ゲーマー女子ですが魔王(♂)に転生してしまいました。殺されたくないので運命回避させていただきますっ!

近藤蜜柑

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歴史の章

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扉を開ける。と同時に頭を下げたまま一息で言い切った!
「こんにちは!マオです!今日からよろしくお願い致します!」

シーン・・・返事がない。
「あ、あれ?いないのかな?2人部屋って聞いたはずだけど・・・」
「上級生はまだ授業を受けてるかもだぞ?マオってば恥ずかしい~!」
リシンがニヤニヤしてる。

「わかってるから言わなくていいの!」
「んなはははっ!」
「もう!・・・にしても、き、汚いね」
「そだな。片付けようぜ?」
「そう、だね」
部屋の中はとてもごちゃごちゃしてる。ほとんどが本みたいだけど、棚がたくさんあるのに全くしまわれていない。中はほぼ空っぽだ。これなら本をしまうだけだし、怒られる事も無いだろう。

「マオ!コレスゲ~ぞ!魔界の歴史とか載ってる!懐かしいなぁ~」
「きっとルームメイトのだよ。あんまり触らない方が良いって!」
「ほーい」
リシンは開いていた本を閉じて、棚に閉まった。
本以外にも紙とか書類、簡単な筆記用具が溢れているばかりで、それ以外は物が少ない印象さえある。
それにしても、遺跡とか、歴史の本ばかりみたい・・・好きなのかな?


「ゔぅっん?何ですか?」
そんな事を思っていたら、2段ベッドの上から声が聞こえた。死角になっていてわからなかった。彼は眠っていたらしく寝癖が付いている。

「うおっ!居たのかよ!」
「す、すみません!か、片付けてます」
びっくりした。とりあえず謝っておく。

「あー、ルームメイトでしたっけ?そっかぁ、もう1人部屋じゃなくなるんですか?」
「・・・・・・!!」

知っている顔だった。まさかとは思っていたけど。寝起きの癖に綺麗な黄緑色の肩下までの三つ編みロングを細いリボンで編み込み結んでいる。かけた眼鏡の中には切長のオレンジ色の瞳。
もっと長く伸びた三つ編みと片眼鏡じゃないけど、スラリとした長身。年上なのに敬語喋り!この頃から素で白衣が似合いそう!

彼はフィック。ゲームでは魔王配下のマッドサイエンティストで、魔物を産む力を買われて部下になった最後の魔王側の1人で、ラルと一緒に生き残った人物だ。
なんていうか、しっかりしてるのに狂っていて、穏やかに見えるのに、心は開かない。腹黒で、Sっ気のあるキャラクターだった。

まさか一日でゲームのキャラほぼ全員と顔を合わせるなんて思ってもみなかった。まさか主人公とヒロインはいないよね?


「よ、よろしくマオです」
「僕はフィックです。2年なので、わからない事あったら教えてくださいね?」
「え?」
何て言ったこの人?

「何か?」
本気でわからないように私の反応を待ってる。
「イヤ、教えてもらうのはマオだろう!?」
リシンがツッコミを入れる。

「あー、そうなんですか?わからない事あったら言ってください。多分答えられないですけど」
「は、はぁ・・・」
あ~、ゲームでもそうだった。眠そうな顔してるこの人、普段の私生活もやばいんだった!!そんな人のルームメイト?大丈夫かなあ?


でも、この人天才なんだよ?
ここにあるたくさんの本は言語の種類が多すぎる!
リシンが見つけたモノは魔界の文字で、私が見つけた本は魔界の文字と、この国の文字と、日本語。
他にも英語に中国語みたいな漢字だけ、韓国語みたいなハングル文字に、テレビとかで見た事あるような象形文字。昔ゲームで見かけた記号みたいな文字もたくさん!!
その本全てに付箋があり、手書きの言語の本や、歴史を全てを纏めた手書きの本もあった。


「ありがと~ございます~。僕、片付けってホント苦手なんですよ~」
普段こんな人だからこそ、頭が全て興味ある事にしか向かないんだろう。
自分も昔は、ゲームの文字を解読しようとした事があるし、小さい頃は作った事もあるし・・・その気があると理解はしているので、なんとなく憎めない。

「いえいえ、本の並びはこんな感じですか?」
「え?・・・時代別ですか?」
「はい。きっと歴史や遺跡が好きだろうから、言語を無視して、なんとなくの時代別にコレで合ってますか?」

「君わかってますね!」
パアアって喜んでる。

「あ、ありがとう、ございます」
ってかゲームでの貴方がそうだったんですよ?不思議な予感は当たるものだ。

「イヤー、ルームメイトって正直、嫌で嫌でしょうがなかったですけど、君とは仲良く出来そうです!」
「は、はぁ・・・?」
握手を求められて応じる。本人目の前にして毒吐くなぁ・・・この人って実はただ天然なのかもしれない。


「マオに近づきすぎだ!」
リシンが間に入ってきた。

「さっきから何ですこれ、コウモリ?」
「おいらはリシン!マオに名付けて貰ったんだぞ?おいらはこーんな小さい頃からマオを知ってるんだぞ!?」
いや、知らないでしょう?逢ったのは2年前!せいぜい父さんや母さんの話を聞いただけだよ??

「付き合いに長さは関係ありませんよ?」
「いーや、ある!お前マオの寝言知らないだろ?」
「ね、寝言!?」
「り、リシン?」
先輩も驚いてる。リシン変なこと言わないでよ!?

「おいらはいつもマオと一緒に寝てるんだぞ!」
「関係ありません!僕は未来を見ます!ようは何処まで親密になれるかですから」
「密禁止です~!」
「意味のわからない話をしないで下さい!」
何だかおかしな話になってきてる気がする。
止めようと思ったけど、無視して片付けを再開する。
本はベッドにまであるし、このままじゃ今夜は眠る事さえ出来なさそうだしね。



片付けもひと段落した頃、フィック先輩が聞いた。
「ところでこのコウモリは一体何者ですか?使い魔とか?」
「コウモリじゃない!オイラは悪魔!」
「悪魔ですか?君が??」
「あ、疑ってる!ゔ~マオ~!」
「うんうん、よしよし」
リシンが拗ねたのか泣きついてきた。
ナデナデプニプニしながら答える。触っていて気持ちいいし、リシンは撫でられるのが好きで大抵はコレで機嫌が直る。

「あー、えっと本物なんですよ?一応・・・」
「マオ君は悪魔をペットにしてるんですか?」
「おいらは友達!親友だ!」
「一体どんな経緯で?興味深い・・・」
先輩はリシンをじっと見てる。
リシンは私の背中からちょっと顔を覗かせる。姿を消せばいいのにと思ったけど、それはそれでまた騒がれるからかもしれない。

「ええと、それが・・・」
手元に戻してナデナデプニプニしながらリシンを宥めつつ、先輩に一通り説明した。
何故森に居たのかは森で遊ぶのが好きだという事にしておく。別に嘘じゃない。自然は好きだ。


先輩はやっぱり祠が壊された事はとても悲しがっていた。貴重な遺跡や祠。歴史の建築物は古い分壊れやすい物も多いと随分落ち込んでしまった。
普通なら犯人は私じゃないか?とか疑われそうだけど、先輩は私を責めたりはしなかった。


フィック先輩は言語が書き込まれたノートを寂しそうに見つめる。

「はぁ、遺跡はどんどん風化していってしまいます。
歴史はどんどん忘れられていくんです。
真実はその時代に生きた人々にしかわからない。
僕はどうしてこんなに頑張っているんでしょう?わからないです・・・」

・・・聞き覚えのある台詞だった。
ゲームでフィックが言ってた台詞によく似ている。でもそれは、もっと危ない、煽るような台詞だった。

「あぁ、人間はどんどん堕落していってしまいます。お互いを認められないんです。
事実、僕達のおかげで世界がまとまっていますよね?
君達がどんなに頑張っても無駄なんです。わからないんですか?」

悲しそうに、独り言のように聴こえて、ちょっと涙腺が緩んでしまった。いけないいけない!顔を振る。
先輩はすっかり落ち込んでる。


「でも、形あるモノはいずれ壊れてしまいます」
「マオ君、追い討ちをしないで下さい・・・」
「いえ、だからこそ素晴らしいんですよ!」
「え?」
先輩は顔を上げる。暗闇で光を見つけたのかと振り返るように、子供のように。

「大昔の事が全て分かったら調べる楽しみがないじゃないですか!少しずつ解ったり、また謎が増えたり、そうしたら、ずっと探していられます!お祭りの前みたいに!」
「確かに、それはそうですが」
先輩は顔を逸らす。気にしないで続ける。

「それでも後世に伝えたい想いは残ります。本もその一つですよ」
「マオ君・・・」
ぽた
床に染みを落としながら、先輩は吹っ切れたように下を向いたままで笑った。

「え?先輩?泣いてるんですか?」
「すみません、ちょっと感動しました。僕はもっと本を大事にします」
「あ、えっと、はい?」
ゲームに置き換えて喋りすぎたかな?
そういう意味で言ったんじゃなくて、ただ近くにあったから例として挙げただけだったんだけど・・・

「マオ君」
「はい?」
「僕、歴史小説を書きます」
「へ?」
「たくさんの人にもっと身近に知ってほしいから、パラレルワールドの本を書きます!タイムスリップとか、入れ替わりとか、転生とか!楽しく読んでほしいですからね!」
先輩の瞳には光が宿り、星のようにキラキラと輝いていた。
何だか、夢を見つけたみたいで、これはこれで良かったの、かな?

「はははっ。が、頑張ってください・・・」
「はい!」
貴方の目の前に転生者いますけどね・・・

マオはフィックの前では特に気をつけようと誓った。
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