8 / 41
第一章
7.
しおりを挟む整った顔の、その人は、私をやたらまっすぐに見つめてくる。
睨まれてる訳では無い気がするから、ダッシュで逃げようとは思わないのだけど……何で、そんな風に見られてるのか。一体何が言いたいのか、全然分からないから、やっぱり怖い。
よく分からないけど、ごめんなさいで逃げようと思った、その時。
「お前、よくここに、男と居ただろ」
「――――……」
「そいつの話、聞いた」
「――――……」
私が、よくここに居た「男」の話を、聞いたって。
言葉の意味を、考えていたら。
「あんまり、悲しんでると…… 縛り付けちまうぞ」
そう言われて。
私は。自分が向けられた言葉を。頭の中で、繰り返した。
この人は。悠斗と私がここによく居たのを知ってて。
悠斗が、亡くなったことも、聞いて、知ってて。
私がここで泣いてたから。
今、こう言ってるの……?
「縛り付けるって……どういう意味……?」
縛り付けるも何も。
悠斗は居ないのに。
どうやって、縛り付けるの?
そう思っていると。
「……よく言うだろ、成仏できないって。そういうこと」
その人は、ため息を付きながら。茶色の頭をバリバリ掻きながら。すごく嫌そうに、そう言った。
「……っ……」
何それ。成仏って……。
成仏なんて……しないでほしい。居れるなら、ここに居てほしい。
霊でもいいよ。悠斗に会えるなら。
霊だって、私は、会いたいもん。
「――――……っ」
何だか急に現れた不良みたいな人が、なんだか似合わないセリフを次々口にして。頭が追い付かなくて、咄嗟に色々思うけど、自分の中の気持ちが、整理できない。
何も答えられず、手を握り締めてる私に、その人は、また息を吐きながら、言った。
「死んじまったら、戻らない。生きてる奴は、前を見て、進むしかない」
「――――……」
その言葉には、すぐ、言い返したい言葉が、浮かぶ。
……分かってる。そんなこと。
分かりすぎる位、分かってる。
だから。立ち上がって、制服を着て、外にも出た。
分かってる。
でも。
――――……。
「分かってる、そんな、こと……」
分かってたって、どうにもできない気持ちが、あるんだもん。
前を向こうって何度決めたって。
悠斗は、過去にしか、居ないんだもん。
振り返らないと、会えないんだもん。
涙が浮かぶ。
何とか零れ落ちないまま。その人を見つめる。
言葉は返せない。
涙目で見つめたからか、その人は、一瞬、眉を寄せて。
はー、と、ため息をついて、私から目を逸らした。
「……分かってるなら、こんなとこで泣いてないで、早く帰れ」
「………っ」
……何だかもう、意味が分からない。
でも、少し立ち尽くしていたけど、この不良さんは立ったまま動かないし。帰ってくれないみたいだから、もう、私が帰るしかない。
……また明日、入学式の帰りに、来よう。
私は、そこから離れて、家路についた。
とぼとぼ、歩く。
何だったんだろう、今の会話。
……最初、怖いと思った。
……悠斗が居なくなって。
もう私、どうなってもいいやとか。思ってたのに。
……咄嗟に、怖いって思うんだ。
何されるか分かんないから、怖い。って。
ということは。
私、まだ。
本当は、どうなってもいいやって――――……思ってない、のかな。
なんか。
……よく、分かんないや……。
そんなことを思いながら、ゆっくり、また灰色のコンクリートを見つめながら歩いていたら。
シュシュしか持ってないことに気付いた。桜の飾りのついたゴムが、無い。
落としちゃった……?
……公園までは戻りたくないんだけど……。
でも探さない訳にはいかなくて、仕方なく、今来た道を、ますます下を見ながら歩き始めた。
23
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる