接近禁止!なのにその壁を、溺愛男子に破られました

らいち

文字の大きさ
67 / 75
エピローグというより番外編?

家に来て欲しくないの?

しおりを挟む
「ねえ、未花」
「うん?」
「秋永君、未花のお母さんと仲良くなってるんだよね」
「うん。今では時々送ってもらった後、一緒におやつ食べたりして。お母さん交えた三人で食っちゃべってる」
「未花は?」
「え?」
「未花も秋永君のお母さんと、仲良くなった?」

 雅乃の素朴な疑問にハッとした。自分はお母さんに会わせておいて、それなのに私は秋永君のお母さんに会うことなんて想像もしていなかったし、それどころか、秋永君のお家にお邪魔することすら考えていなかった。

「まだ会ってないや」
「そうなの? もしかして、まだお家にも行ってないとか」
「アハハ。実はそう」

 なんだかちょっぴりバツが悪くて、ポリポリと頭を掻いた。

「でもまあ、彼氏のお母さんに会うって緊張するもんね。躊躇するのも分かるよ」
「あー、うん」

 うんうんと頷く雅乃に笑ってごまかした。緊張するとかそういう事以前に、全く考えもしなかったということを言える雰囲気じゃないみたい。

「未花ちゃん、お待たせー」

 椎名君たち数人の男子とワイワイ騒いでいたヒロくんが、リュックを背負いながらやって来た。最初の頃はヒロくんが私に気を遣ってくれて、すぐに帰ろうと誘いに来たのだけど、最近ではお互い余裕が出来てきたのか少しのんびりと放課後の時間を過ごすようになっている。
 私がのんびりと雅乃と話をしている雰囲気を見て、ヒロくんは顎に手をやり小首を傾げた。

「……もしよかったら、久しぶりに長束さんも、一緒に帰る?」

 椎名君と雅乃に説教されて以来、初めてのヒロくんのお誘いだ。

「うん、いいね、いいね! 一緒に帰ろうよ!」

 燥ぐ私と穏やかにその返事を待つヒロくんの様子を見ながら、雅乃は一瞬きょとんとしていたけれど、すぐに嬉しそうに笑みを浮かべた。

「うん……、そうだね。お邪魔でなければ」
「え、本当? 邪魔じゃない、邪魔じゃないよ!」

 ヤッター、久しぶりに雅乃と一緒に帰れる! そう思うと嬉しくて、自然と声が弾みその場でぴょんぴょんと跳びはねた。

「未花ちゃーん」

 燥ぎすぎる私を横目に、恨めしそうなヒロくんの声。雅乃がぷっと吹き出した。

「焼き餅焼きっぷりは変わらないね」
「いや、だってさ」
「あー、もう。ほらほら。雅乃の揶揄いに、いちいち反応しないで。帰ろ!」

 今度はピョンと、ヒロくんの腕に飛びついて、帰ろうと促した。顔をこちらに向けたヒロくんが、目尻を下げて頷いた。雅乃は可笑しそうに笑ってる。

 最近の、私のヒロくんに対するスキンシップは確実に増えている。だけど他の男子に対しての私の男嫌いっぷりが解消しているわけではないから、なんとも不思議な現象なんだけど。

 久しぶりに駅への道のりを、三人で談笑しながら歩いた。

「ところで秋永君、秋永君は未花に家に来てほしいとか思わない?」
「え?」

 さっきの会話の続き? え~、ちょっと待ってよ雅乃!

 私はつい焦って、雅乃とヒロくんを交互に見た。

 アレ? 心なしかヒロくんも、なんだか焦ってる?

「う、家に? あ、いや。わざわざ悪いから、別にいいよ!」

「ええっ! 悪いって、何? 好きな子となら二人っきりになりたいから、親のいない時とか見計らって、連れ込みたいとか思うもんじゃないの?」

「ちょっと雅乃、その言い方……! でもヒロくん、私のことお家に連れて行きたくないって、そんな感じ?」
「ち、違うよ。そんなわけない」

 違うと言いながらも、ヒロくんの動揺っぷりは半端ない。確実に何かを隠しているようなその表情に、私も雅乃も探るようにヒロくんを見た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

俺様系和服社長の家庭教師になりました。

蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。  ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。  冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。  「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」  それから気づくと色の家庭教師になることに!?  期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、  俺様社長に翻弄される日々がスタートした。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

処理中です...