COLD LIGHT ~七美と愉快なカプセル探偵たち~

つも谷たく樹

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第五章 捜査会議 七美 arrange

 ‐2‐

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 ――同刻。
 昨晩、大木場はアパートに戻らず、事務所の近くにあるサウナで整えたあと、公園のベンチで寝ていた。
 開店とともに出社して、電話番をするつもりであったが、すでに三倉が机の上でキーボードを叩いていた。

「おはようございまーす。早いっすね。三倉さん」

 熊みたいな巨体を揺らし、昨晩のデート相手のかたわらに立つ。
 最前まで、険しい顔でモニターに見入っていた彼女だが、大木場の声を聞いた途端、やさしげな瞳になった。

「おはようございます。昨晩はごちそうさまでした。なにか忘れ物でしょうか」

 彼女は、メイクといってもファンデーション程度で、リップカラーもヌード系ベージュのみ。
 セクシーで都会的な七美と違い、三倉は健康的でエネルギッシュな雰囲気を持つ女性だった。

「いつも指示待ちなので、たまには自発的に動こうと思いまして。それにしても、こんな朝からお仕事っすか?」
「昨晩は水溜さんに任せっきりだったので、せめて報告書くらいは代わりに仕上げようとしております」
「そうだったんすか。忙しいなかお食事に誘ってしまい申しわけなかったです」

 隊員それぞれに役割があり、依頼内容によって変更があるものの、この大木場と三倉が対象者をガードし、もうひとりの体育会系でありながら、武闘派ではない水溜は、主に尾行や追跡などおこなっている。

 このたび受けていたストーカー案件も、その水溜の手柄により、犯人の居場所を突き止めた次第であり、今後、依頼者は警察に相談をするか、もしくは引っ越しでもすればいいだけであった。

「まったく問題ありませんよ。ところで大木場さん、今、お時間はございますか」
「もちろんっす」

 仕事をするためにやって来たので、むしろ願ったり叶ったり。
 隊長が不在のため業務ではないだろうが、どんな雑用でも引き受けたかった。

「それでしたら、そこにあるお着替えを病院に持っていくのは可能でございますか? 私は、ほかにも掃除や洗濯などありますので、たいへん助かります」

 三倉は鋭い眼差しを緩め、かわいらしく口元をほころばせる。
 返事の代わりに、ガッツポーズをした大木場は、さっそく目の前にあった紙袋を掴んだ。

「あれ? でも水溜兄さんは、どうしたんすか」

 いつもであれば任務が終わり次第、すぐにブランデーを傾けながらデスクで小説を読んでいる。
 徹夜明けであり、仮眠室とも考えたが、使用中の札は掛かっていなかった。

「珍しく家で寝るとの話でして、顔だけ出して、そのまま帰られました」
「そうだったのですね。任せてください。ひとっ走りしてくるっす」

 大木場は元気よく手を振り、廊下へと出ていく。
 その背後から事務所の電話が鳴るも、三倉がいるので階段を下りようとした次の瞬間。

『――なはんですってぇ』

 椅子の倒れる音と、裏返った声があがる。
 ただごとではないと察した大木場は、急いで引き返してきた。

「ど、どうしたんすかっ」
「よくわかりませんが水溜さんが倒れたそうです」
「えーっ」

 けっきょくは三倉もレポート作成を中断し、搬送先へと走る羽目となった。
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