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第一章
9.「アリシアに最終確認」*リュシオン
しおりを挟む――――……ひどい目にあった。
昨日エイトが持ってきた酒は、強いとか弱いとかそんな程度の話じゃなく。
飲んだ瞬間、喉が焼けるようなアルコール度で、そんなに飲んでもいないのに、二人で即、寝て落ちた。
朝、目は覚めたが、二人そろって、最悪の頭痛。
ぬるいお湯で、湯あみをして、汗をかいて、それから二人でまただらけにだらけて、ようやく酒が抜けてから、自分の城に帰り着いた。
城に入ると、カミュの険しい顔に迎えられた。
「連絡位、なさって下さい!」
「あ。……すまない、忘れた」
「お強いですから何かあるとは思ってはいないんですが、それでも、一晩をこえて昼過ぎまでお戻りになられないとか、ありえません」
「悪い、あとで、使いを送ってもらおうと思ってたんだが……」
「だが、なんですか?」
「――――……エイトが出してきた酒が、すごすぎて」
「強かったんですか?」
「強いなんてもんじゃない。二度と出すなって言ってきた」
苦笑いで言うと、カミュは、はあ、とため息をついた。
「エイト様の所だったんですね。エリアス様だと思っていたので、夜中に使いを出してしまいました」
「――――……なんの?」
「まだあちらにいらっしゃると思っていたので確認に。ずいぶん前に帰ったとの返答を頂きました」
……ああ、じゃあオレは、エリアスにとって、「迷子になって夜中までどこかに消えて、部下たちに心配されてる奴」……になってる訳か。
ため息をつきながら、頭を掻く。
その時、扉がノックされて、カミュが迎えると、アリシアが入ってきた。
「お兄様」
「……昨日のことか?」
「エリアスのところに、行かれたんですよね? そのまま泊まられたんですか?」
「いや違う。とりあえず、座れよ」
椅子に座らせ、目の前に腰かける。
カミュは、アリシアが来た時点で、隣の部屋に移動したらしい。
「エリアスとは話してすぐに別れてきた。エイトのところで酒を飲んでただけだよ」
「……そう、ですか。――――……それで、彼は……」
アリシアがまっすぐにオレを見つめてくる。
「……アリシアが望まないなら、受け入れるとは、言っていた」
「――――……そう、ですか……」
その言葉のまま、昨日のことを思い出しているオレの前で、アリシアも、少し唇をかみしめて。
二人でしばらく、無言。
「……なあ、アリシア?」
「はい」
「オレの感じたことだけ、話す」
「はい」
「……エリアスは、お前を愛しているんだろうとは、思った」
「――――……」
「お前が言っていたことについては、聞いていないが……もし、忘れられるなら、このままでも良いんじゃないかと思いながら、帰ってきた」
「――――……」
アリシアは、オレの言葉をじっと聞いて。
しばらく視線を落として考えていたが、その内、顔を上げて首を振った。
「……無理だと思います」
「――――……無理か」
「あの晩のことは、正直忘れられないかもしれません。でも、思いださないようにして生きていくためには、彼以外と結ばれるしかないと思うんです。私たちは、まだお互い若いですし、色々な出会いもあると思うので……」
「男だから――――……緊張とか、体調とか、そんな日もあると思うが?」
つい、エリアスをかばってしまう。
アリシアはまた少し考えて、それでも、首を横に振った。
「それでも……もう決めたので、兄さまから伝えてもらったんです」
「――――……」
「一度解消を言い出した私とは、もう、エリアスも嫌だと思うんです」
「――――……」
そんなことを言いそうな感じは、受けなかったが。
……アリシアの気持ちは堅そうだな……。
これを、伝えたら。
また傷つくんだろうな。……困ったな。
妹をこんなに傷つけて、婚約まで解消させた相手、なのに。
エリアスを傷つけないように、どう伝えようか。
むしろそっちが気になって、考えてしまう。それが少しおかしいことは、自覚していた。
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