COLD LIGHT ~七美と愉快なカプセル探偵たち~

つも谷たく樹

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第五章 捜査会議 七美 arrange

 ‐1‐

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 ――翌日の朝。『小森義雄』とキャンバスノートに書いていた女性は、廃神社にて張り込みをしていた捜査員により、任意同行を求められ、そのまま逮捕となった。
 
 彼女の供述によると、四日目の丑の刻参りをしていた際、突如として知らない女が現れたので、急いで跡を追い、後方から跳ねたとのこと。
 
 そして、もうひとつの疑問であった、なぜ被害者は、見ず知らずの人物を恨んでいた理由についても七美の推測した通りで、頻繁に電話のやり取りをしていた男性から、再度、事情を尋ねたところ、拾った財布にあった社員証から山田一夫に成りすまし、前川孝美に対し結婚詐欺を働いていたのを認めた。
 
 今後は前川の回復を待ったうえで、民事、及び刑事での詐欺罪として裁判が争われる見通しとなり、とにもかくにも轢き逃げ事件に関しては無事に解決となった。


「うーむ、さすがナナちゃんじゃのぉ」

 訓示室の長机で、老刑事は腕を組む。
 いつも七美は警護だけに留まらず、根本的な解決までおこなっているのに感心をする。

 今回の実業家殺害事件は、自身の期限の延長が掛かっており、ぜひともあの聡明な頭脳を貸してほしいと考えるも、あくまで坂之上アーケード警備隊は、特殊任務の警備会社。

 協力を求めるとなれば、本来の業務ではなくなってしまい、どう言って説得をしようか頭を悩ませていた。

「そうじゃ、ナナちゃんは『守る』のが仕事じゃったのぉ」

 ポンッと膝を打ち、高橋は椅子から立ち上がる。
 ふたたび彼女の事務所に赴こうと、訓示室を出た途端、廊下を走ってきた捜査員と衝突してしまった。

「あいてて、どうしたのじゃ」
「いててて、申しわけありません。ご報告がありまして」

 ふたりとも尻もちをつき、額を押さえていた。

「あいてて、ひょっとして犯人確保か」
「いててて、はい。麦仲の財布を持ち込む奴がいました」
「なーんじゃとー」
「すでに捜査員が現地に到着しています」

 麦仲の所持していた財布はブランド品で、中身を抜いたあとに売却する可能性がある。
 高橋は大手の買い取りセンターに連絡を入れ、もしも査定に訪れる者がいれば、一報してもらうよう、通達していたのだった。

「ほぅほぅ、なかなか素早いのぉ」
「任意同行中でありまして、逮捕は目前です」

 お互い額をさすり、尻もちをついたまま会話をしている。
 そんな状況にようやく気づいたのか、ふたりは恥ずかしそうにスーツのほこりを払うと、同時に立ち上がった。

「よしよし、これにて一件落着じゃ」

 老刑事は晴々はればれとした顔となり、一階にある自動販売機コーナーに向かう。
 果報は寝て待てのことわざ通り、コーヒーでも飲みながら報告が上がるのを待とうとした。
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