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◇週末の色々
◇奏人くん*優月
しおりを挟む玲央たちが挨拶とともに、演奏を始めた。
カッコイイなー。
もう、心の中、それだけになって、ずっと見ていたら。
ふと、誰かが隣に立った。
自然と見上げると。
あ――――…… 奏人、くん?
一瞬、混乱する。
……オレに用、なのかな?
と、ふと、近くを振り返るけど、蒼くんしか居ない。
蒼くんと目が合うと、ちょっと意味ありげな視線だけど。
うん。後ろ、蒼くんしか居ないし。
やっぱり、オレと話しに来たのかな。
と思って。
蒼くんと目を合わせたまま。最後に目線を逸らして、奏人くんに向かい合った。
「――――……」
言葉が出ない。
昨日、少し、顔見て、少し、話しかけられたけど。
何言ったらいいのか。
「こ、んばんわ……?」
とりあえず、そう言ったら、奏人くんは、オレをまっすぐ見つめた。
「玲央に、何したの?」
そう言われた。
「――――……」
何、した? 何した……。
なんとも答えられなくて、見上げていると。
「オレ、2年以上も、ずっと玲央と居たんだよ。――――……先週も、普通に玲央と過ごしてた」
「――――……」
声は出せずに、ただ、頷く。
「なのに、何で急に――――…… 玲央に、何したんだよ?」
何。したんだよ。
――――……何した…… 適当な言葉が全然出てこない。
どうしよう、と思っていると、奏人くんが続ける。
「あんたの何が、オレより良いの? 全然納得できないんだけど」
あ、うん。
……それは、分かる。オレもそう思ってたし。絶対この子の方が綺麗だしとか、昨日も色々思ってたし。
でもこれを言ってもきっと、怒らせるだけだと思うから、答えられずに、心の中で思って、答えられずに黙っていたら。
「……あのさ。そういうのは、玲央に」
蒼くんが、後ろからそう言いかけたので、すぐ振り返って、一瞬首を振った。すぐ蒼くん、ちょっと面白そうな顔をして、口を閉じた。
ちょっと笑ってる蒼くんに、もう、何楽しそうなんだよっ、と思いつつ。
奏人くんの方を向き直すと。
「オレ、諦める気、無いから。どうせすぐ、玲央も飽きるだろうし」
そんなに激しい言い方では、ない。
睨みつけられてる訳でも、ない。
ただまっすぐに静かに、オレを見て、そう言う。
「……何で何も、言い返さないんだよ」
不満そうな奏人くんに、黙ってちゃダメだと思いながらも、なかなか言葉は出てこない。
「あの――――……言ってる事、分かる、よ……」
オレが、何とかそう言ったら。奏人くん、眉を顰めた。
「……オレに納得できないのも、分かるし。すぐ飽きるとかも……無いなんて、言えないし。オレ、男同士とか……1週間前までは、考えた事もなくて」
「――――……」
「……分かんない事ばっかりなんだけど。オレも玲央を、好きなのは……きっと変わらないと思うから、好きなのを諦めるとかは、無理だと、思うし」
「――――……」
「だから……言ってること、分かる……」
そこまで言うと、黙ったままの奏人くんにちょっと困る。
「って、オレに分かるって言われても、だから何って感じだよね……えっと――――……」
あれ、これ以上、何を言えばいいんだろう、オレ。
どうしよう、と思って、奏人君を見つめていると。
「オレ、この2年でさ玲央と数えきれないくらい、セックスしたんだよね」
「……」
急にすごいワードが飛び込んできて、戸惑うけれど。
「……でも、それ、オレだけじゃなくて、他のセフレも一緒。 セフレって、そういうもんだし。――――……そんなの、お前、平気なの?」
そんな風に聞かれて、しばらく、黙ってしまう。
平気……ではない。
オレにしてるみたいに、誰かに触れてる玲央とか。
全然、想像したくは、ない。
でも。それは、オレと、会う前の話、だし。……オレ、そもそも最初は、一晩でも、と思ったし。……セフレになろうと、してたし……。
……それを否定することは、できない。
「――――……平気、ではないけど…… でもオレ、最初はその仲間に、入れてって、玲央に言っちゃった、し…… どんな形でもいいって思う気持ちは、分かる、というか……」
「――――……何が分かんの、マジで」
「…………玲央が好きって事だけだよ。……諦めたくないとか、セフレでもいいとか。そこら辺は……分かるけど……」
分かるけど。
――――……これ以上、なんて言ったらいいんだろう。
「……ほんとに、お前、玲央が好きなの?」
「――――……うん」
頷いて、しばらくまっすぐ見つめあう。
すると。
奏人くんは、はー、と深い息をついた。
「――――……は。もういいや」
「え?」
「すっごい、納得いかないし、ムカつくけど……オレ、しつこくして玲央に嫌われんのは嫌だから。今は、1回退く。でも、覚えとけよ。諦めないから。――――……どうせすぐ、飽きるって思ってるし。別れたら、速攻玲央に迫るから」
「――――……」
ああ、なんか。
ほんとに、好きなんだなー、玲央の事……。
気持ちが分かるだけに、何も言えず。
ただ、声も出さず、奏人くんを見つめたまま、頷いた。
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