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第一章
智未の事情
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私の住んでいるアパートは、相当古い。築五十年を超えていて、あちらこちらにヒビも入っている。一時期は建て替えも検討していたようなのだけど、立ち消えになってしまった。なんでも、大家さんの息子から反対の声が上がったらしい。彼らはこのアパートを取り壊して、自分たちの住む住宅を造りたいらしいのだ。
――半年あれば、新しい部屋も見つけられるでしょう? 引っ越し時の配送料や向こうで発生する敷金はこちらでお支払いしますから。
「困ったな……」
駅からそう遠くもなく都心にも近いのに、建物が古いという事と大家さんがおおらかなせいで、こちらの家賃は相場よりも相当安かった。だから何とかやってこれたのに。
もちろん駄々をこねて居座るような真似なんて私には到底無理なので、今まで一生懸命探してきたのだけど、この近辺にはここのように安い家賃の部屋なんて一つも無かった。
本当にどうしよう。少なくても四万円くらいはお母さんたちへ仕送りは続けたいし、これ以上の出費はやっぱり無理だ。
「あ~あ」
もうほとんどの人達は、引っ越し先を見つけて来ていると言っていた。もうあと十日も無いんだ。
私は頭を抱えて、ため息を吐いた。
次のアパートが見つからないからと言って、仕事を休んで探しに行く余裕があるわけの無い私は、相変わらず戦場のように忙しい厨房で汗を掻きながら動き回る。
そしてそのピークを終えた後、昼休憩に入った。
「そう言えば白山さん、見た? 来てたわよ、高科さん」
「え? 本当ですか?」
「あ、白山さん気がつかなかったの? 残念ねえ」
「何時頃来てたんですか?」
「そうねえ、確か十二時半頃じゃなかったかしら。ねえ?」
小杉さんが首を傾げながら、大谷さんに同意を求めた。
「だと思うわよ」
「そうですかー。確かその時、私奥の方で作業してました」
「忙しい時間帯だからね」
「はい」
そうか。約束通り、ちゃんとご飯食べに来てくれたんだな。
それにしても……。あのボサボサの髪とよれよれの服でみんなと一緒にここまで来て、ご飯を食べていったんだ。
ふふっ。何だか可笑しい。笑っちゃうね。
――半年あれば、新しい部屋も見つけられるでしょう? 引っ越し時の配送料や向こうで発生する敷金はこちらでお支払いしますから。
「困ったな……」
駅からそう遠くもなく都心にも近いのに、建物が古いという事と大家さんがおおらかなせいで、こちらの家賃は相場よりも相当安かった。だから何とかやってこれたのに。
もちろん駄々をこねて居座るような真似なんて私には到底無理なので、今まで一生懸命探してきたのだけど、この近辺にはここのように安い家賃の部屋なんて一つも無かった。
本当にどうしよう。少なくても四万円くらいはお母さんたちへ仕送りは続けたいし、これ以上の出費はやっぱり無理だ。
「あ~あ」
もうほとんどの人達は、引っ越し先を見つけて来ていると言っていた。もうあと十日も無いんだ。
私は頭を抱えて、ため息を吐いた。
次のアパートが見つからないからと言って、仕事を休んで探しに行く余裕があるわけの無い私は、相変わらず戦場のように忙しい厨房で汗を掻きながら動き回る。
そしてそのピークを終えた後、昼休憩に入った。
「そう言えば白山さん、見た? 来てたわよ、高科さん」
「え? 本当ですか?」
「あ、白山さん気がつかなかったの? 残念ねえ」
「何時頃来てたんですか?」
「そうねえ、確か十二時半頃じゃなかったかしら。ねえ?」
小杉さんが首を傾げながら、大谷さんに同意を求めた。
「だと思うわよ」
「そうですかー。確かその時、私奥の方で作業してました」
「忙しい時間帯だからね」
「はい」
そうか。約束通り、ちゃんとご飯食べに来てくれたんだな。
それにしても……。あのボサボサの髪とよれよれの服でみんなと一緒にここまで来て、ご飯を食べていったんだ。
ふふっ。何だか可笑しい。笑っちゃうね。
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