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決行の章
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日が沈んだ頃、ラルはリシンに気付いて呼ぶと、リシンは姿を消して近づいた。ラルは俯きながら
「リシン、オレのポケットに小瓶が入っている。ソイツを落とせ。割れた瞬間は息止めろよ?」
「わかった!」
盗賊は、物を隠し持つ事も得意だ。リシンはなんとか小瓶を探し出して、それを落とした。
小瓶が割れて、中から青い煙が出てきた。
「な、何だこの煙は!」
「べルーラ様、吸っては、いけま
「うるさい!!それより奴を逃すな!何としてもつかまえ・・・て・・・」
言い終わらない内に、宰相と家来は眠ってしまった。
ラルは待ってましたと言うように、縄をスルリと解いた。
「リシン!今の内だ!夢を見せろ!!」
「え?でも・・・
「マオ様がOKしたからお前が此処にいるんだろう!?この薬は体力がある複数人には効果が薄いんだよ!」
「わ、わかった!!」
リシンは戸惑っていたが、夢を見せた。
薄い紫色の雲がモクモクと宰相を包む。色はどんどん暗くなり、部屋を覆い隠しそうな量だ。
リシンは集中して動かない。
あまりの量と雲の美しさに、見惚れて動けなかったラルは、軽く吸い込んでしまった。
宰相は今生の断末魔のような叫び声を上げて悶え苦しみ、しばらくすると、自害しようと懐からナイフをとり出す。
放心していたラルは我に帰った。
「しまった!」
ラルは宰相に飛びかかる。
「たくさんの罪を作ったお前は、簡単に死なせない!罪を償う人生をこれから送ってもらう!!」
ナイフに触れると宰相はより一層強く叫んだ。空気が痺れる。左耳が痛い。この時ほど右耳が聞こえない事に感謝した事はない。
盗賊は聞き耳も得意だが、ラルは左耳だけで聞き耳が出来る程に耳が良いからだ。
ラルは揉み合いになりながら、宰相からなんとかナイフを取り上げて、痺れ薬を使った。
宰相は手足が動かせず、声も上げられない。しばらくして大人しくなった。
放心状態で虚な瞳をしており、身体から力が抜けている。何とか意思のある人形のようだ。
「はあっ・・・はあっ・・・」
「終わったぞ、ラル」
「・・・・・・」
「ラル?」
リシンが様子を伺うとラルは涙を流していた。
あんなに拷問されても声さえあげなかったラルに、リシンは慌てた。
「ラル大丈夫か?どっか痛いのか!?手も血だらけだぞ!」
「ははっ。痛いのは全身だよ」
「痛くて泣いてんのか?」
「いや、雲の流れ弾掠った」
「そっか。ゴメンな。慌ててたからだ」
「いや、オレも焦った。悪ぃ。・・・なぁ、アレは、本当に未来の姿なのか?」
「見ちまったのか?」
「・・・・・・ああ。オレと、オルドルと、フォルスと、後知らない奴が2人いた」
「どっかの城が・・・崩れてて、オレも必死に脱出した。でも、オレは左耳も怪我して、音が全く聞こえなかった。見えてたけど、死んでると思って・・・マオの苦しんでる、生きてる声が聞こえなかった!近くにいたのはオレだけだったのに!もし聞こえていたらどんなに利用されてると解っても助けてた!!!!」
「ラル落ち着け!その人はマオじゃない!!」
「じゃあどうしてこんなに辛いんだよ!!どうしてオレは苦しくて悲しくて後悔してるんだ!!!」
「ゴメン。ゴメンなラル。そのマオは簡単に言えば、マオと話さなかったオイラだよ」
「・・・それ、どういう
「でもな!未来には色んな可能性があるんだ。どんな人と、どういう風に、どうやって生きていきたいか。そして、ラルが何を選ぶかで未来は変わる。良い夢でも、悪い夢でも、それは数えきれない程ある中の、一つのもしもの場合だぞ?いつだって未来は変わるんだ!」
「・・・いつだって、変わる?」
「あぁそうだ!んで、今のお前がしなきゃいけないのは、反省だ!」
「反、省?」
「お前が捕まってみ~んな心配したんだからな!?それにいつでも逃げられたろお前!」
「まぁそうだな。慣れてるし」
「慣れるな!まずはマオに叱られろ!」
「いや、結果オーライだ
「おーあいじゃない!」
「リシン、オレのポケットに小瓶が入っている。ソイツを落とせ。割れた瞬間は息止めろよ?」
「わかった!」
盗賊は、物を隠し持つ事も得意だ。リシンはなんとか小瓶を探し出して、それを落とした。
小瓶が割れて、中から青い煙が出てきた。
「な、何だこの煙は!」
「べルーラ様、吸っては、いけま
「うるさい!!それより奴を逃すな!何としてもつかまえ・・・て・・・」
言い終わらない内に、宰相と家来は眠ってしまった。
ラルは待ってましたと言うように、縄をスルリと解いた。
「リシン!今の内だ!夢を見せろ!!」
「え?でも・・・
「マオ様がOKしたからお前が此処にいるんだろう!?この薬は体力がある複数人には効果が薄いんだよ!」
「わ、わかった!!」
リシンは戸惑っていたが、夢を見せた。
薄い紫色の雲がモクモクと宰相を包む。色はどんどん暗くなり、部屋を覆い隠しそうな量だ。
リシンは集中して動かない。
あまりの量と雲の美しさに、見惚れて動けなかったラルは、軽く吸い込んでしまった。
宰相は今生の断末魔のような叫び声を上げて悶え苦しみ、しばらくすると、自害しようと懐からナイフをとり出す。
放心していたラルは我に帰った。
「しまった!」
ラルは宰相に飛びかかる。
「たくさんの罪を作ったお前は、簡単に死なせない!罪を償う人生をこれから送ってもらう!!」
ナイフに触れると宰相はより一層強く叫んだ。空気が痺れる。左耳が痛い。この時ほど右耳が聞こえない事に感謝した事はない。
盗賊は聞き耳も得意だが、ラルは左耳だけで聞き耳が出来る程に耳が良いからだ。
ラルは揉み合いになりながら、宰相からなんとかナイフを取り上げて、痺れ薬を使った。
宰相は手足が動かせず、声も上げられない。しばらくして大人しくなった。
放心状態で虚な瞳をしており、身体から力が抜けている。何とか意思のある人形のようだ。
「はあっ・・・はあっ・・・」
「終わったぞ、ラル」
「・・・・・・」
「ラル?」
リシンが様子を伺うとラルは涙を流していた。
あんなに拷問されても声さえあげなかったラルに、リシンは慌てた。
「ラル大丈夫か?どっか痛いのか!?手も血だらけだぞ!」
「ははっ。痛いのは全身だよ」
「痛くて泣いてんのか?」
「いや、雲の流れ弾掠った」
「そっか。ゴメンな。慌ててたからだ」
「いや、オレも焦った。悪ぃ。・・・なぁ、アレは、本当に未来の姿なのか?」
「見ちまったのか?」
「・・・・・・ああ。オレと、オルドルと、フォルスと、後知らない奴が2人いた」
「どっかの城が・・・崩れてて、オレも必死に脱出した。でも、オレは左耳も怪我して、音が全く聞こえなかった。見えてたけど、死んでると思って・・・マオの苦しんでる、生きてる声が聞こえなかった!近くにいたのはオレだけだったのに!もし聞こえていたらどんなに利用されてると解っても助けてた!!!!」
「ラル落ち着け!その人はマオじゃない!!」
「じゃあどうしてこんなに辛いんだよ!!どうしてオレは苦しくて悲しくて後悔してるんだ!!!」
「ゴメン。ゴメンなラル。そのマオは簡単に言えば、マオと話さなかったオイラだよ」
「・・・それ、どういう
「でもな!未来には色んな可能性があるんだ。どんな人と、どういう風に、どうやって生きていきたいか。そして、ラルが何を選ぶかで未来は変わる。良い夢でも、悪い夢でも、それは数えきれない程ある中の、一つのもしもの場合だぞ?いつだって未来は変わるんだ!」
「・・・いつだって、変わる?」
「あぁそうだ!んで、今のお前がしなきゃいけないのは、反省だ!」
「反、省?」
「お前が捕まってみ~んな心配したんだからな!?それにいつでも逃げられたろお前!」
「まぁそうだな。慣れてるし」
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「いや、結果オーライだ
「おーあいじゃない!」
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