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第一章
秋永君のせいだよ
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態度がぶれないのは確かだけど、だからって言って、根性があるかどうかは分かんないけどね。でも……。
「そう言えば、秋永君が怒ってるところって見たこと無いなあ……」
時々さっきのように私の拳や足が飛んできても、実際笑ってかわすことのできるような人間だ。
……でもそれってさあ、やっぱりなんだかいい人過ぎて胡散臭いって思わない?
欠点の無い人間なんているわけないと思うし、そんな『優しく完璧ないい人』、なんてのを目の前にしたら、裏があると考える方が普通だ。
そんなことを思いながら、覗き見気分で秋永君の席を窺ってみる。視線の先の秋永君は、楽しそうに話す周りに対して相槌を打ち、ほぼ聞き役に徹しているようだった。
「聞き上手……」
聞き上手に笑顔を絶やさない優しい人? やっぱりこれってどう考えても裏のある胡散臭い人じゃないの? 漫画に出てくるサブキャラの良い人っぽい人物って、そういうのとかよくあるじゃん。
「何? どうしたの、未花。もしかして秋永君のこと気になってきてるの?」
「え? や、そういうわけじゃないけど……」
「けど?」
私が重度の男嫌いということを知っている雅乃は、興味津々というよりも、私が男子を気にして見ているという事実に驚いているようで目をまん丸くしている。
「秋永君ってたいていいつもニコニコへらへらしてるじゃない? 何考えてるか分からないっていうか……。だからちょっと胡散臭いかもなーって思って」
「へらへらして胡散臭いって……。私はそんな印象無いけどな。穏やかな人だなーって感じだよ?」
「穏やか……。まあ、そうだね。いきなり拳が飛んできても、怒ったりしないものね」
「アハハ。そうだね。あ、先生来た!」
雅乃は慌てて自分の席に戻って行く。私はそれに手を振って応えて、チラッと視線を秋永君の方に戻した。
彼の周りの人たちもそれぞれ座りなおして前を向き、秋永君も姿勢を正して前を向いた。その時に彼とパチッと目が合う。
ヤバッ。私が秋永君のこと見てたの気づかれちゃった。
慌てて目を逸らす私の視界の端に、驚く顔からうれしそうな表情に変化する秋永君の顔が映っていた。
「…………」
……何、あれ。あの表情。
あまりにもうれしそうなあの表情の意味が分からなくて、戸惑った。もぞもぞするというか、何と表現していいのか分からない微妙な気持ちに、手のひらを軽く握って口元を覆う。
「あ~、やっぱり訳わかんない。変」
「どこが分からないのかしら? 糸魚川さん」
「え? あ、いえっ!」
驚いて見上げた先には、いつの間に立っていたのか怖い笑顔の小田原先生。教科書も広げずにポケーッと秋永君のことを考えていたので、その気配に全く気が付かなかった。
先生の表情があまりにも怖すぎたので、何とか胡麻化そうと慌てて教科書を捲るも、今どこのページに進んでいるのかも分からない。焦ってキョロキョロしていると、先生が低い声で「三十二ページ」と呟いた。
「すみません……」
いやな汗を掻きながら、言われたページを開いてため息を吐く。先生は一瞬チラリとこちらを見て、そのまま前の方に歩いて行った。
……あ~、マジ焦った。質問されないだけでも良かったよ。
一瞬、ピンと張りつめた空気になっていた教室も、どうやら普段の緩んだ雰囲気に戻っているようだ。それにホッとして、この時間中はしっかりと授業に集中した。
「そう言えば、秋永君が怒ってるところって見たこと無いなあ……」
時々さっきのように私の拳や足が飛んできても、実際笑ってかわすことのできるような人間だ。
……でもそれってさあ、やっぱりなんだかいい人過ぎて胡散臭いって思わない?
欠点の無い人間なんているわけないと思うし、そんな『優しく完璧ないい人』、なんてのを目の前にしたら、裏があると考える方が普通だ。
そんなことを思いながら、覗き見気分で秋永君の席を窺ってみる。視線の先の秋永君は、楽しそうに話す周りに対して相槌を打ち、ほぼ聞き役に徹しているようだった。
「聞き上手……」
聞き上手に笑顔を絶やさない優しい人? やっぱりこれってどう考えても裏のある胡散臭い人じゃないの? 漫画に出てくるサブキャラの良い人っぽい人物って、そういうのとかよくあるじゃん。
「何? どうしたの、未花。もしかして秋永君のこと気になってきてるの?」
「え? や、そういうわけじゃないけど……」
「けど?」
私が重度の男嫌いということを知っている雅乃は、興味津々というよりも、私が男子を気にして見ているという事実に驚いているようで目をまん丸くしている。
「秋永君ってたいていいつもニコニコへらへらしてるじゃない? 何考えてるか分からないっていうか……。だからちょっと胡散臭いかもなーって思って」
「へらへらして胡散臭いって……。私はそんな印象無いけどな。穏やかな人だなーって感じだよ?」
「穏やか……。まあ、そうだね。いきなり拳が飛んできても、怒ったりしないものね」
「アハハ。そうだね。あ、先生来た!」
雅乃は慌てて自分の席に戻って行く。私はそれに手を振って応えて、チラッと視線を秋永君の方に戻した。
彼の周りの人たちもそれぞれ座りなおして前を向き、秋永君も姿勢を正して前を向いた。その時に彼とパチッと目が合う。
ヤバッ。私が秋永君のこと見てたの気づかれちゃった。
慌てて目を逸らす私の視界の端に、驚く顔からうれしそうな表情に変化する秋永君の顔が映っていた。
「…………」
……何、あれ。あの表情。
あまりにもうれしそうなあの表情の意味が分からなくて、戸惑った。もぞもぞするというか、何と表現していいのか分からない微妙な気持ちに、手のひらを軽く握って口元を覆う。
「あ~、やっぱり訳わかんない。変」
「どこが分からないのかしら? 糸魚川さん」
「え? あ、いえっ!」
驚いて見上げた先には、いつの間に立っていたのか怖い笑顔の小田原先生。教科書も広げずにポケーッと秋永君のことを考えていたので、その気配に全く気が付かなかった。
先生の表情があまりにも怖すぎたので、何とか胡麻化そうと慌てて教科書を捲るも、今どこのページに進んでいるのかも分からない。焦ってキョロキョロしていると、先生が低い声で「三十二ページ」と呟いた。
「すみません……」
いやな汗を掻きながら、言われたページを開いてため息を吐く。先生は一瞬チラリとこちらを見て、そのまま前の方に歩いて行った。
……あ~、マジ焦った。質問されないだけでも良かったよ。
一瞬、ピンと張りつめた空気になっていた教室も、どうやら普段の緩んだ雰囲気に戻っているようだ。それにホッとして、この時間中はしっかりと授業に集中した。
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