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第五章 決闘イベント
第二百四十五話 GMコール
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そして問題の解決に動き出したドラゴは近くで様子を見ていたプレイヤー達から話を聞き終わると疲れたように溜息を洩らした。
「はぁ~くだらない。なんだよ挨拶しに来た奴に絡んで?無視されて殴り掛かって転ばされたって…ダサすぎる」
「お前もかなり身もふたもないこと言うよな?」
「俺のは考え抜いたうえでの言葉だからいいんだ。反対にナギのは単純に思ったことを考えなしに言葉にしただけだろ?」
「たまには考えてるぞ?なぜか全員怒り狂うんだけどな」
「考えてない証拠だよ。それよりも何か弁明はあるか?」
軽くナギとじゃれあうように話していたドラゴだったがひと段落すると、離れたところでプレイヤー達に囲まれて動けない絡んできた男へ問いかけた。
ただ男は動けない間も不満そうな態度を変えることはなくて今もナギに対してだけではなくドラゴまでも睨みつけていた。
「はぁ?俺が何をしたっていうんだよ!」
「この状況でもそんな言葉が出てくることには関心すら覚えるよ。何をしたかというなら、今回の話し合いという場で不要な騒ぎを起こして邪魔をした…というか、こうして今も邪魔をしている」
「邪魔なんかしてないだろうがっ!俺はこの場に変な奴がいたから注意してやっただけだ!」
何をしてしまったのか理解できていないのかと思ってドラゴが丁寧に説明したわけだが、相手は一切理解できていないようで自分は悪くないと偉そうに言うだけだった。
ここまでくると周囲のプレイヤー達も完全に引いていて、一緒に来ていた者達すらもはや関係ないとでも言いたげに距離を取っていた。それでもパーティーのリーダーだけはしっかり話さないといけないと思ったようで申し訳なさそうに前に出てきた。
「うちのパーティーのメンバーが申し訳ない」
「あぁペルントのところだったのか…もしかして臨時か?」
「えぇ、少し前に元々のメンバーが用事で長期で参加できないので止めると言われて、その後に入ったのが彼だったんですが…」
申し訳なさそうに話していたのは騒いでいた男のパーティーのリーダーでなんと女性だった。少しくすんだようなグレーの髪を切りそろえ眼鏡をかけたいかにも真面目!といった感じの外見をしていた。
証拠にこうしてドラゴと話している間も本当に申し訳なさそうにぺこぺこと頭を何度となく下げていた。
その様子にはドラゴも同情したようで優しい表情で声をかけた。
「気にしなくていいとは言えないですけど、今回の事は少なくともペルントに責任はないだろう。止めていたのもそっちのパーティーだったしな」
「そういってもらえると助かります」
「とにかく彼は無関係という事でかまいませんね?」
「もちろんです。すでに彼はパーティーからリーダー権限で脱退させてあります」
「わかった」
確認してドラゴは満足そうに頷いていまだに動けないように周囲を囲まれている男へ向き直って話し出そうとしたんだが、その前に今の会話で気になることのあったナギが口を挟んだ。
「少しいいか?」
「なんだよ…今いい感じだったのに」
「いや、別に大したことでもないんだけどな。リーダー権限で一歩的に脱退ってさせられるのか?なんか問題置きそうだなと思ってな」
「あぁ~そういう事か、時間もないし簡単に言うとパーティーの半分以上が賛成した場合に限り可能なんだ。そして今回のような場合だと問題になるようなことのほうが少ないからスムーズに進んだわけだ」
「なるほどな!遮って悪かったな‼」
聞きたいことが聞けて満足したナギは満面の笑顔を浮かべると、周りの空気など完全に無視して端の方へと戻っていった。
その背中を見ながらドラゴは疲れたように一瞬頭にい手を当てていたが、なんとか切り替えて目の前の問題を片付けようと決めた。
「さて、これで一番の懸念はなくなったけれど…あんたはどうする?素直に自分の非を認めればこちらも対応は考えるけど?」
「ふざけんなっ!なんで俺が謝んなきゃなんねぇーんだよ!」
「話を聞いていなかったのか?」
「聞いていたがだからどうした?俺は悪いことはしていない。そこの不当にパーティーを追い出した奴らも覚えてろよ!」
「はぁ…話にならない。大事にしたくなかったけど、仕方ないか…」
もはや話すら成立しない相手に対してドラゴはあきらめを含んだ溜息を吐くとメニューを開いて何か操作した。
何をやっているのかわかっていないナギは首をかしげていたが、他のプレイヤー達はわかっているのか嫌そうに顔を青褪めていたり楽しそうに目を輝かせたりと反応は様々だった。
そして少しするとドラゴの頭上に小さな光と共に小さな人影が現れた。
「呼ばれて登場!エンジェルさんですよ‼」
「なんで呼ばれたかはわかってるんだよな?」
一切場の空気を読まずにハイテンションでポーズまで決めて現れたエンジェルは名の通り天使の格好をしていた。
ただ頭上でハイテンションに行動されたドラゴは困ったように表情をひきつらせながら状況を理解できているのかを確認した。
「はいはい!ちゃ~んと、わかってますよ。マナー違反の阿呆が出たので対処してほしいという事ですよね?」
「ストレートに言えばそうなるな…」
あまりにも身も蓋もない言い方に少し言い淀みながらもドラゴはしっかりと頷いて答えた。
それを確認してエンジェルは羽ばたいて目の前の青褪めている絡んでいた男の方へと近づいた。
「へぇ~あなたがそうですかぁ~?」
「な、なんだよ…」
「あぁ~別にないも話す必要ないですよ?私はここに居る方々の視界情報を確認できるので、すでにあなたが何をやったのかは把握済みです」
「っ⁉」
「ただ今回の問題は大事にもなっていませんし、軽い迷惑行為と認定します。素直にあちらのプレイヤー:ナギに対して謝罪をすれば不問にしてもいいですよ?」
今回は大きく問題になるような内容ではなかったことも考えてエンジェルは妥当な判断を伝えたが、当の男の方は何か不満なようでうつむいたまま何も話そうとしない。この態度だけでも何を考えているのかはだれが見ても明らかだがエンジェルは無視して話を進める。
「それではもう一人の当事者の方も前に出てきてくれますか~」
「うん?あ、俺か」
すでに自分が居なくても進む話に興味を失っていたナギは呼ばれたことに気が付いてゆっくりと前に出た。
今までうつむいていた男は何を思ったのかナギに向かって跳びかかった。とても謝罪しようとしている動きではないので周囲にいたプレイヤー達が止めようと動き出そうとしたが、ドラゴが手で止めた。
いきなり襲いかかられたナギはつまらなそうに冷めた目で見つめて、勢いそのままに流れるように投げ飛ばした。
「ふぅ…これでよかったんですかね?」
「はい!ありがとうございます‼これでしっかりと罰則を与えられます」
「それはよかった」
この2人の会話だけで今何があったのか周囲のプレイヤー達は正確に理解した。
あのままでは男は何も話さず時間が無駄に過ぎていた可能性が高く、なのでエンジェルは当事者で怒りの矛先が向いているナギを建前は『謝罪を受け取るために呼び出し』だが『明確な危害を与えようとした現場の目撃』こそが本当の目的であった。
今までは軽い迷惑行為で最初に言ったように謝罪してしまえば問題のない範囲だったのだが、どう見ても反省していない人間を許すのは今後何度も問題が起きる危険性があるのでこんな違反すれすれの方法で現場を押さえることにしたのだ。
「では、これで言い逃れもできませんね。まずは【一定期間のログイン禁止】【即時ログアウト】を権限で起動」
「まっ!」
男は何かを言い切る前に強制的にログアウトさせられてしまったのだった。
その後は明確な罰則は後日に決定するという事でエンジェルはにこやかに去って行った。残されたプレイヤー達も話し合いという空気ではなくなってしまい、時機を見て再度開催すると約束をして解散となってしまった。
「まったく…ナギが来ると問題ばかり起きるな」
「いや、俺は悪くないだろう。むしろ俺は被害者のはずだ」
「そうなんだけどなぁ…」
「なんというか~」
「昔から見ているとな」
「やっぱり必然って感じがしてしまいます」
「お前ら本当に仲いいな…そういえば一つ聞きたいことがあったんだけどいいか?」
全員が交互に話す姿にナギは呆れたように苦笑いを浮かべていたが、すぐに気になっていたことを思い出したようだった。
「別にいいぞ?今日の予定はなくなったしな」
「あの天使って結局何だったんだ?」
「「「「…」」」」
「おい、なんかいえよ…」
「マジでか…GMコールって聞いたことないのか?」
「う~ん…どこかで聞いたような気もするけど、記憶にないな!」
「そうか、なら説明するけどな」
あまりにも明るく答えるナギに対して何か言う気力もなくしたドラゴは丁寧にGMコールについて説明するのだった。毛局ナギが完全に疑問をなくすまで続いた説明で時間を取られたドラゴ達はログアウトしてその日は終わってしまうのだった
「はぁ~くだらない。なんだよ挨拶しに来た奴に絡んで?無視されて殴り掛かって転ばされたって…ダサすぎる」
「お前もかなり身もふたもないこと言うよな?」
「俺のは考え抜いたうえでの言葉だからいいんだ。反対にナギのは単純に思ったことを考えなしに言葉にしただけだろ?」
「たまには考えてるぞ?なぜか全員怒り狂うんだけどな」
「考えてない証拠だよ。それよりも何か弁明はあるか?」
軽くナギとじゃれあうように話していたドラゴだったがひと段落すると、離れたところでプレイヤー達に囲まれて動けない絡んできた男へ問いかけた。
ただ男は動けない間も不満そうな態度を変えることはなくて今もナギに対してだけではなくドラゴまでも睨みつけていた。
「はぁ?俺が何をしたっていうんだよ!」
「この状況でもそんな言葉が出てくることには関心すら覚えるよ。何をしたかというなら、今回の話し合いという場で不要な騒ぎを起こして邪魔をした…というか、こうして今も邪魔をしている」
「邪魔なんかしてないだろうがっ!俺はこの場に変な奴がいたから注意してやっただけだ!」
何をしてしまったのか理解できていないのかと思ってドラゴが丁寧に説明したわけだが、相手は一切理解できていないようで自分は悪くないと偉そうに言うだけだった。
ここまでくると周囲のプレイヤー達も完全に引いていて、一緒に来ていた者達すらもはや関係ないとでも言いたげに距離を取っていた。それでもパーティーのリーダーだけはしっかり話さないといけないと思ったようで申し訳なさそうに前に出てきた。
「うちのパーティーのメンバーが申し訳ない」
「あぁペルントのところだったのか…もしかして臨時か?」
「えぇ、少し前に元々のメンバーが用事で長期で参加できないので止めると言われて、その後に入ったのが彼だったんですが…」
申し訳なさそうに話していたのは騒いでいた男のパーティーのリーダーでなんと女性だった。少しくすんだようなグレーの髪を切りそろえ眼鏡をかけたいかにも真面目!といった感じの外見をしていた。
証拠にこうしてドラゴと話している間も本当に申し訳なさそうにぺこぺこと頭を何度となく下げていた。
その様子にはドラゴも同情したようで優しい表情で声をかけた。
「気にしなくていいとは言えないですけど、今回の事は少なくともペルントに責任はないだろう。止めていたのもそっちのパーティーだったしな」
「そういってもらえると助かります」
「とにかく彼は無関係という事でかまいませんね?」
「もちろんです。すでに彼はパーティーからリーダー権限で脱退させてあります」
「わかった」
確認してドラゴは満足そうに頷いていまだに動けないように周囲を囲まれている男へ向き直って話し出そうとしたんだが、その前に今の会話で気になることのあったナギが口を挟んだ。
「少しいいか?」
「なんだよ…今いい感じだったのに」
「いや、別に大したことでもないんだけどな。リーダー権限で一歩的に脱退ってさせられるのか?なんか問題置きそうだなと思ってな」
「あぁ~そういう事か、時間もないし簡単に言うとパーティーの半分以上が賛成した場合に限り可能なんだ。そして今回のような場合だと問題になるようなことのほうが少ないからスムーズに進んだわけだ」
「なるほどな!遮って悪かったな‼」
聞きたいことが聞けて満足したナギは満面の笑顔を浮かべると、周りの空気など完全に無視して端の方へと戻っていった。
その背中を見ながらドラゴは疲れたように一瞬頭にい手を当てていたが、なんとか切り替えて目の前の問題を片付けようと決めた。
「さて、これで一番の懸念はなくなったけれど…あんたはどうする?素直に自分の非を認めればこちらも対応は考えるけど?」
「ふざけんなっ!なんで俺が謝んなきゃなんねぇーんだよ!」
「話を聞いていなかったのか?」
「聞いていたがだからどうした?俺は悪いことはしていない。そこの不当にパーティーを追い出した奴らも覚えてろよ!」
「はぁ…話にならない。大事にしたくなかったけど、仕方ないか…」
もはや話すら成立しない相手に対してドラゴはあきらめを含んだ溜息を吐くとメニューを開いて何か操作した。
何をやっているのかわかっていないナギは首をかしげていたが、他のプレイヤー達はわかっているのか嫌そうに顔を青褪めていたり楽しそうに目を輝かせたりと反応は様々だった。
そして少しするとドラゴの頭上に小さな光と共に小さな人影が現れた。
「呼ばれて登場!エンジェルさんですよ‼」
「なんで呼ばれたかはわかってるんだよな?」
一切場の空気を読まずにハイテンションでポーズまで決めて現れたエンジェルは名の通り天使の格好をしていた。
ただ頭上でハイテンションに行動されたドラゴは困ったように表情をひきつらせながら状況を理解できているのかを確認した。
「はいはい!ちゃ~んと、わかってますよ。マナー違反の阿呆が出たので対処してほしいという事ですよね?」
「ストレートに言えばそうなるな…」
あまりにも身も蓋もない言い方に少し言い淀みながらもドラゴはしっかりと頷いて答えた。
それを確認してエンジェルは羽ばたいて目の前の青褪めている絡んでいた男の方へと近づいた。
「へぇ~あなたがそうですかぁ~?」
「な、なんだよ…」
「あぁ~別にないも話す必要ないですよ?私はここに居る方々の視界情報を確認できるので、すでにあなたが何をやったのかは把握済みです」
「っ⁉」
「ただ今回の問題は大事にもなっていませんし、軽い迷惑行為と認定します。素直にあちらのプレイヤー:ナギに対して謝罪をすれば不問にしてもいいですよ?」
今回は大きく問題になるような内容ではなかったことも考えてエンジェルは妥当な判断を伝えたが、当の男の方は何か不満なようでうつむいたまま何も話そうとしない。この態度だけでも何を考えているのかはだれが見ても明らかだがエンジェルは無視して話を進める。
「それではもう一人の当事者の方も前に出てきてくれますか~」
「うん?あ、俺か」
すでに自分が居なくても進む話に興味を失っていたナギは呼ばれたことに気が付いてゆっくりと前に出た。
今までうつむいていた男は何を思ったのかナギに向かって跳びかかった。とても謝罪しようとしている動きではないので周囲にいたプレイヤー達が止めようと動き出そうとしたが、ドラゴが手で止めた。
いきなり襲いかかられたナギはつまらなそうに冷めた目で見つめて、勢いそのままに流れるように投げ飛ばした。
「ふぅ…これでよかったんですかね?」
「はい!ありがとうございます‼これでしっかりと罰則を与えられます」
「それはよかった」
この2人の会話だけで今何があったのか周囲のプレイヤー達は正確に理解した。
あのままでは男は何も話さず時間が無駄に過ぎていた可能性が高く、なのでエンジェルは当事者で怒りの矛先が向いているナギを建前は『謝罪を受け取るために呼び出し』だが『明確な危害を与えようとした現場の目撃』こそが本当の目的であった。
今までは軽い迷惑行為で最初に言ったように謝罪してしまえば問題のない範囲だったのだが、どう見ても反省していない人間を許すのは今後何度も問題が起きる危険性があるのでこんな違反すれすれの方法で現場を押さえることにしたのだ。
「では、これで言い逃れもできませんね。まずは【一定期間のログイン禁止】【即時ログアウト】を権限で起動」
「まっ!」
男は何かを言い切る前に強制的にログアウトさせられてしまったのだった。
その後は明確な罰則は後日に決定するという事でエンジェルはにこやかに去って行った。残されたプレイヤー達も話し合いという空気ではなくなってしまい、時機を見て再度開催すると約束をして解散となってしまった。
「まったく…ナギが来ると問題ばかり起きるな」
「いや、俺は悪くないだろう。むしろ俺は被害者のはずだ」
「そうなんだけどなぁ…」
「なんというか~」
「昔から見ているとな」
「やっぱり必然って感じがしてしまいます」
「お前ら本当に仲いいな…そういえば一つ聞きたいことがあったんだけどいいか?」
全員が交互に話す姿にナギは呆れたように苦笑いを浮かべていたが、すぐに気になっていたことを思い出したようだった。
「別にいいぞ?今日の予定はなくなったしな」
「あの天使って結局何だったんだ?」
「「「「…」」」」
「おい、なんかいえよ…」
「マジでか…GMコールって聞いたことないのか?」
「う~ん…どこかで聞いたような気もするけど、記憶にないな!」
「そうか、なら説明するけどな」
あまりにも明るく答えるナギに対して何か言う気力もなくしたドラゴは丁寧にGMコールについて説明するのだった。毛局ナギが完全に疑問をなくすまで続いた説明で時間を取られたドラゴ達はログアウトしてその日は終わってしまうのだった
応援ありがとうございます!
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