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試合の章
しおりを挟むペイストは剣を握り締めてこちらを見た。
剣先が震えてる。悔しい?いや、悲しいのかな?
「楽しかった!」
「え?」
「負けたけど、やっぱり楽しい!俺はずっと剣を握っていたい!例えば・・・傭兵とか、騎士団とか!誰かを守るような仕事がしたい!」
「ペイスト・・・」
そう。それは君が進むべき道。
「俺、もっともっと強くなりたい!魔法にだって負けたくない!!でも・・・」
「俺は剣を振るうことしかできない。
考える事や、難しい事は苦手だ。
マオ、相手してくれ!おれはお前の友達であり続けたい!!ずっと・・・一生涯ずっとだ!!」
「ペイスト・・・」
ゲームで言ってた。
「俺は剣を振るうことしか脳がない。
考える事や、覚える事は出来ない。
でも、魔王様は俺を必要だと言ってくれた。俺は、あの方の剣。錆びて捨てられるのも本望。俺はあの方の役に立つ為に産まれてきたんだ!!」
その様子を見たマオの頬に、一筋の涙が流れた。
マオは涙をそのままに剣を抜くと、構えた。
あの時は木刀だったけど、今は真剣だ。重みがある分気合いも入る。
「わかった。その覚悟があるなら本気でいくしっかりついてこい!」
「おうっ!」
今回は私から間合いを詰めて剣を振るう
「はあっ!」
「うわっ!」
ギリギリでペイストが止める。
「遅い!」
「っ!!」
「もっと早く!」
「ははっ!手加減ねーな」
剣をギリギリ鳴らせながらペイストは笑っている。
「本気で行くって言ったでしょう?魔法いくよ!風よ、彼の者を吹き飛ばせ、ヴォン!」
「うわあああっ!」
ペイストが風で飛ぶ。なんとか着地を決めるが、足元がおぼつかない状態だ。
再度剣を交わしながら呪文を唱える。コレは魔王の特徴で強みだ。
「考えるなんて向いてない!感じろ!水よ、重力のままに、フリュ・クール!」
「ちょっ!タンマ!」
「待たない!喰らえ!」
さっき風の魔法は初級で、次の水は中級。
ペイストは魔法をモロに受けてびしょ濡れだ。なんとか立ち上がる。
「クソッ!剣振りながら詠唱してるのに何で止められないんだよ!」
「力でやるな!感覚でいけ!ついて来られないなら置いていく!」
「・・・嫌だ。そんなの、嫌だ!!マオの側を離れるなって俺の中の俺が叫んでる!」
「くっ!」
ペイストは剣にとても愛されている。大剣じゃないのに、その一撃はとても重い。だから真っ向勝負よりも躱して強さを利用したり、詠唱で怖気付かせたりする。ペイストは魔法に対して怯えている。だから、それが無くなれば・・・!いい加減に認めろ!!
「だから、痛くても!苦しくても!お前についていく!俺自身もお前の側にいたい!」
「じゃあ出来るようになれ!」
「どうしたらいいのかもうわかんねーよ!!」
ペイストは泣きそうだ。
・・・もういい、コレで出来ないなら私の側を離れた方が良い。ペイストならどう歩いたって同じ道を進む。私は彼を見送る手を笑顔で振れる。
「ならここでお別れだ!考えるな!来れ雷雲、我に仇なすものに鉄鎚を・・・シュット・ドゥ・フードゥル!」
「嫌だあ!!」
大きな雷が落ちた。手加減無しで久しぶりに本気になった。はぁはぁと息をつく。かなり興奮状態だったらしい。
先生や生徒たちが何事だと集まってきていた。
煙が消えた時、ペイストは光の球体で守られていた。ダメージは半分以下で済んでいる。まだ戦える余力がある。
「っ!?・・・で、出来た?魔法の防御出来た!」
「はぁ、自分でさっき言ったでしょ?考える事は苦手だって」
マオはため息をつき、構えを解いて剣を鞘にしまう
「・・・へ?」
「大体わかるよ。防御を考えるなんてペイストには向いてない・・・ってか無理!大体さ、実技490以下になった事ないなんておかしいから!」
「なっ!マオとシェールは!
「テストも490以下になった事無い」
「ぐっ!才能の塊かよ!不公平だ!」
「いや、ペイストに言われたらおしまいだから!・・・勉強を頑張るオルドルの気持ちがわかる。大体さー、考えるな感じろーなんて映画の中のセリフだからね!?」
ペイストは気合と根性が服着て歩いてるようなものだ。
「え、えい・・・が?」
しまった。つい前世の記憶が
「あー何でもない。もうペイストはさー数とか数えながら戦えば?感覚とか本能で生きてるようなもんなんだし」
「マオ!お前俺をバカにしてないか!?」
「じゃあやってみなよ」
「数を数えながらか?」
「あ、心の中でね。はたから見たら怖すぎるから」
「わかった!面白そうだし、やってみる!マオ、相手してくれ!」
「振り出しに戻らないでよ!もう疲れた!」
座り込んだ私に、ペイストは不満そうに座ったかと思うとジーッと見てる。まるでご飯を待つ犬みたいだ。
「ね、ペイスト」
「ん?」
「・・・ずっと、側にいてね?」
「・・・ま、まお?き、気持ちは嬉しいが、オレにはシェールが・・・」
「そういう意味じゃない!」
ペイストは顔を赤らめながら頭をかいていた。むかついたからグーで殴っておいた。
どうやら、もうしばらく一緒にいられるらしい。私はもう少しつきあう事にして腰を上げた。
その後も勉強と並行して練習を続ける。
そして今年最後のテストが返ってきた。
ペイストの実技は498!自己ベスト更新!5科目の合計は380
合計で878の合格!!
みんな揃って3年生に進級した。
ちなみに、ペイストの剣の腕も上がったが、不気味さも上がり、剣だけでの勝負ならマオをも凌ぐ事もあり、事情を知らない者達は、ペイストが偶に漏らす数字に、魔剣士になったのではないかと噂が広まるようになる。
マオはゲーム以上のモンスターを作ってしまったのでは・・・?と、不安になった。
そして、フィック先輩とフォルス先輩が卒業していった。
フォルス先輩は有名な商人ギルドに所属して、人を助けながら能力を引き出すアクセサリーを作るんだって。いくつか見せてもらうと、ゲームで見た事がある物もない物もたくさんあって少し買わせてもらった。
フィック先輩は、世界中の遺跡を見ながら旅して、本を書くんだってさ。
せっかく主席の満点で卒業したのにもったいないけど、もし、この夢を見つけていなかったら科学者になって、ゲームと同じように魔物を生み出してしまっていたのかもしれない。
でも、私は今のフィック先輩なら、偉大な科学者になれるとは思ったけど、本当のやりたい事を見つけられたような気がして、とても晴れやかな気持ちだ。考古学者とか似合いそう!
「僕の故郷もオススメですよ!リシンが眠っていた遺跡があります」
そう言ってオススメすると、先輩も晴れやかに笑った。
「そうですね。気が向いたら向かいます。マオ、お元気で」
「フィック先輩も、気をつけて」
「欲しい商品あったら依頼しな。安くしとくよ!」
「はい、フォルス先輩」
「・・・シェールも、手紙書くから泣かないの」
「嬉しくて泣いてるの!卒業おめでとうフォルス」
「ありがとうシェール。アンタ、シェール泣かしたらシメに行くから」
「ヒッ!!」
フォルス先輩はペイストを睨んでるけど、私はもう知ってる。アレは先輩なりの託し方なんだって
2人はそんな風に卒業していった。
卒業式の後に寮に戻ると、広くなった部屋は少し寂しくなった。
と思っていたら、ペイストがルームメイトになった。なんでも、暇さえあれば素振りして、数を数えているのを元ルームメイトが怖がって、先生に泣きついたんだって。
事情を作った張本人だからなぁ、私。先生は私達が仲良いの知ってるからね
。ま、寂しくはなくなったけど!
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