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第一章 初心者の躍動

第四十七話 園崎家へ (4)

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 そして食事をした部屋を出た渚達は、無駄に広大な園崎家の屋敷の中を五分ほど歩いたところにある部屋へと着いた。

「はぁ…家の中でこんなに歩く事になるとは…」

「うん、家も広い方だけど…やっぱりここは規格外だ」

「本当にね!私もビックリ‼」

 渚や夏輝に夏帆の兄弟妹は疲れたように目の前の扉を見てしみじみと話していた。
 そんな三人の反応に竜悟や桜花はキョトン?とした様子だった。

「うん?まぁ確かに広い方だとは思うけど、別に始めて来た訳でもないんだから。そんなに驚く事はないだろう?」

「えぇ、僕もそう思いますよ?もう何回も着ているんですし、慣れてきません」

「いや、お前らと一緒にするな金持ちダブル!確かに俺達の家も、一般的には金持ちだとは思う。でもお前達は桁違いだと言う自覚を持って?これに慣れたら俺は普通の家に住めなくなるから‼」

 よく分からないと言った様子で話す竜悟と桜花の反応に渚は疲れたように叫ぶようにそう言った。
 その渚の叫びに竜悟と桜花の二人は気圧されるように下がったが、すぐに立ち直って考え始めた。すると徐々に自分達の感覚が麻痺していることに気が付いたようで少し苦笑いを浮かべていた。

「あぁ…確かに、言われてみて自覚したは、俺って金持ちだった…」

「そうですね。僕も改めて考えると、普通の家に比べて凄い家に住んでました…」

「うん、ようやく自覚してくれたようで何より‼それでさ?自分から始めておいて申し訳ないけど…さっさと部屋はいらない?」

 二人の返事を聞いた渚は満足そうに頷いていたのだが、すぐに言い難そうにして少し申し訳なさそうにそう言った。
 その渚の様子に竜悟と桜花の二人は少し戸惑った様子だったが。すぐに落ち着きを取り戻すと冷静に話し出す。

「あぁ~そうだな。父さん達も何時までも話している訳でもないし、さっさと遊ぶか‼」

「そうですね!確かにここで話していても時間が経つだけですしね‼」

「賛成‼実は俺も久々で、何が追加されたか楽しみだったんだよ‼」

「私もっ!前に来た時に出来なかったのもあったし、今回はそれやりたかったんだよね~!」

 竜悟と桜花が楽しそうに賛成すると、夏輝と夏帆の二人も同じように満面の笑顔ではしゃぐように飛び跳ねていた。
 そんな竜悟達の反応を見て渚は少し安心したように小さく笑みを浮かべていた。

「さて!それじゃぁ早速、遊ぶとするか‼」

「「「「おぉ~~~‼」」」」

 渚が先導するようにドアを開けながら元気良く入って行くと、竜悟達もそれに合わせるように元気に掛け声を上げて後に続いて部屋へと入って行った。その渚達の入った部屋の中にはビリヤードやダーツなどのレトロなゲームから始まり。ゲームセンターにあるような最新の機器までが設置されていた。
 そしてその部屋の光景を見た渚達は子供の用に興奮したように目をキラキラさせて各々やりたい物の元へと向かって行った。



 そして渚達が遊戯室で遊んでいる時、渚達が出て言った事にも気が付かずに話し合いを続けていた大我と武虎の二人は話が纏まり始めていた。

「ふぅ…それではシステム的に大きく変えるのではなく。表示を少し変えると言う事でいいですかね?」

「そうじゃの…下手に戦い方なんぞに手を加えても、逆に物足りなくなるだろうしの…」

「やはりそうですか…それでは、魔物などには最初から名前・HP・レベルが表示されるようにすると言ったところですか…」

「それが一番無難なところじゃろ…」

 大我の言った変更に武虎も同意するように小さく頷く。
 それで話は終わりかと思われたが大我は何か気になる事があるのか少し難しい表情で考え込んでいて、それに気が付いた武虎が少し不思議そうに話しかける。

「どうしたんじゃ?何か気になるところでもあったのか?」

「いえ、今言った変更をすると、鑑定が本当に需要が無くなりそうだな~と…」

「あぁ…確かにそうじゃな。だが、武具の詳細の確認や敵のステータスの確認などには必要なのだろう?なら一ヶ月も経てば自然と利用者も増えるじゃろ!」

 少し不安そうに話す大我に武虎は特に気にした様子も無く、むしろ問題ない!と言った感じに元気よく答えた。
 そんな武虎の話に大我は少し驚いたように目を見開いて固まってしまっていたが、すぐに小さく笑みを浮かべて話し出す。

「ははは…まぁ確かにそうなんですけどね。このまま放置って言うのも、少し問題のような気がして…」

「う~ん、そう言われればそうかもしれんが…あまり変えすぎるのもどうかと思うぞ?」

「そこなんですよ。なので大きく変える事はせずに、レベルアップに必要な経験値を少し下げ。更に表示できる魔物のステータス。そこに表示されるスキルなども鑑定できるようにしましょう!今までは装備スキルしか鑑定できませんでしたし‼」

 大我は今考えたのかスラスラと説明を始めて、最後には自信満々に少し胸を張って力強く説明した。
 その説明を聞いた武虎は少し考えるように口に手を当てて黙ったが、少しすると手を外してゆっくりと話し出す。

「…なるほど、確かにそれなら問題ないか…」

「はい、それでは変更はとりあえず。今言った二つでもんだいないですかね?」

「あぁ、それでいいじゃろ。始まったばかりで、いきなり大量に変更するのもあれだしの…」

「ははは!確かにそうですねっ‼」

 そして大我と武虎の話が纏まったのを確認すると、時雨は少し疲れたように小さく息を吐き出した。

「ふぅ~お二人とも、話は終わりましたか?」

「「⁉」」

 突然話しかけられた二人は驚いたように時雨の方へと向いた。するとようやく自分達以外にも人がいた事を思い出したようで、更に大我と武虎は渚達がすでにいない事にも気が付いた。
 そこまで気が付くと二人は盛大に顔を引きつらせて大量の冷や汗を流していた。
 そんな大我と武虎の様子に時雨は少し可笑しそうに笑ってしまう。

「ふふふっ‼お二人とも、そんなに慌てなくても問題ありませんよ。渚君達には遊戯室でゆっくりしてくるように言っておきましたから」

 時雨が少し微笑みながら説明すると大我と武虎の二人は、安心したようにほっと胸を撫で下ろす。
 そして落ち着きを取り戻した二人は小さく息を吐き出した。

「ふぅ…そうか、そう言う事だったらよかった」

「そうじゃな。話しに夢中になりすぎてしまったの…」

「えぇ、さすがに客人のまえであれはダメでしたね。いくら家族ぐるみの付き合いがあるとしても…」

「「はぁ……」」

 大我と武虎は先ほどまでの自分達の事を思い出し、恥じるように俯いて溜息を漏らした。
 そんな二人に時雨は少し困ったように苦笑いを浮かべる。

「まぁまぁ、そこまで気にしなくていいと思いますよ?渚君達も特に気にした様子はなかったですしね!」

「そうか?ならいいんだが…」

 時雨の励ましにもどこか疑った様子の大我と武虎。そんな今の二人には渚達が来た時のような自信はなく、普通のおじさんになってしまっていた。
 そんな二人の様子に時雨は本当に疲れたように顔を俯かせてしまったが、すぐに切り替えると勢いよく顔を上げた。

「そんな事よりもお二人とも!何時までも待たせても悪いですし、早く渚君達の所へ行きましょう!」

「あ、あぁ…そうだな。俺達のことで待たせてしまったわけだしな…」

「そうじゃの。それにワシは弟子に修行を付けると約束したしの‼」

「ふふふっ!そう言えばそんな事も言っていましたね。それでは早速、遊戯室まで向かいましょうか」

 時雨がそう言って立ち上がると続くように大我と武虎も立ち上がって、ゆっくりと渚達の居る遊戯室へと向かって行くのだった。
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