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第一章

8.「エイトに報告」2/2*リュシオン

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 ひとしきり笑った後、エイトはオレに酒を注ぎながら。

「笑いすぎた。悪い」
 言いながらもまだ少し笑ってるが。

「んー……そうだな、オレ、エリアスを見てみたいな」
「……見てみたい?」
「オレ、かなりお前と付き合い長いと思うけど、そんな風になってるのは初めてな気がするんだよな」
「――――……」
「相手が男だからかもしれないが、いつもとかなり違うし……美人なんて見慣れてるお前が、だもんな。美人なんだろ?」
「……まあ。……綺麗な顔はしてたが……」

「ふうん……なあ、明日のパーティ連れて来いよ」
「は?……無理だろ」
「何で?」
「いや、無理だろ。オレは、アリシアとの婚約を解消させに行った奴だし。お前が開くパーティに何の関係もないし」
「別にオレのとこに来るのは、誰でもいいし。いつものことだろ」

「……いや、無いな。――――……それにまだ、保留にしてきたんだ」
「保留?」

「アリシアを好きなのは本当のようだったから、アリシアともう一度話してから、エリアスを訪ねることにしてきた。そんな状態で誘えないだろ」

「……へえ。そうなんだ……でもどうかな?」
「ん?」

「アリシアは、恥をかかされたと思ってるんだろ? ここから気持ちが戻るか?」

「――――……まあ聞いてみて、だな」

 でも、もったいないなとは、思ってしまう。

 あんなに、まっすぐに泣く位、アリシアを好きなら。
 ――――……アリシアは幸せになれるんじゃないかとも、思うから。

「リュシオンは、エリアスとアリシアに結婚してほしいのか?」
「まあ……アリシアが幸せにはなれるんじゃないかとは思ってる」

「……ベッドで謝るような男だけど?」
「それはきっと――――……体調が悪かったとか? 何か理由があるんじゃないか?」
「聞いてくればよかったのに、そこんとこ」

「……初対面で、婚約解消を伝えて、泣いてる奴にそんなこと聞けるか?」

 そう言うと、エイトは、んーと考えてから、苦笑い。

「聞けないか。……あ、じゃあ、次行った時、聞いて来いよ。明日?」
「――――……聞けたらな」

 答えを濁しておいて、ふ、と息をつく。

「……なあ、エイト。……帰るの面倒。泊まっていいか?」
「構わないけど……ああ、じゃあ、こないだ貰った強い酒、飲んでみるか?」
「強い酒?」

 聞き返すと、エイトは、そう、と笑う。

「うまいらしいんだけど、どんな強い奴でも、絶対つぶれるってさ。話のネタにやるとか言われてさ、とりあえず貰ったんだよ」
「……へえ。面白そうだな。飲もうぜ」
「OK、持ってこさせる」

 エイトがそう言って部屋を出て、オレは、窓から外を見た。
 今夜の月は、細くて綺麗だ。


 ――――……不意に、脳裏に、エリアスの泣き顔がよぎった。


「――――……」


 何だか目に焼き付いてしまった気がして、
 ため息が、漏れる。

  ――――……アリシアのことが好きなのは本当のようだった。

 明日、帰ったら、アリシアと話してみるか。
 ……良さそうな相手だと思うんだがな。

 弟になる、というのが。
 ……若干複雑だが。


 ……本当に、今まで見た中で、一番。
 綺麗だったから。

 今後、あれ以上綺麗な涙に会えなかったら、どうしようか。

 ……といっても、男だしな。
 ……もう、忘れればいいだけだ。 あれと比べる必要は、無い。


 ――――……と思うのだが……。



 月を見ていて、思いだすとか。


 結構重症だ。





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