【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

星井 悠里

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◇甘すぎ

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 ちょっと美味しそうな定食屋を見つけて、少し並んでいたので、先に並んでから、先輩に場所と店の名前を送った。
 暫く並んでから店内に案内されて、後から来ると伝えて2人席に座り、おしぼりで手を拭いた所で、先輩が入ってきた。すぐに目が合うと、あ、と笑んで、店員にあそこ、と伝えてる。

「三上、ありがと」
「いえいえ、ちょうど良かったです」
「座ったとこ?」
「はい」

 上着を脱いで、ふー、と手で顔を仰いでる。

「暑いですか?」
「うん。ちょっと小走りで来ちゃったから」

「急いでくれたの?」
「だって、待たせてるから」

 言いながら水を飲んでる先輩。


「――――……」

 あー。可愛い。確かにちょっと顔赤いし。パタパタ風起こしてる動作も、可愛くしか見えない。

 ほんと可愛い……。
 くそ。誰も見てなきゃキスするのに。

「何食べるか決めた?」
「まだ。メニュー見ようと思ってた所でした」

「そっか」
 言いながら、オレとの間にメニューを置いて、眺める。

「定食屋さんにしたんだ」
「朝パンだったし」

「うん。なんか色々美味しそう。三上、何にする?」
「んー……オレこの、肉野菜炒めが食べたいな。あーでも……ヒレカツ定食もいいなー……」
「ふーん……」
「どっちがいいかなぁ……」

 野菜食べた方がいいかなーと思うけど、ヒレカツもうまそう。
 と思っていたら。


「じゃあオレがヒレカツ定食頼むから半分こしよ」
「え、良いんですか?」

「うん、良い。一緒に食べよ? あ、すみません」

 にっこり笑顔で可愛く言って、 側を通りかかった店員さんに声をかけて、注文している。

 あー。なんだろ。……だめだ。可愛い。
 言い方、可愛いなあ。会社で見てる時は、こんなじゃないのに。


「半分こ、良いんですか?」
「良いよ? あ、嫌だった?」

「嫌な訳ないでしょ」

 笑いながら返すと、よかった、と笑ってから。

「他の奴と定食のおかず半分こなんて、しないから。三上だけだからね」
「――――……」

「半分こ、変なのとか、思うなよなー」

 とか言いながら、楽しそうに笑いかけてくる。

 ……もう、ほんとこの人……。
 誰とでも半分こするとか、そんな事は思ってない。

 ――――……三上だけだからね、とか。敢えて言う必要なんかもないのに。

 ていうか、オレだけだから、とか。
 そういうの言われると。
 ――――……もー、可愛くてしょうがないし。


「陽斗さん」
「んー?」

「今日オレ、同期と話し合いに行っちゃいますけど…」
「うん」

「――――……もし嫌じゃなかったら、鍵渡すから、オレんち行っててくれません?」
「え?」

 少しびっくりした顔で、オレを見て、瞬きを繰り返してる。

「三上、居ないのにオレが勝手に上がってるの?」
「シャワーとか浴びて、ゆっくりしてくれてていいので」
「――――……変じゃない? 勝手に……」

「勝手じゃないですよ。オレが鍵渡すんだから」
「――――……でもなー……」

 先輩が悩んでる間に、食事が運ばれてきて、並べられている間、少し黙る。
 店員が居なくなって、すぐに。


「ほんとに、居てほしいの?」
「居てほしいです」

 ここぞとばかりに、思い切り頷くと。先輩は、苦笑い。


「とりあえず食べよ? ヒレカツ、置いていい?」
「あ、はい」


 オレの皿にヒレカツを乗せながら。
 くす、と笑って。


「1人で部屋で待ってるとか。三上がどうしてもなら、いいけど」
「どうしても」


「――――……分かった、いーよ」

「えっ。――――……良いんですか?」
「え。だって――――……冗談だった?」
「いえ。本気でしたけど」

「てか、何なんだよ」


 クスクス笑う先輩。


 いや、だって。


 もうほんと。甘いよな。オレに。
 すげえ我儘な事、言ってんのに。


 
 めちゃくちゃ嬉しいけど。




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