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第四章 鍛冶師の国
第二百三十六話 試し切り『ロングソード』
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そしてナギとソルテが疲労にダウンしそうになりながら短槍を一本仕上げてからリアルで3日後、慣れたために短い期間ではあったがなんとか追加で9本の短槍を作り上げることが出来た。
そのせいか終わった後は驚くほどスムーズに就寝することができて、次の日には衣装にスッキリした状態で学校を終えてログインした。
「…よし、今日は晴れてるな!フィールド行くぞ‼」
『楽しそうですねぇ~』
ログインしてすぐに天気を確認したナギは綺麗な星の映る空に嬉しそうに声を上げてフィールドへと向かった。そんなナギの様子にソルテは他人事のようにのんきに肩に止まっていた。
正直なところ雨の日も今日のような夜も視界の悪さと言う意味では初めての武器を使うには向かない。
しかし雨に日に比べれば格段にましなことに変わりはないので、いろいろと鬱憤の溜まっていたナギは解消するためにも止まる様子は見られなかった。
迷いなくいつもの東の草原に来たナギとソルテは周囲を見回して敵の影を探していた。
「ロングソードをいきなり林の中の戦闘は危ないからな。できれば草原で慣らしておきたいんだけど…」
『見つかりませんね~』
「なんか嬉しそうにしているけど、いつ戦闘が始まってもいいように隠れていてくれるとありがたいんだが?」
のんきに自分の肩の上で肘をつきながら話すソルテに対してナギは呆れたようにコートの中へと入るように言った。その言葉にソルテは素直に従ってコートの奥に入っていった。
それを見てナギは安心したように小さく息を吐いて改めて周囲を集中して索敵を開始した。
周囲は変わらず夜なので暗く足元もはっきりと見えないような状況だったが、暗視のスキルを持っているナギには昼間に近い状況で見ることができた。
ただ魔物の影は特に見当たらないことは変わりないので、ゆっくりと街の防壁から離れてフィールドの奥へ向かって移動することにした。
「…見つけた」
しばらく移動していると足を止めたナギは警戒したようにロングソードの柄に手を伸ばして腰を落とした。
その視線の先には一匹のラビットが居てまだナギの存在には気が付いていないのか普通に跳び回っていた。
気が付かれていないナギは腰を落とした状態のままロングソードを抜いて両手で構え一気に踏み出して近寄り、ラビットの無防備な首筋にロングソードを振りぬいた。
『っ⁉』
「ふぅ…急所に攻撃すると短剣でも一撃だったけど、攻撃範囲がかなり変わるから調整が難しいな」
後ろで悲鳴すら上げられずに光となって消えるラビットを見ることなくナギは今の動作の反省をしていた。
そんなナギをコートの中から顔をのぞかせていたソルテは微妙な表情を浮かべていた。
『もう十分に使いこなしていると思うんですけど、何が不満だったんですか?』
「簡単な話だ。普段使っているのはあくまで短剣や小太刀なんかで、これらの武器は短剣術のスキルが適用されているからあるていど初めて握っても馴染んでいる。でも俺は今使っているロングソードに適応するスキルを持っていない、もちろんこの後に試す槍のスキルもな」
『あ⁉そういえば確かに…』
今更だったがナギの話を聞いたソルテは以前に見たステータスを思い出して納得したように小さく何度もうなずいていた。でも納得はできたが、それ以上に気になることができてしまった。
『でも、主様はどうしてスキルもないのに武器をそんなに扱えるんですか?』
常識的に考えると生産系のスキルは補助的な面もたしかにあるのだが、こと戦闘系に関してはスキルがないとまともに戦えないと言われていた。しかもこの話は住人だけではなくプレイヤー達の間でも掲示板などの検証した結果をあげているが、掲示板だとかを一切見ないナギは知らないのだった。
「しらない。元々武器全般の扱い方は教わっていたから、それが関係あるのかも?ってくらいしか俺にもわからない」
『そうなんですか…』
いつものごとく本当に自分が何をやっているのか理解していない様子のナギを見たソルテは、どこか疲れたようにそういうと詳しく説明するのを諦めたのようだった。
そんなソルテの反応にナギは不思議そうに首をかしげていたが、さほど興味がなかったようで新しい敵を求めて周囲を探し始めた。
「お、いい練習相手発見」
そう言って足を止めたナギの視線の先には夜の暗闇の中だと見分け難いけれど、一抱えほどの大きさの巨大なネズミが5匹まとまって移動していた。
そのネズミは以前に冒険者ギルドでガラハットに聞いた東のフィールドで出現する魔物ラットだと気が付いたナギは、話の内容を正確に思い出してうかつには近寄らずに準備を整える。
「まだ毒消しの薬は買っていないんだけど、ようするに牙に注意が必要なわけだから…正面から行かなければ問題ないか」
もっとも準備と言ったところで必要な道具がそろっているわけではないので心構えのようなものだった。
ある程度覚悟を決めてしまえばナギの周囲の空気に溶け込むように気配は消えて神経を研ぎ澄ませて目の前の敵にだけ意識を集中させる。
しばらく状態を維持してラットの様子を見ていると1匹だけが他に比べて距離が離れた。
その瞬間、ナギは一気に飛び出して抜いていたロングソードを首筋めがけて突き出した。
『ヂッ⁉』
短い悲鳴のような声を出してラットは刺し貫かれてHPがなくなり光となって消えていった。
いきなり仲間を倒された残り4匹のラットは動揺していて動きを一瞬止めていて、倒したラットが消えたことで自由になったロングソードでナギは動かない近いもう1匹にの急所に突きを放った。
『ッ!!』
今度は悲鳴すら上げる間もなく急所の首元を横から貫かれたラットはレベル差もあって一撃で倒された。
しかし仲間が2匹もやられたラット3匹は警戒して一塊になりながら牙をむき出しに威嚇していた。
ただいくら厄介な状態異常攻撃能力を持っていても攻撃が当たらなければ脅威ではなく、しかも攻撃を当てれば確実に倒せると証明されナギには恐怖を感じる理由がなかった。
それでも一度でも攻撃を食らって毒状態になると直す手段がないので警戒を解くようなことはなかった。
でも様子見をするほどの相手だとも思っていないナギは躊躇することなく3匹へと走り出した。
その迷いのない走りにラット達は向かい打つように一斉に跳びかかった。
とは言ってもやはり動物というべきか少しずつだがタイミングがズレていた。
そんなわかりやすい隙をナギが見逃すはずもなく空歩を使用して一気に跳び上がってラット達の頭上を通り抜け、一気に反転して背後から走りぬくように3匹の間を走り抜けた。
もちろんただ走り抜けたのではなくそれぞれの首筋には深い切り傷が浮かんでいてHPはすべてが黒く染まり、次の瞬間には一斉に光となって消えてしまった。
「ふぅ…だいぶなじんできたしこの調子で他のも試すとしますか」
たった今戦闘を終えたばかりにもかかわらずナギは満足した様子はなく、軽く息を吐くと今使用したロングソードをしまって別のロングソードを取り出して移動した。
今回の目的は敵を倒すことではなく作った武具を試すこと、つまりはロングソード10本すべて試すことなのだ。
それが終わるまでナギはフィールドで走り回って魔物を狩り続けるのだった。
そのせいか終わった後は驚くほどスムーズに就寝することができて、次の日には衣装にスッキリした状態で学校を終えてログインした。
「…よし、今日は晴れてるな!フィールド行くぞ‼」
『楽しそうですねぇ~』
ログインしてすぐに天気を確認したナギは綺麗な星の映る空に嬉しそうに声を上げてフィールドへと向かった。そんなナギの様子にソルテは他人事のようにのんきに肩に止まっていた。
正直なところ雨の日も今日のような夜も視界の悪さと言う意味では初めての武器を使うには向かない。
しかし雨に日に比べれば格段にましなことに変わりはないので、いろいろと鬱憤の溜まっていたナギは解消するためにも止まる様子は見られなかった。
迷いなくいつもの東の草原に来たナギとソルテは周囲を見回して敵の影を探していた。
「ロングソードをいきなり林の中の戦闘は危ないからな。できれば草原で慣らしておきたいんだけど…」
『見つかりませんね~』
「なんか嬉しそうにしているけど、いつ戦闘が始まってもいいように隠れていてくれるとありがたいんだが?」
のんきに自分の肩の上で肘をつきながら話すソルテに対してナギは呆れたようにコートの中へと入るように言った。その言葉にソルテは素直に従ってコートの奥に入っていった。
それを見てナギは安心したように小さく息を吐いて改めて周囲を集中して索敵を開始した。
周囲は変わらず夜なので暗く足元もはっきりと見えないような状況だったが、暗視のスキルを持っているナギには昼間に近い状況で見ることができた。
ただ魔物の影は特に見当たらないことは変わりないので、ゆっくりと街の防壁から離れてフィールドの奥へ向かって移動することにした。
「…見つけた」
しばらく移動していると足を止めたナギは警戒したようにロングソードの柄に手を伸ばして腰を落とした。
その視線の先には一匹のラビットが居てまだナギの存在には気が付いていないのか普通に跳び回っていた。
気が付かれていないナギは腰を落とした状態のままロングソードを抜いて両手で構え一気に踏み出して近寄り、ラビットの無防備な首筋にロングソードを振りぬいた。
『っ⁉』
「ふぅ…急所に攻撃すると短剣でも一撃だったけど、攻撃範囲がかなり変わるから調整が難しいな」
後ろで悲鳴すら上げられずに光となって消えるラビットを見ることなくナギは今の動作の反省をしていた。
そんなナギをコートの中から顔をのぞかせていたソルテは微妙な表情を浮かべていた。
『もう十分に使いこなしていると思うんですけど、何が不満だったんですか?』
「簡単な話だ。普段使っているのはあくまで短剣や小太刀なんかで、これらの武器は短剣術のスキルが適用されているからあるていど初めて握っても馴染んでいる。でも俺は今使っているロングソードに適応するスキルを持っていない、もちろんこの後に試す槍のスキルもな」
『あ⁉そういえば確かに…』
今更だったがナギの話を聞いたソルテは以前に見たステータスを思い出して納得したように小さく何度もうなずいていた。でも納得はできたが、それ以上に気になることができてしまった。
『でも、主様はどうしてスキルもないのに武器をそんなに扱えるんですか?』
常識的に考えると生産系のスキルは補助的な面もたしかにあるのだが、こと戦闘系に関してはスキルがないとまともに戦えないと言われていた。しかもこの話は住人だけではなくプレイヤー達の間でも掲示板などの検証した結果をあげているが、掲示板だとかを一切見ないナギは知らないのだった。
「しらない。元々武器全般の扱い方は教わっていたから、それが関係あるのかも?ってくらいしか俺にもわからない」
『そうなんですか…』
いつものごとく本当に自分が何をやっているのか理解していない様子のナギを見たソルテは、どこか疲れたようにそういうと詳しく説明するのを諦めたのようだった。
そんなソルテの反応にナギは不思議そうに首をかしげていたが、さほど興味がなかったようで新しい敵を求めて周囲を探し始めた。
「お、いい練習相手発見」
そう言って足を止めたナギの視線の先には夜の暗闇の中だと見分け難いけれど、一抱えほどの大きさの巨大なネズミが5匹まとまって移動していた。
そのネズミは以前に冒険者ギルドでガラハットに聞いた東のフィールドで出現する魔物ラットだと気が付いたナギは、話の内容を正確に思い出してうかつには近寄らずに準備を整える。
「まだ毒消しの薬は買っていないんだけど、ようするに牙に注意が必要なわけだから…正面から行かなければ問題ないか」
もっとも準備と言ったところで必要な道具がそろっているわけではないので心構えのようなものだった。
ある程度覚悟を決めてしまえばナギの周囲の空気に溶け込むように気配は消えて神経を研ぎ澄ませて目の前の敵にだけ意識を集中させる。
しばらく状態を維持してラットの様子を見ていると1匹だけが他に比べて距離が離れた。
その瞬間、ナギは一気に飛び出して抜いていたロングソードを首筋めがけて突き出した。
『ヂッ⁉』
短い悲鳴のような声を出してラットは刺し貫かれてHPがなくなり光となって消えていった。
いきなり仲間を倒された残り4匹のラットは動揺していて動きを一瞬止めていて、倒したラットが消えたことで自由になったロングソードでナギは動かない近いもう1匹にの急所に突きを放った。
『ッ!!』
今度は悲鳴すら上げる間もなく急所の首元を横から貫かれたラットはレベル差もあって一撃で倒された。
しかし仲間が2匹もやられたラット3匹は警戒して一塊になりながら牙をむき出しに威嚇していた。
ただいくら厄介な状態異常攻撃能力を持っていても攻撃が当たらなければ脅威ではなく、しかも攻撃を当てれば確実に倒せると証明されナギには恐怖を感じる理由がなかった。
それでも一度でも攻撃を食らって毒状態になると直す手段がないので警戒を解くようなことはなかった。
でも様子見をするほどの相手だとも思っていないナギは躊躇することなく3匹へと走り出した。
その迷いのない走りにラット達は向かい打つように一斉に跳びかかった。
とは言ってもやはり動物というべきか少しずつだがタイミングがズレていた。
そんなわかりやすい隙をナギが見逃すはずもなく空歩を使用して一気に跳び上がってラット達の頭上を通り抜け、一気に反転して背後から走りぬくように3匹の間を走り抜けた。
もちろんただ走り抜けたのではなくそれぞれの首筋には深い切り傷が浮かんでいてHPはすべてが黒く染まり、次の瞬間には一斉に光となって消えてしまった。
「ふぅ…だいぶなじんできたしこの調子で他のも試すとしますか」
たった今戦闘を終えたばかりにもかかわらずナギは満足した様子はなく、軽く息を吐くと今使用したロングソードをしまって別のロングソードを取り出して移動した。
今回の目的は敵を倒すことではなく作った武具を試すこと、つまりはロングソード10本すべて試すことなのだ。
それが終わるまでナギはフィールドで走り回って魔物を狩り続けるのだった。
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