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初夜の翌朝失踪する受けの話
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しおりを挟むタクシー代もちゃんと払えたのか、何が何だかわからないままふらふらと帰宅した俺は、そのままの格好で勢いよくベッドに倒れ込んだ。何も考えられなくて、それなのに涙はドバドバ出るしで最悪だった。
ひとしきり泣いて、それから俺は決意した。
そうだ、逃げよう。
今更うっかり婚約を破棄したいなんて言ったら大変なことだ。この婚約のために色んな人が動いているのを知っている俺はそんな軽はずみなことは出来ない。
でも、それで恵さんが我慢するのは、やっぱり違うと思う。俺が居なければ、恵さんはもっと自由に生きれるはずなのだ。だって、この7年で神崎財閥の業績はだいぶ回復した。正直うちの融資なんていらないんじゃないかと思うくらいだ。それでも恵さんは俺との婚約を破棄しない。彼は、優しい人だから。
俺が居なくなれば、きっと上手くいく。
幸い、婚約はしていても籍だってまだ入れてないのだ。俺たちはまだ赤の他人だった。
俺が18になっても籍を入れていないのは恵さんの気遣いだ。彼の心遣いが嬉しくて、ほんの少し寂しかったけど、今思うと少しでも先延ばしにしたかったのかもしれない。嫌な想像はし出したらそう簡単には止まらないものだ。本当は違うかもしれないけど、そうとしか考えられなくなる。…それも、そうじゃないって、俺が思いたいだけかもしれない。
ずずっと鼻を啜りながらもう十分だろ、と言い聞かせる。7年も俺みたいな子供に付き合わせたんだ。
俺は、彼が俺を幸せにしてくれたのと同じくらい彼に幸せになって欲しかった。
俺がしたかったんだけどな、と思って、何様だよ、と鼻で笑う。俺なんかにできるはずないじゃないか。
大きく息を吸って、乱暴に目を擦った。恵さんが彼女を連れているところを見たら戻るんだ。それで、良かったですって言う。できれば、俺も好きな人が横にいたらいい。彼は優しいから、俺が1人だったらきっと気にしてしまう。
「好きな人…できるかなあ」
枕を抱きしめながら小さく呟いた。そもそも、忘れられるだろうか。
最後に抱いてもらえたら忘れられる気がする。
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