【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
35 / 856
◇2人の関係

「どんな関係でも」*優月

しおりを挟む


 色々考えながら、シャワーを浴び終えて出て行くと。

 下着の話から、なぜかまた触られることになってしまって。
 あっと言う間に手でイかされてしまって、情けない事に泣いてしまった。

 もうオレの許容範囲は軽く飛び越えて、色んな物が溢れ出て来てる気がする。泣いてた事を、恥ずかしいと思えた時にはもう、玲央が目の前でちょっと困ってて。思わず、ごめんね、と謝ってしまった。

 でもなんか。お前に触るの楽しいって言われたのは、何だか嬉しくて。
 許容範囲めちゃくちゃ飛び越えてしまってても、オレは玲央が笑ってくれると嬉しいんだな、と、思った。

 玲央って、また、オレと会ってくれるのかなと思って、聞いたら。
 何か、そこに随分間があったし。嫌なのかなともドキドキしたけど。


 何か色々考えた末に、会おう、と、言ってくれた。最後までしてないし、とかも、言ってた。そうだよね。しないで寝ちゃったし……。うぅ、オレ、ほんと意味わかんない……。


 食事を取り終えると、言ってくれた通り、玲央がまたドライヤーを掛けてくれる。

「――――……気持ちいい?」

 洗面台の鏡の前で、玲央が後ろから聞いてくる。鏡越しに目があって、自然と笑顔になってしまう。

「……うん」

 頷くと、玲央はふ、と目を細める。

「寝ちまいそうな顔してるもんな」

 そう言って、クスクス笑いながら、優しい手で髪に触れる。


 ……玲央ってほんとに優しいな……。

 美咲が言ってた言葉の意味が、自分の中で、分かってきた。



 玲央は、きっと、色んな人と、楽しんでたい、そういう人で。

 オレにそういう事をしてる玲央って、楽しそうだし。気持ちイイ事が好きで、っていうの――――……玲央に会う迄のオレにはまったく分からなかったけど。

 恋人でもない玲央と、色々してしまった今のオレには……もう、分からなくも、ない。

 そういう事を複数の人としたいっていう所は、やっぱりよく分からないけど。玲央みたいな人が、玲央みたいな感じでするなら……そういう人も居るのかな、と、思えてきてしまっている。

 めちゃくちゃカッコいいし、気前も良くて、優しいし。
 キスもそういう事も、めちゃくちゃ慣れてて。まるで愛されてるって勘違いしそうな位に優しいから、美咲の友達みたいに本気になっちゃう人もそりゃ当然居て……。

 でも、玲央は、楽しむ相手に、そういう深い感情は求めてないから、そういうのを期待する人とは、別れて終わりに、してるんだ。

 優しいから、期待を持たせないように、そこは、冷たくきっぱりと……。

 たぶん、それを、美咲は悪く思ってるんだろうなと。

 でも、玲央のしてる事は、今のオレには、分からない事も無くて。
 オレは、それをしてる玲央の事を、嫌だとは、思えなくて。


 ――――……もし、玲央が、オレと会いたいって、思ってくれるなら。
 会いたいって言ってくれた時に、会えるの、嬉しい、かもしれない。

 その関係を、何て呼ぶかは――――……。

 ……美咲にどやされそうだけど。


「ん、おわり。 お前の髪、フワフワな……」

 ドライヤーを止めて、玲央がそう言ってクスクス笑いながら、髪に触れる。
 ドキドキするのはもう、ごまかしようが、ない。

「玲央……」
「ん?」

 ドライヤーを片付けながら、まっすぐ見つめてくれる。


 一つだけ。気になってることを聞いてみる事に、した。


「……玲央って、恋人はいないの?」


 特別な恋人が居るなら。その人にも悪いし。――――……特別に想う人が居る人とそういう関係を持つって、全然意味が分からない。そんなのは無理。


「……恋人は居ない」

 何だか随分間が空いて、玲央は、まっすぐにオレを見つめながら、そう言った。


「そうなんだ……」

 オレは、一度頷いて、俯いた。

 恋人は、居ない。
 ――――……そっか。


「じゃあ、あの……」
「……ん?」


「……玲央は、こんな風に会う人、他にも居るよね?」
「――――……ん。セフレは居る」


「――――……じゃあさ」
「――――……」

「オレも、セフレ、ていうのに、してくれる?」
「――――……は?」


 玲央は、それだけ口にして。
 それきり、しばらく全然、返事をしてくれなかった。


 まっすぐ見つめ合ったまま、かなりの時間が経って。
 何だか急に、恥ずかしくなって、赤面してしまった。

 ……オレってば、昨日最後まで出来ないで寝ちゃったし、ご飯食べさせてもらって、服も洗ってもらって、ドライヤーしてもらって、って、全部してもらってばっかりで、セフレなんて、ありえない……って事?

 よく考えたら、いや、よく考えなくても、オレ、そもそも、玲央と最後まで、してないのに、今の状態で、セフレとか、こいつは何言ってんだろ、と、玲央が思ってるとしか、思えない。

 ……神様、今の発言、取り消してください……っ……。


「セフレって――――……そんなの、お前、なれるの?」
「……っ」

 俯いた、頭の上で、玲央の、声。

 ……………っなれません。
 ていうか、そんな技術? 技能?がないというか。

 わーん、ごめん、玲央、オレがバカでした。

「――――……っっ……」

 もう謝ろう。
 数いる玲央の魅力的なセフレの方々と比べて、そこに並ぼうとしてるオレが、バカだったんだ。

 会おうって、玲央が言った意味すら、よく分からなくなってきた。

 最後までしてないし、会おう、と言われた。

 ……あ、最後までしたらもう、会わないつもりだったのかも。

 あそこまで色々して、最後までしないとか、そんなのやっぱりありえないから、そう言ったのかも。

 なのにオレってば、なんて図々しいお願いを……。
 ……もう、謝るしかない。


「玲央、ごめん、オレ、図々しかっ――――……」

 顔を上げて、謝ろうと言いかけた瞬間。
 腕を少し乱暴に引かれて、唇が重なった。


「……っ……ん、う……っ……?」

 まったく予期してない所に。
 舌が捻じ込まれて。ぎゅ、と目を閉じる。


「……っふ……っ……ん……?」

 何でこのタイミングで、キスするんだろう。

 ……っ謝れてないし。
 せめて、謝らせてほしい。

 全然何も出来てないし、これからだって、大した事もできなそうなのに、玲央のセフレになりたい、なんて。


 取り消させてほしい、んだけど……。


「……っん、ぅ……っ」


 キスが深すぎて、息が苦しすぎて、少し離したくて頭を引こうとするのに、玲央の手に押さえられてて、まったく動けない。引こうとしたのを責められてるみたいに、より近づけられて、口内を嬲られる。

「……っん……」

 自然と涙が滲んできて。
 玲央の服を掴んでた指が、握り締めてないと、震える。



 ――――……なんで、いま、
 こんな内容の、会話の途中で、

 こんなキス、するんだろう。


 全然、わかんない……。
 何も――――……考えられない。


「――――っ……ンっ……」


 頭の中が真っ白なまま。
 どれだけキスされてたか、よく分からない。

 膝が、かくん、と抜けて。でも、玲央に抱き止められてるから、そのまま続いた。

「……っ……ん……」


 最後に押し付けるみたいにキスされて。
 離れた唇に、ゆっくり瞳を開けると。

 玲央が、オレをじっと見つめてて。


「――……玲央?」
「……オレと、セフレに――――……なりたいの?」


 セフレに……なりたいかと聞かれたら……。
 その名前のものになりたいかと考えると、そうじゃない気はするんだけど。

 でも、玲央と居れるなら。
 全然、それでもいいのかも。
 

「……オレ、玲央と居たいから。なれるなら、なりたい」
「――――……」


 そう言ったら。
 玲央は、じっとオレを見つめて。

 何だか、またしばらくの間があいて。
 
 
「――――……分かった。いいよ」

 そう言った。
 それから、玲央が、手を頬に滑らせてきた。


「――――……お前と会いたいって、オレ言っただろ……」


 そんな言葉に、ふわ、とめちゃくちゃ嬉しくなるあたり。
 どうかしてるかもしれないけど。


 でもオレ、今、どんな形でもいいから、この人の側に、居たい。



 ……美咲に、何て言おうかな……なんて、一瞬思うけれど。

 でも。
 オレ的には。

 玲央と居られるなら、その関係が何でもいいと思ったと。
 ……伝えるしかない、かな。



 
 

しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...