優しいところに惹かれ、気づいた時には引き返せないところまで恋に落ちている。
でも次第に気付くのだ。誰だってみんな「優しい人」ではなく「"自分だけに"優しい人」が好きなのだと。
ロランは、"誰にでも優しい男"、フィリオンに恋をしてしまい、地獄のような日々に身を焼かれていた。
そんなとある日「この恋、捨てたいな…」と溢したら「それ、捨てようとすんの、やめてくんね?オレ、あんたがアイツを見る視線に興奮すっからさ」と遊び人で有名な男、ヒューゴに言われる。
彼は、自分を好きな人間には興味がなく、別の誰かに恋い焦がれている人間の目が好きな変態らしい。
そんな身勝手な遊び人とちょくちょく話すようになってからというもの、フィリオンの様子はどんどんおかしくなっていく。
恋を捨てたい男と、恋を捨てるなと言う男と、優しさが狂い始めていく男の話。
※作者の意思ではなくキャラの意思で結末が決まります。ご要望は受け付けられませんのでどちらとくっついても美味しいと思う方のみお読みください。
※中世ヨーロッパ風学園ものです。
※短編(10万文字以内)予定ですが長くなる可能性もあります。
※完結までノンストップで毎日2話ずつ更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる