262 / 294
第五章 決闘イベント
第二百五十七話 決勝戦?
しおりを挟む
「あぁぁぁ……」
準決勝が終わって控室に戻されたナギはなぜか豪華になっていた部屋で、置かれていたソファーで伸び尽きていた。
『完全に燃え尽きてますね~』
「そりゃ…あれだけの戦いをすれば燃え尽きもする…」
寝転がるナギのおでこの上に座ってソルテは指で突いていた。
普段なら手で払うような状況だが今は本当にそんな気力すらわかないようだった。
「真面目にどうしようかな。決勝戦…」
『まぁ~あんな戦いの後だと微妙ですよね。主に相手が』
「そうなんだよなぁ~」
やる気のない返事を返しながらナギは目の前に表示されている決勝の相手を確認していた。
名前はアーサーとありきたりともいえてナギは興味は薄れるというのに、予選から今までの試合も軽く見ていたが興味を惹かれる要素もなかったのだ。
「本当に棄権しようかな。楽しい気持ちのまま終わりたいし」
『わからないではないですけど、それだと負けた人たちが不憫ですよ』
「だから即決しないで悩んでるんだよ」
もはや戦う事の目的は果たし終えているナギとしては棄権しても問題なかったのだが、さすがに本気で優勝を狙っていて負けたプレイヤー達の罪悪から決めかねていたのだ。
それでも相手がつまらなすぎてやる気が出てこなかった。
「あぁ~~~面倒だけど戦うか、すぐに終わらせればいいだけだしな」
『決勝戦ですけど、観客の皆さんも消化試合だと思っている人が多いみたいですしね』
「今回はイベントの運営がな。少し読みが甘かったから決勝戦が覚める結果になった…という事で諦めてもらうか」
『それしかないですよね~』
本当に完全に相手を格下以前の問題として戦いの相手とすら思われていなかった。
それほどまでに見ただけでもナギとアーサーというプレイヤーとの間には越えられない圧倒的な実力差があった。
とにかく決勝に出ることは決めてもやる気の出ないナギは、これまでのように集中することもなく試合開始の時刻まで眠って過ごした。
そして開始の時間10秒前にソルテに起こされてナギは本当に行きたくなさそうにしながらステージへと移動した。
『あ、ナギ選手の登場です!まさか決勝戦で遅刻してくるとは思いませんでした!』
「なんか、すみません…」
入った瞬間にアナウンスは姿を現さなかったナギに注意とまでは言えないが少し辛辣な言葉で出迎え、遅刻した自覚があるだけにナギも素直に頭を下げていた。なにせもはや勝負は見えていたとしても初の決闘大会イベントの決勝戦で片方の選手が遅刻で棄権!なんてことは運営としても避けたかったのだ。
その安心感やら苛立ちやらで少し言葉がきつくなっても誰も文句は言えなかった。
そして決勝戦の相手であるアーサーは金髪の好青年といった外見に鎧と剣と純粋な戦士職の装備をしていた。
「遅刻して悪かったね」
「そんなことは気にしなくていいですよ。それよりも僕はあなたに言いたいことがあるんです」
「?よくわからないが、どうぞ」
初対面の相手に言いたいことがあると言われて不思議そうに首をかしげたが、特に断る理由もないのでナギは聞くことにした。
その反応にあからさまにむっ!としたように見えたアーサーは一歩前に出て剣を突き付けた。
「では言わせてもらいますが、あんな戦い方をして恥ずかしくないのですか?」
「あんなとは具体的にどういうことを指しているんだ?」
「今回のイベントでのあなたの試合全部ですよ!人を自身の武器の実験台にしたり!誰も見たことのないアイテムを自慢でもするように使用して、しかも準決勝まであなたは手加減していましたね‼」
「…それで?別に悪いことはしていないが」
「悪いに決まっているでしょう!真剣に戦っている他の参加者達に悪いと思わないんですか⁉」
「……はぁ」
目の前の喚くアーサーを見てナギは溜息を吐いた。さすがにばれないように気を使ったが、すでにナギは話など聞いてはおらずアナウンスが速く開始の合図を出してくれないかな~と思っていた。
それでも試合は開始されずアーサーの勢いはヒートアップしていた。
「たとえ相手が自分より弱くとも全力で相手をするのが、真剣に挑んでくれる相手への礼儀というものでしょう!なのに意図的に加減して、自身の武器の実験台として利用するなんて…これが悪くないなどとは言わせませんよ‼」
「…で?だからなに?」
「ですから、僕が勝ったら皆さんに謝罪してください‼」
「はぁ~マジで意味が分からないな」
一方的に告げられた要求についにナギも我慢する気すら失せたようで、あからさまなほどに溜息を吐くと今までのような相手を見下した表情をやめた。
「ったく勝手な意見で自分の要望だけ話しやがって、最初は興味がないから放置してたけどさすがにうっとおしいな」
「あ、何て言い草だ⁉」
「はぁ?言い方を指摘できるような立場かよ」
呆れたようにそう言ったナギは子供に言い聞かせるようにゆっくりと話しだした。
「まず最初に俺は別に手加減することは悪いことだとは思わない。何故なら毎試合一瞬で決着がついて誰が面白い?この大会はイベントだ。一種の見世物である以上はそんな試合ではいけないだろ?」
「そんな理由で!」
「だいたい戦った相手に文句を言われるのなら理解できるが、お前はこれから戦う相手だろ?なぜ文句を言われないといけない」
「関係ないだろう!あなたの間違いを僕は指摘している「あぁもういいよ」⁉」
「おい、試合開始してもらっていいか~!」
本格的に話すだけ無駄だと判断したナギは騒ぐアーサーを無視して会場全体に響き渡る声で話した。
あまりの出来事の数々に会場は静まり何とも言えない空気に支配されたが、少ししてアナウンスが始まった。
『え~それでは選手のお2人も熱くなっているようですし決勝戦を始めたいともいます!』
「ちょっと待ってくれ僕はまだ…」
『では、決勝戦開始!』
何か話そうとしていたアーサーだったがとうとうアナウンスからも無視されてしまい一部から同情されていた。
それでも試合が始まってしまった以上は仕方がないとアーサーは剣を構えてナギへと向き直った。
「こうな手は仕方ないあなたを倒してみんなに謝ってもらう事にします!」
「あっそ、ならせいぜい頑張って近づくことだな」
「なに?」
『ファイヤーランス』
もはや質問に答える気すらないナギは返事の代わりと言わないばかりに本戦ではまともに使っていなかった魔法による遠距離攻撃を始めた。戦士という職業は純粋な近距離戦闘職で遠距離で間断なく撃ち込まれ続ければ戦いなどできなくなるのだ。
それを理解しているナギは一発撃てば次を準備してすぐに放つという単純作業を繰り返す。しかも狙いは嫌味なほどに正確で同移動しようが移動した先に飛んできて、防ごうとしても直前で動きを変えて確実に当たってくるのだ。
「ッ⁉」
「こういうことだ。俺が本気で戦うという事はな」
返事をすることすらできないアーサーに対してナギは攻撃を続けながら余裕をもって話していた。
しかも次第に一発だったのが二発へと時間が経つにつれて一回の攻撃で飛んでくる数が増えて言ったのだ。
「俺は昔から並列で処理することが得意なんだよ。だから本当の意味で本気で戦うのなら、この状態で更に弓で追撃も仕掛けるところだが…必要なさそうだな」
完全に動くことすら封じられたアーサーは一方的に攻撃を受けて試合開始から1分半ほどの時間で決着がついた。
あまりの壮絶な試合の結果に観客達は優勝者が決まっても完成すら上げることを忘れて目の前のナギへ様々な感情が向いていた。
そんな中でも冷静だったのはナギと関わりのあるドラゴ達数名と試合の運営だけだった。
『試合終了!これにて第一回決闘大会優勝者が決まりました‼』
明るいアナウンスの優勝者決定の放送にも誰も反応することなく、何なら当事者のナギすら興味がないようで勝手に控室に帰って行ってしまっていた。
準決勝が終わって控室に戻されたナギはなぜか豪華になっていた部屋で、置かれていたソファーで伸び尽きていた。
『完全に燃え尽きてますね~』
「そりゃ…あれだけの戦いをすれば燃え尽きもする…」
寝転がるナギのおでこの上に座ってソルテは指で突いていた。
普段なら手で払うような状況だが今は本当にそんな気力すらわかないようだった。
「真面目にどうしようかな。決勝戦…」
『まぁ~あんな戦いの後だと微妙ですよね。主に相手が』
「そうなんだよなぁ~」
やる気のない返事を返しながらナギは目の前に表示されている決勝の相手を確認していた。
名前はアーサーとありきたりともいえてナギは興味は薄れるというのに、予選から今までの試合も軽く見ていたが興味を惹かれる要素もなかったのだ。
「本当に棄権しようかな。楽しい気持ちのまま終わりたいし」
『わからないではないですけど、それだと負けた人たちが不憫ですよ』
「だから即決しないで悩んでるんだよ」
もはや戦う事の目的は果たし終えているナギとしては棄権しても問題なかったのだが、さすがに本気で優勝を狙っていて負けたプレイヤー達の罪悪から決めかねていたのだ。
それでも相手がつまらなすぎてやる気が出てこなかった。
「あぁ~~~面倒だけど戦うか、すぐに終わらせればいいだけだしな」
『決勝戦ですけど、観客の皆さんも消化試合だと思っている人が多いみたいですしね』
「今回はイベントの運営がな。少し読みが甘かったから決勝戦が覚める結果になった…という事で諦めてもらうか」
『それしかないですよね~』
本当に完全に相手を格下以前の問題として戦いの相手とすら思われていなかった。
それほどまでに見ただけでもナギとアーサーというプレイヤーとの間には越えられない圧倒的な実力差があった。
とにかく決勝に出ることは決めてもやる気の出ないナギは、これまでのように集中することもなく試合開始の時刻まで眠って過ごした。
そして開始の時間10秒前にソルテに起こされてナギは本当に行きたくなさそうにしながらステージへと移動した。
『あ、ナギ選手の登場です!まさか決勝戦で遅刻してくるとは思いませんでした!』
「なんか、すみません…」
入った瞬間にアナウンスは姿を現さなかったナギに注意とまでは言えないが少し辛辣な言葉で出迎え、遅刻した自覚があるだけにナギも素直に頭を下げていた。なにせもはや勝負は見えていたとしても初の決闘大会イベントの決勝戦で片方の選手が遅刻で棄権!なんてことは運営としても避けたかったのだ。
その安心感やら苛立ちやらで少し言葉がきつくなっても誰も文句は言えなかった。
そして決勝戦の相手であるアーサーは金髪の好青年といった外見に鎧と剣と純粋な戦士職の装備をしていた。
「遅刻して悪かったね」
「そんなことは気にしなくていいですよ。それよりも僕はあなたに言いたいことがあるんです」
「?よくわからないが、どうぞ」
初対面の相手に言いたいことがあると言われて不思議そうに首をかしげたが、特に断る理由もないのでナギは聞くことにした。
その反応にあからさまにむっ!としたように見えたアーサーは一歩前に出て剣を突き付けた。
「では言わせてもらいますが、あんな戦い方をして恥ずかしくないのですか?」
「あんなとは具体的にどういうことを指しているんだ?」
「今回のイベントでのあなたの試合全部ですよ!人を自身の武器の実験台にしたり!誰も見たことのないアイテムを自慢でもするように使用して、しかも準決勝まであなたは手加減していましたね‼」
「…それで?別に悪いことはしていないが」
「悪いに決まっているでしょう!真剣に戦っている他の参加者達に悪いと思わないんですか⁉」
「……はぁ」
目の前の喚くアーサーを見てナギは溜息を吐いた。さすがにばれないように気を使ったが、すでにナギは話など聞いてはおらずアナウンスが速く開始の合図を出してくれないかな~と思っていた。
それでも試合は開始されずアーサーの勢いはヒートアップしていた。
「たとえ相手が自分より弱くとも全力で相手をするのが、真剣に挑んでくれる相手への礼儀というものでしょう!なのに意図的に加減して、自身の武器の実験台として利用するなんて…これが悪くないなどとは言わせませんよ‼」
「…で?だからなに?」
「ですから、僕が勝ったら皆さんに謝罪してください‼」
「はぁ~マジで意味が分からないな」
一方的に告げられた要求についにナギも我慢する気すら失せたようで、あからさまなほどに溜息を吐くと今までのような相手を見下した表情をやめた。
「ったく勝手な意見で自分の要望だけ話しやがって、最初は興味がないから放置してたけどさすがにうっとおしいな」
「あ、何て言い草だ⁉」
「はぁ?言い方を指摘できるような立場かよ」
呆れたようにそう言ったナギは子供に言い聞かせるようにゆっくりと話しだした。
「まず最初に俺は別に手加減することは悪いことだとは思わない。何故なら毎試合一瞬で決着がついて誰が面白い?この大会はイベントだ。一種の見世物である以上はそんな試合ではいけないだろ?」
「そんな理由で!」
「だいたい戦った相手に文句を言われるのなら理解できるが、お前はこれから戦う相手だろ?なぜ文句を言われないといけない」
「関係ないだろう!あなたの間違いを僕は指摘している「あぁもういいよ」⁉」
「おい、試合開始してもらっていいか~!」
本格的に話すだけ無駄だと判断したナギは騒ぐアーサーを無視して会場全体に響き渡る声で話した。
あまりの出来事の数々に会場は静まり何とも言えない空気に支配されたが、少ししてアナウンスが始まった。
『え~それでは選手のお2人も熱くなっているようですし決勝戦を始めたいともいます!』
「ちょっと待ってくれ僕はまだ…」
『では、決勝戦開始!』
何か話そうとしていたアーサーだったがとうとうアナウンスからも無視されてしまい一部から同情されていた。
それでも試合が始まってしまった以上は仕方がないとアーサーは剣を構えてナギへと向き直った。
「こうな手は仕方ないあなたを倒してみんなに謝ってもらう事にします!」
「あっそ、ならせいぜい頑張って近づくことだな」
「なに?」
『ファイヤーランス』
もはや質問に答える気すらないナギは返事の代わりと言わないばかりに本戦ではまともに使っていなかった魔法による遠距離攻撃を始めた。戦士という職業は純粋な近距離戦闘職で遠距離で間断なく撃ち込まれ続ければ戦いなどできなくなるのだ。
それを理解しているナギは一発撃てば次を準備してすぐに放つという単純作業を繰り返す。しかも狙いは嫌味なほどに正確で同移動しようが移動した先に飛んできて、防ごうとしても直前で動きを変えて確実に当たってくるのだ。
「ッ⁉」
「こういうことだ。俺が本気で戦うという事はな」
返事をすることすらできないアーサーに対してナギは攻撃を続けながら余裕をもって話していた。
しかも次第に一発だったのが二発へと時間が経つにつれて一回の攻撃で飛んでくる数が増えて言ったのだ。
「俺は昔から並列で処理することが得意なんだよ。だから本当の意味で本気で戦うのなら、この状態で更に弓で追撃も仕掛けるところだが…必要なさそうだな」
完全に動くことすら封じられたアーサーは一方的に攻撃を受けて試合開始から1分半ほどの時間で決着がついた。
あまりの壮絶な試合の結果に観客達は優勝者が決まっても完成すら上げることを忘れて目の前のナギへ様々な感情が向いていた。
そんな中でも冷静だったのはナギと関わりのあるドラゴ達数名と試合の運営だけだった。
『試合終了!これにて第一回決闘大会優勝者が決まりました‼』
明るいアナウンスの優勝者決定の放送にも誰も反応することなく、何なら当事者のナギすら興味がないようで勝手に控室に帰って行ってしまっていた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
956
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる