黒銀のフェンリル

chii

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ナナ

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  「嘘でしょう、新しい乙女が……お嬢様だなんて!!」


止まっていた時間が、アンナの叫びで動き出す。
まず、フェンリルの俺に恐る事なく近づき、鼻先に手を伸ばす乙女、その指先をペロンと舐めてやると、くすぐったそうに声をあげて笑っていた。
「きゃ~ぅ。あはは」
その可愛らしい声を聞きながら
「すまんが、何か布を貸してくれ。」
「失礼します。布ですか?」
「お前は?」
「初めまして。私はこの侯爵領の領主、ラフィエル.ド.メリルです。して、布ですか?」
「あぁ、人型になる。だが、このままでは……」
「分かりました」そう、話をしていても、俺の乙女は、俺の周りをぐるぐる回り毛並みを撫でていた。
それを見ながら、ラフィエルは周りに指示を出す。
「アンナ以外の侍女とメイドは、屋敷に黒銀様の部屋の準備と服飾店に連絡、黒銀様の服の用意を。マーク以外の騎士は、屋敷の警備の強化と、聖黒教に、連絡。新たな黒銀様の乙女に我が娘が選ばれたと」
「「はい!」」
それぞれが動き出す。
「よろしければ、これをお使い下さい。」
そう言い、マークはマントを外した。
「いいのか?ならば借りる。」
マントを借り、人型へと変化する。
眩い光に包まれ人型へと変化して、光収まる前にマントを腰に巻きつけた。
人型となった俺は、乙女に話しかける。
「名は?」
首を傾げ俺を見上げる乙女を抱き上げもう一度聞く。
「お前の名前は?」
「りちぇーる」
「りちぇ……?」
「リシェールです。黒銀様。私達家族や近しい者は、リルと呼びます。」
「そうか、リルか。」
「うん、リルはリルなの!」
元気にいう乙女の頬を撫でながら、頼み事をする。
「リル、俺に名を付けてくれ」
「な?」
「俺の名前だ!」
「名前?う~ん………」
決まったのか、とてもいい笑顔で言う。
「ナナ!」
「ナ!!」

「ちょっと待て、ナナは………」
「やっ!ナナ!ナナなの!」
可愛い俺の乙女が付けた名前不本意だが、受け入れよう。
「わかった、今日から俺は、ナナだ!」
周りの奴らは、声を殺しながら、肩を揺らして笑っている。
お前ら~!!!
笑いを収めたラフィエルは、黒銀様、どうぞ我が屋敷へ」
そう言い、俺を促す。
「ここに、この場所にいる者だけに、俺をナナと呼ぶことを許そう。ただし他に人がいる時は、黒銀と呼べ!」
「分かりました」
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