31 / 41
第三章
5.
しおりを挟む【side*心春】
「じゃあまた明日ね」
「うん」
彩と別れて、一人で家までの道を歩く。
悠斗との思い出を追いたくなくて。
一人の時は、俯いて歩いてしまう。
学校は今日も早く終わった。
今週は、お昼無しで早く終わるみたい。部活動の見学とかも、来週から。
ショッピングモール、昨日は一棟と少し、聞き終わったし。関係ない所を除いていくと、意外と早く回れるかも。
「――――……」
ふ、とため息をついてしまう。
……悠斗は、居なくなったけど。
日常の世界は、いつも通り、進んでいく。
悠斗が居なくても。
世界はそのまま。
それがものすごく切なくて――――……何だか、虚しい。
ほんとなら、悠斗も居て。
一緒に通って。
一緒に学校で、過ごして。笑って。楽しくて。
そんな未来もあったかもしれないのに。
あの時の電話で。
――――……私が引き止めなかったら。
あの電話、分かった、って、すぐ切っていたら。
――――……何秒か、違ったら。
悠斗は事故に遭わなかったかも。
そしたら。
――――……今も、側に居てくれたかも。
考えても仕方ないことだけど。分かってるけど。
ほんの数秒、数メートル、それだけのことで、運命が変わるのは、知ってる。
そういうことが、時に人生で起きてしまうことは、きっと誰でも、知ってる。
でも多分。身近で起こるまでは、他人事で。
その僅かな差について、どうして、と思うのは。
起こってから。
――――……考えても仕方ない。
事実は、今、悠斗がもう居なくて。
これから先も、ずっと居ない。
――――……大好きって。
伝えることも。
出来ないってことだけ。
「――――……」
涙が、ぽつん、と零れ落ちた。
あ。だめだ。
ここは、外。……泣いちゃだめだ。
そっと、顔を拭って、俯く。
――――……桜。少しは、咲いたかなぁ……。
気になって、公園に足を向けた。
もしかして上宮くん、居るかなあ……?
……でも居ないよね、そんなに公園に居るとか、無いよね。
そう思いながら、公園に着いたら。
……上宮くんが。居た。
お腹痛いとか言って早退して、何してるんだろう……と思ってしまう。
私に気付いた上宮くんが、呆れたような顔をする。
「……また来たの?」
その言葉を、そのまま返してもいいかな……。
じっと見つめてしまう。
「……上宮くんは、何してるの? ここで」
「……咲かねえから、気を送ってる」
思わず瞬き。
本気かな。……んー、本気……? よく分かんない。
でもなんか、送れそう。
思ったら自然と、ふ、と笑ってしまった。
「何笑ってんだ、お前」
「だって――――……なんかほんとに気を送るとか、出来そうだなって思ったら……」
クスクス笑ってしまって。あ、怒るかな、と思ったけど。
――――……何だか面白くなさそうに、視線を逸らすだけ。
あ、やっぱり。
怒らないんだ。こういうので、笑われても。
「……早退、何で?」
そう聞いたら、ふっと視線を向けられて。
「……ちょっと気になる事があったから」
「……そうなんだ」
……よく分かんないけど。
――――……サボって遊びに行ってるとかじゃないんだよね。
変な人だなぁ。ほんとに。
「……私がここで一緒に居た人の事、聞いたって、上宮くん、言ってたでしょ?」
「――――……ああ」
「……顔、知ってる?」
聞くと、少し間を置いてから、知らない、と言われた。
何でか分からないけど。見せたくなって。
スマホの悠斗の写真を見せた。
「悠斗って言うの」
「――――……ああ」
笑顔の悠斗。私、何でこの人に、悠斗を見せてるんだろう。
――――……でもなんだか……縛ってしまうとか。成仏できないとか。
悠斗の側で、話すこの人に。
顔、見せたくなったのかもしれない。
「……優しい人で。――――……ずっと一緒に居たんだけど……」
「……たまに見かけてたから、知ってる」
「――――……なんか」
「――――……」
「――――……さっきね。学校で……窓際で、カーテンがすごくなった時にね」
「――――……」
「……何でか、分かんないんだけど……悠斗を見た気がしたの」
言った瞬間。上宮くんは、急に私に視線を向けた。
「見たって?」
「……わかんない。願望かもしれないけど……一瞬。見えた気がして」
「――――……」
「……上宮くんには、何も、見えなかった?」
「――――……」
上宮くんは、無言で、首を振る。
「そうだよね。……ごめんね、変なこと、聞いて」
「いや……」
「じゃあ私、行くとこあるから。またね」
「……ああ」
何だか、変なこと言っちゃった。
私今、幽霊を見たって、上宮くんに言っちゃったんだよね。
わー。何言ってんだろ、私。彩にも言えなかったのに。
焦って、立ち去ろうとした瞬間。
桜の幹に足を引っ掻けて。
「キャ」と、声が出た瞬間。上宮くんが、咄嗟に手を出してくれて、支えられて。
目の前に。
私を支えようとする、心配そうな、悠斗が、一瞬見えた気がした。
でも、すぐに、消えた。
力が抜けて、がく、と膝をついた、
「おい……? 大丈夫か?」
「――――……ッ……」
不意に、ボロボロ涙が溢れ落ちた。
「……おい?」
上宮くんが、目の前に座る。
「怪我した?」
膝を見ると、少し血が出てた。
「泣くなって。……痛いか?」
違う。怪我じゃない。
……悠斗が――――……また、一瞬だけ。
見えたような。
そんな訳ないのに。
涙が。
止まらない。
32
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる