接近禁止!なのにその壁を、溺愛男子に破られました

らいち

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エピローグというより番外編?

緊張の訪問

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 休日のせいもあるのだろう。電車内は、そこそこ混んでいた。
 適当に座れる場所を見つけられなかったので、ヒロくんはわりと広く空いている場所へと私を誘導した。

 こういう時のヒロくんって、番犬さながらのボディガードっぷりなんだよね。いつもの穏やかな表情と違って、目つきが鋭くちょっと怖い。だけどそれも最近では、カッコイイと思っちゃってるんだけどね。 

 ヒロくんのボディガードの甲斐あって、無事に駅に着いて電車を降りた。

「ここからすぐだよ。10分も掛からないから」

 そう言ってヒロくんは、誘導するように少し私の前を歩いた。商店街っぽい所を抜けて、住宅街へと入っていく。

「ほら、あれ。あの茶色い屋根の二階建ての家だよ」
「ああ……」

 びっくり。ヒロくんの家が見えてきた途端、急に緊張してきた。足がモゾモゾするよ。

「未花ちゃん?」
「あ、え? 何?」
「……もしかして、緊張してる?」
「うん」

 ちょっぴり心配そうな表情でヒロくんに聞かれて、私は素直に頷いた。隠したところでしょうがないし。

「未花ちゃんは心配しないでも大丈夫だよ。家は絶対に熱烈歓迎だから」
「そ、そう言われても……」

「未花ちゃんの男嫌いのこともちゃんと話してあるから。弟にもむやみに未花ちゃんに近付か無いよう、念押ししてあるからね」

「そ、そっか」

 彼氏の兄弟にそんな説明をしないといけない彼女って、どんなんだって感じだけど……。
 顔を上げると、優しい表情のヒロくんと目があった。

 ……そうだよね。誰だって初めては緊張するものだ。お母さんは気さくで優しい人だってことだし、ここはもう開き直って素直な自分を見せることを意識しよう。軽く深呼吸をして、よしっと、気合いを入れた。

「ただいまー」

 玄関を開けてヒロくんが大声で挨拶をした。すると奥の方からヒロくんのお母さんが顔を覗かせた。

「お帰りなさい。……あなたが未花さん? こんにちは」
「こ、こんにちは! 初めまして、糸魚川未花です。よろしくお願いします!」
「初めまして。こちらこそよろしくね」

 にっこりと優しく笑うその表情は、ヒロくんそのものだ。彼の穏やかさは、もしかしたらお母さん譲りかもしれない。

「玄関先もなんだから、上がって未花ちゃん」
「あ、うん。お邪魔します」

 案内された先は居間だった。畳間で、長方形の大きな座卓が置かれている和室の部屋だ。

 まあ、そうだよね。初めての訪問で家族もいるのに、いきなり彼氏の部屋にはいけないよね。

 ……あっ! 忘れるところだった。

「これ、手土産に。お母さんと一緒に作ったスノーボールです」
「あらあら、まあ」
「お母さん! 兄ちゃんの彼女来たって!?」

 ドタドタと走る足音と共に大声が近づいてきた。
 目の前に現れたのは、ヒロくんを随分と可愛くした小学生くらいの男の子だ。その子は目が合うと、パチパチと瞬きをした。

「可愛い……」
「おいっ!」

 弟君がそのままの勢いで私のもとに飛びつく勢いだったので、ヒロくんが慌てて私の前に立ち弟君を止めた。

「克樹、注意しただろ」
「あっ、そうだった。ごめん」

 ヒロくんに注意されて、素直に謝る弟君が可愛い。パチッと目があった彼は照れ笑いを浮かべた。

「克樹、まずは自己紹介は?」
「あ、うん。えっと、克樹です。小学校5年生です。よろしくお願いします」 
「克樹君? こちらこそよろしくね。えっと、浩朗君のお友達で糸魚川未花と言います」

 私もぺこりと頭を下げて挨拶を返した。顔を上げると克樹君がじっと見ていて、にっと笑う。

「彼女でしょ?」

 揶揄いを含んだその表情に、苦笑いが浮かぶ。

「アハハ、そうだね」

 素直に訂正して笑うと、克樹君が「やっぱり可愛い」と言って笑った。
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