一目惚れなんてしてないってば!

星井 悠里

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第一章

第5話

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「そういや、言ってなかったんだけど、オレ、お前のこと、結構男らしいって思ってるから」
「え? そうなの? どこが?」

 あったっけ、男らしいとこ。
 不思議に思って首を傾げると、尊がため息をついた。

「お前、そうやって首を傾げんのやめろ」
「え?」
「それ、可愛いって思う男、絶対居るから」
「――えっまさか、尊も?!」

 言った瞬間、ベッドのクッションを投げつけられて、顔に埋まる。

「オレにとってのお前はそういう対象では、絶対ないし、そういう対象には、絶対しない」
「なんだよそれ」
「一生このまんまがいいってこと」
「……うん。オレも」

 へへ、と嬉しくなって笑うと、ちょっと呆れた顔で、尊は笑った。

「なんでオレが男らしいの?」
「お前が彼女に三日で振られた時さ」
「四日だもん。金土日月」
「金曜の放課後に告って、月曜の休み時間だろ? なんなら、中二日じゃん」
「ああもう、うるさいなっ! で、何?」

 むむむむ、とふくらんで、先を促すと、尊はくすくす笑いながら続けた。

「だから、振られた時、皆に「初デートで何したんだよ」ってからかわれてただろ? さんざんいじられてたのに、ほんとのこと、言わなかった」
「だって、可愛いって言われたとか言いたくないし」
「それもあるだろうけど――あの子が、言わなかったからだろ? その話がもし流れたら、あの子、「彼氏の方が可愛い」って言われた子になっちゃうもんな」
「……だって、あの子可愛いのにさ。そんなの絶対、言える訳ないじゃん」
「だからさ。さんざんいじられて、何か変なことしたんじゃ、とか言われても、なんも弁解しなかったの。ちゃんと男だな、と思ってたよ」
「えー。たけるー」

 そんなこと思っててくれたのは初耳!
 うる、と潤みそうになった瞳。その瞬間、ぴん、と額を弾かれた。

「いった……!」
「お前に、いくつか言いに来たんだよ、オレは」
「えー、何?」

 額をこすりながら、尊を見ると、指を立てられた。

「まずひとつ! 男を間近で見つめんな。目をウルウルさせんな。勘違いさせるから」
「えっ」
「ふたつ。強気で話してろ。可愛いとか、思われないように」
「あ、うん」
「お前は、顔がおばちゃんに似すぎてるだけで、中身は男なんだからさ。その内、背も伸びれば、女子に間違われることも無くなっていくと思うから、それまで頑張れよな」
「あ、はい」
「もうひとつ。可愛いとか、一目惚れっつーのも。誉め言葉だと思ってる奴らも多いから。いちいち、反応すんな」
「……うん」
「――って、言いに来たんだよ。明日からの高校生活に備えて」

 ふ、と笑う尊に、オレは、言われた言葉を考えながら、うん、と頷いた。

「分かった。……ありがと」
「おう。じゃあゲームやろうぜ。こないだの続き」
「うん! いーよー」

 それで昨日は、尊と楽しくゲーム三昧だった。




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