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第一章 初心者の躍動

第八十九話 試練の発見‼

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 そして採掘し終えたナギはしばらくの間、成果である鉱石たちを見て楽しそうにしていた、
 けれども延々と見ている訳にもいかないのをしっかりと理解しているナギは、ある程度で満足すると小さく頷いて立ち上がった。

「いや~楽しい時間だった!こんだけ取れば修行は、はかどりそうだな‼」

 晴れやかに少し体を伸ばすようにしてナギは周囲を見回して、何処に行くか改めて悩みだし。結局よく分からない事に変わらないので、考えるのを止めて先ほど来た方向の反対に向かって進んで行く。

 しかし移動を始めてから数分経ったが一向に何かが出て来るようすはなかった。
 そのことにいいかげん辛くなってきたナギは大きな岩の陰に入って足を止めてしまう。

「はぁ…やばい。思ってた以上にめんどくさいぞ?なんかショートカットできるスキルとか、アイテムとかないのかね~」

 大群との戦闘、道に迷っての散策。この二つによってナギは本格的に体力ではなく、精神的な方で苦痛に感じるほど飽きて・・・始めていたのだ。
 そのため足を止めたナギはイラついたように眉間に皺を寄せて岩を蹴り続けていた。

「あぁ~何で俺はここに居るんだったけ?確か…なんか言われてたんだよな。それでついでに魔物討伐と、鉱石採取のために来たんだよ。なのにやっていたのは、大群殲滅&遭難…なんでだよっ!」

 改めて自身の経験してきた事を口に出して認識すると、急にブチギレて本気で岩にガッン‼と何故かまだ持っていたピッケルで叩いた。
 しかしそこは採掘ポイントでは無いので、反動でわずかな痛みとダメージが入ってHPが減ってしまう。

「っ⁉これでもダメージ入るのかよ……はぁ、とりあえず次にどこに行くか決めないとな『カチッ』え?」

 ダメージが入って冷静に戻ったナギはゆっくり考えようと岩に寄りかかると、不意に何かが動き出すような音を耳にして慌てて振り返る。すると寄りかかっていた岩がゴゴゴゴゴゴ‼と大きな音を立てながら横に動き出したのだ。
 いきなりの現象に呆然としていたナギだったがはっ!とした様子で慌てて距離をとる。

 それから程なくして岩は止まり、元々岩のあった場所には人が二人は並んでは入れそうな洞窟が現れた。

「…えっと、もしかしてゴド爺さんの言っていたのはこれか?」

 まだ少し戸惑った様子のナギだったが、それでも一応ゴド爺さんから聞いた説明は憶えていたようだった。
 だがその内容までははっきり思い出せていないのか腕を組んで唸っていた。

「う~ん……確か『入口と付近の洞窟』の『右に進んだところ』だったよな。そこで『採掘スキルを使え』だった…はず。あれ?でも俺は採掘スキルを使った憶えないんだけど?」

 ナギが不思議だったのはそこだったのだ。ゴド爺さんの説明では”特定の場所„で”特定のスキル„を使うと言うものだった。
 しかしナギには特定の場所はともかく、スキルの使用に関しては心当たりがなかったので不思議そうに首を傾げる。

「うん?よくわかんないけど、とりあえず開いたんだしよしとするか‼それよりも中が気になるし、さっそく行ってみようかな‼」

 悩んでも仕方ないと切り捨てたナギは、一瞬で切り替えるとすでに洞窟への好奇心からか目をキラキラさせて興奮した様子で中へと入って行く。
 洞窟の中は何故か明かりがある訳でもないのに薄っすらと光っていた。

「へぇ~これなら、暗視スキルなくても大丈夫かもな。足元が少し不安だけど」

 ナギの言う通り明るいと言っても本当に薄っすらで、足元なんかの目から少し離れている場所は少し見難くなっていた。
 その事に最初は好奇心で動いていたナギは警戒心を持って慎重に進みなおす。
 それからもう少し進むとドーム状の開けた場所へと出た。

「おぉ~!ここは今まで以上に明るいし、広いな‼」

 広場に着いたナギは感動したように見回していたが、すぐに奥に鉄の扉がある事に気が付いた。
 その扉はあからさまに道を閉ざしているので何かしらの意味がある事はすぐに理解できて、念のために警戒しながらもナギは調べるために扉に近寄る。

「…なんだろこの扉、あん?なんか上に書いてあるな。えっと『鍛冶師の試練/★★』なんだこれ?」

ピコン!

《初の試練が発見されました!情報を開示します》

《この世界には、各職業ごとに『○○の試練』が存在しています。試練の内容は一括してダンジョンとなっており、次の階層に進むのに職業ごとに合った内容の試練をクリアしなければなりません。
 また、試練へはその職業に就いている者しか入る事はできない。※テイム・召喚などによる魔物は可
 試練の難易度は名前の横に表示される星の数によって決まる。例 ★(超初級)★★(初級)★★★(中級)★★★★(上級)★★★★★(最上級)error(伝説or神級)というように分類される》

《そして試練の入り口前にはセーフエリアになっていて、そこでならログアウトが可能になっていますので、試練挑戦前には準備・休憩をしましょう‼
 最後に試練をクリアした場合の報酬は難易度によって決まります。クリアによって解放される上級職も存在するので、皆さま頑張って挑戦してください!》

 扉の文字を呼んだと同時に目の前に現れたお知らせにはそう書いてあった。
 その内容を見たナギはあからさまに自分へではなく、不特定多数の人へと向けたと思える文章に表情を盛大に固まらせる。

(まずいまずい!いや、別にダメという訳では無いけどもさ⁉あいつらにこれを見つけたのが俺だとばれたら……うん、確実にめんどくさい。まぁ、黙っけばいいか?いでもな~こういう時だけかんが鋭いからな…)

 ナギは自分が常識外の行動をとっている自覚はあるようで、その事をドラゴや焔、更にはヒカルやホホにだけはばれたくなかったのだ。
 だからこそ必死に画すべきかと考えていた。しかしリアルでも古い知り合いだと言う事もあって、あの四人に嘘をつき通せる自信が無いようで半ばあきらめていた。

 それからしばらく悩んでいたナギだったが、ついに諦めが付いたのか小さく息を吐き出す。

「ふぅ~よし、あいつ等からからかわれる前に自分から言ってしまおう!そうすればあいつらもつまらないと思ってくれる……はずっ‼」

 少し自信なさげではあったが力一杯にそう言ってナギはその件を終わりにした。
 すると、考えがひと段落した事でようやく本題である試練について考え始めた。

「それにしても試練か…星が二つだから。さっきの説明だと初級の試練って事か、うん!今から楽しみだな‼」

 改めて試練の門を見上げながらナギはワクワクした様子だった。
 しかし元々の急いでいた理由を思い出したのかあっ!と気まずそうに表情を引きつらせていた。

「あぁ……そう言えば昼ご飯用意しないと何だった。今何時だろ?それよりも部活に行った方はいいとして、夏帆の方はちゃんと中断して戻って来るのか?…忘れて続けてそうだな」

 兄妹達の昼を用意しなくちゃと思ってナギは、よくよく思い出すと弟は部活に行っているので帰りは一時過ぎ、妹の方は同じくゲームをプレイ中。しかも妹の夏帆は今までの経験上、ゲームを始めれば食事の時間など忘れて根中する事を思い出し、少し疲れたような表情を浮かべながらもとりあえずメッセージだけは送ることにしたのだが…

「………これどうやればいいんだ?たぶんメニューの何処かkにあると思うんだけど…」

 ナギはどこまで言っても機械音痴で初めての機能は一人で見つけるのも一苦労だった。
 それから数分もの間メニュー画面と格闘して、何とかフレンドリストから名前を選択すればいい事に気が付いて簡単に『昼飯用意するから、時間空いたら食べろ』と言う簡潔な内容だった。
 だがそれで言いたい事は伝わると確信している様子のナギは、メッセージを送り終わると満足そうにどこかスッキリしたようだった。

「よし‼とりあえず、これで連絡はしたし良いだろ。それとさっきの説明の最後の方にセーフエリア?とか書いてあったし、要するにここは安全って言う事か。ログアウトも出来るって書いてあったな、でもな~」

 先ほどの説明を思い出してナギはすぐにログアウトするのかと思えば、何故か急に躊躇したような動きを見せる。

「町でログアウトすると始まりの時の広場に出たけど、町の外だとどうなるんだ?まさかまた街に戻されんのかな…それはめんどくさいし」

 ナギはそこが動じても気になっていたようだった。実際、町なら何処でログアウトしようと次のログイン時は最初の噴水広場へとログインすることになる。
 しかしナギが知らないだけでフィールドにもセーフエリアは存在して、他のプレイヤー達は普通にフィールドでログアウトしていたりする。その場合は次のログイン時はセーフエリア内のログアウトした場所に現れる。

 だがろくにプレイヤーと交流しておらず。一緒に始めたはずの竜悟達ともろくに情報交換をしていないので、そう言った周知の情報は入って来ていなかったのだ。
 そのため初めての挑戦にナギは不安そうに悩んでしまっていたのだ。

「う~ん、どうしようかな…いや、まぁログアウトしない訳にもいかにも行かないし。はぁ…仕方ない。覚悟を決めるかな!」

 そこまで大ごとでは無いが、最終的に何とか覚悟を決めたナギは緊張した様子でログアウトした。

 この時ナギは知りようはなかったが、他の全プレーヤーは急に現れた試練の情報に大騒ぎになっていた。
 なにせ始まってまだ一週間も経っていないのに上級職に関する情報が説明に記載されていたのだ。それを見たプレイヤー達は何とか自分の職業の試練を見つけようと、フィールドを駆け回っていた。

 しかしそんな中、夏帆ことホホは送られて来た兄からのメッセージに予感めいたもので、先程のお知らせにナギが関わっていると確信めいたものを抱いていた。
 そのため帰ったら絶対問い詰めてやる‼とやる気を募らせながら仲間と試練を探しに出かけて行った。

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