貴方から逃げます

まる

文字の大きさ
2 / 8

家を出たい2

しおりを挟む
 コンコン

「沙羅です。お話があります」

 執務室のドアをノックすると、従者がドアを開けてくれた。

「ありがとう。」
  
 従者の笑顔は冷たい。
 この家で私を冷たく扱うのは、お兄様だけじゃない。使用人は全員、ある日を境に私を避けるようになった。

 理由は解ってる。両親が亡くなったのが、私のせいだから。
 結婚記念日に、私は演劇の鑑賞券を贈った。それを観に行った帰りに、両親は事故で死んだ。
 誰も責める事は無かったけれど、私の居場所はなくなった。

 結婚して幸せになれるか保証はないけど、この家にいるよりましよ。

「お仕事中に申し訳ございません。お兄様にお話があります」
「……」
「私の縁談の話を進めて下さいませんか。私は雨宮の血を継いないので、断る家は多いかもしれません。もしお相手が見つからないようなら、静かな場所で仕事をして暮らしたいのです」
「…仕事?君に何が出来る?」

 どうして何も出来ないと決めつけるのかしら。

「雨宮家に来る前は、自分の事は自分でしていました。母が亡くなってからは、お料理もお裁縫も教えて貰ってるので、全く何も出来ない女ではありません」

 お兄様にいつ『出ていけ』と言われてもおかしくないと思ったから、料理以外にも出来る事は色々教えて貰った。

「女が1人働いて、生活出来るはずがないだろう」
「『結婚相手が見つからなかった場合はそうする』と申し上げているだけです。お兄様も、結婚をしなければいけませんし、邪魔者は消えます」
「わかった。いくつか当たってみよう」
「ありがとうございます」

 良かった。私がこの家にいて出来る事なんて何もないし、早く決まってほしい!!



 部屋にかえってから、大切な物をテーブルに並べた。

 お母様の形見のネックレス。一緒に作った刺繍の入ったクッション。お義父様に貰ったブローチ。他にも細々としたものが沢山。

 今見てみれば、お兄様からのプレゼントは何もないわね。形だけでも妹にプレゼントを渡そうって気持ちすら無かった。……そうとう嫌われてるのかも。


 いつも通り、1人で夕飯を食べて、今は夜10時。

 コンコン

 小さく部屋をノックする音が聞こえる。

 こんな時間に人がくるなんて、珍しい。

「だれ?」
「俺だ」

 これって、お兄様の声だよね?こんな時間に…というか、私の部屋に来るなんて、今日が初めてだけど。
 ドアを開けると、いつも通り冷たい顔たお兄様がいる。

「何でしょうか?」
「話がしたい。内容を聞かれたくない、部屋に入っても構わないか?」
「はい…、どうぞ」

 こんな夜遅くに話さないといけないほど、大切な事なのかしら。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる

柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった! ※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

十歳の花嫁

アキナヌカ
恋愛
アルフは王太子だった、二十五歳の彼は花嫁を探していた。最初は私の姉が花嫁になると思っていたのに、彼が選んだのは十歳の私だった。彼の私に対する執着はおかしかった。

処理中です...