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第6話
しおりを挟むほんとに、嘘じゃないし。
数か月前、モデルの子と知り合った。
すごく可愛い子で。最初からオレに、すごい好意を持ってくれて。
気が利いて、優しくて、電話で話すのも楽しくて。
もしかしたら、この子なら、好きになれるかな、と思った。
蒼紫を諦めさせてくれるかなって。
――オレはもう、ほぼ付き合ってる気分になってて。
もう、必死の覚悟で初体験。
女の子の体に普通に反応して。反応してくれたことにホッとして。
初体験を終えて。
一番の感想は。出来て良かった。だった。
心配だったんだ。
蒼紫のことが好き過ぎて。
オレ、女の子とできなかったら、どうしようって。ずっと怖かったし。
ほんとは。……蒼紫としたいけど。
女好きの蒼紫に、そんな期待は微塵も出来ないし。ていうか、期待なんか絶対しないけど。
だからと言って、他の男なんて嫌だ。絶対、蒼紫を想像しちゃうもん。
蒼紫じゃない人に、蒼紫のことを想像しながら、抱かれたくなんかない。
だったら、オレは、女の子と付き合えるようになるしかない。
……この先、ずっと一人なんて、寂しいから絶対嫌だし。
だから、出来て、ほっとした。
これなら、普通に女の子と付き合って、生きて、いけるかも。
蒼紫に持ってしまうこの感情も、女の子への想いに紛れて消えてくれればいい。そうも思えて、すごくホッとした。
蒼紫の女の子関係の色々を聞かされてきた身としては。……ていうか、聞きたくて聞いてた訳じゃないけど。
なんとなく、オレが童貞をついに捨てたこと、蒼紫にも言わなきゃなーと思ってはいたんだけど。
なんとなく気恥ずかしくて言えないまま、初体験から二週間ほど経っていたある日。
オレの初体験の相手の彼女が、なんと、蒼紫のデートの相手として写真に撮られた。
彼女と仲良く歩いてる蒼紫の写真が、週刊誌に載った。
その写真を見て、なんだか眩暈がぐるぐる。
しばらく考えて、ふっと気づいた。
そういえば……よく、人目がある場所に、誘われたっけ。
オレは、噂になるのが嫌だった。だって蒼紫がよくすっぱぬかれるのに、オレまでそんなになりたくないし。
それに、その子にも迷惑がかかると思って、やんわり断っていた。のだけれど。
ばっちり顔の写ったその写真は、明らかに、誰かのリークな気がした。
そう考えると、最近連絡がなかったこととかも併せて……。
彼女のオレへの態度は、売名行為だったんだなと、悟った。
オレが断ってたから、オレとじゃそういうネタにならないから、蒼紫にいったのかなーとか。
急激に冷めて、初体験は、正直忘れてしまいたい過去になった。
付き合ってたと思ってたのもオレだけだったんだなーと思って。
もう女の子、トラウマになりそう。なんても思ったりもした。
でもまあ……オレは自分がしたこともそこそこ最低だと思ってはいるので。
女の子に対しては、特に何の気持ちも持っていない。
蒼紫を好きな状態で、蒼紫を忘れるために。蒼紫じゃない、女の子と出来るのか、試すようなことを、したんだから。
責められる筈もない。
だから、あれは、とにかく、ノーカウントにすることに自分の中で決めていて。
蒼紫にも、言うつもりは、無かったのに。
からかわれて、ついつい、口が滑ってしまった。
自分ばっかり大人みたいな蒼紫に、もう違うって言いたかった、のも、あったのかもしれない。
いっつも、じぶんばっかり、大人で、オレは子供だよな、ピュアだよな、みたいな。
そんな蒼紫に、ちょっとムカついてたのかも。
オレもう子供じゃないもんね、と。
言いたかった気持ちが、あったのかも。
でも。なんか……意味は分からないんだけど。
この様子だと、オレは、報告の仕方を、失敗したのかもしれない。
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