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古代遺跡

125 イルレシオン起動

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 百二十五話  イルレシオン起動


 皆が寝静まってどれくらい経っただろう。
 気温の高いせいもあり、私は寝汗の不快感から目を覚ます。


 ーー…あれ?


 ウルゼッタが窓の前に椅子を置いて座り、静かに月を眺めていた。


 「ー…ウルゼッタ?」

 
 私の呼びかけにウルゼッタはすぐに反応。優しい表情で私に視線を向ける。


 「何してたの?」

 「これが気になって眠れなかったんですの。」


 ウルゼッタがナルテアでもらった果実産の謎のアイテムー…金の模様の描かれた黒い球体を月にかざす。
 確かに用途が分からなく全てが謎だ。
 装備欄にも反映されてないようだしー…。

 しばらくウルゼッタが月の光にかざしていたそれを眺めていると、金で描かれていた模様に一瞬光が宿る。


 「ーー…あれ?」

 「どうしたのですか?」

 「なんかそれ、一瞬光らなかった?」

 「気のせいでしょう。それか月の光が反射しただけではありませんの?」

 「ーー…そうなのかなぁ。」


 それにしては優しい光だったような。。
 こうー…中から光ったっていう感じなのかな。


 「それはそうと、ナタリーはどうして起きたんですの? おねしょでもしましたか?」

 
 ウルゼッタが球体を窓辺に置いて私のもとへ。
 布団の中に手を潜らせて私の下半身周辺を確かめる。


 「ー…なんでそうなるの?」

 「だってナタリーって結構お子ちゃまなところあるじゃないですか。」

 「私そんな子供じゃないよ!」

 「あらどうでしょうか。」


 ガタンッ
 

 そんなやりとりをしていると突然外から大きめの音が。
 窓から覗いてみると、おじいさんー…ホーリー博士がせっせと何かを運んでいるようだった。


 「ー…何してますの?」


 ウルゼッタが窓を開けて博士に尋ねる。


 「起こしてしまったか、すまないの。」


 私も横から覗いてみるとそこには多くの装飾品や武器といった類いのものが積み上げられていた。


 「ー…あれ、これって。。」

 「そうじゃ。今日お前さんたちが倒してくれた魔物が持っていたものじゃ。早く研究をしたくてな、目につくものを全て運んでいたんじゃ。」


 ー…にしても膨大な量。あの場所から一体何往復したんだろう。


 「ー…ん?」


 積み上げられた武器や装飾品を眺めていると一枚の黒い大きな布が目に入る。


 「ウルゼッタ、あの布。」

 「ん? あれがどうしましたか?」


 「これがどうかしたか?」


 ホーリー博士がその布を持ち上げて私に見せる。
 結構大きい。大体ヒミコくらいだろうか


 「これは古代イルーナの国旗じゃよ。」


 「「古代イルーナ??」」


 「あぁ、ここルーナ国が創立した遥か昔、イルーナという文明がこの辺りであったんじゃ。」


 ホーリー博士は目を輝かせながら旗を見つめる。
 どうやらそのイルーナ文明では現在では考えられないような発展を遂げていたとか。
 ホーリー博士はイルーナ文明について語り出しちゃったけど、そんなのどうでもよくてー…。


 「ほら、ウルゼッタ。あの模様見てよ。」


 私はホーリー博士の持つ旗に描かれた模様を指差す。

 
 「模様ですか?」

 「うん。あれウルゼッタのその黒い球体に描かれている模様と似てない?」

 「ーー…確かに、言われてみればそうですわね。」


 ウルゼッタが謎のその黒い球体を手に持ち、ホーリー博士の持つ旗と交互に見比べる。


 「なに!? それは本当か!!??」


 ホーリー博士が私の言葉に反応。旗を持ったまま中に駆け込んできてウルゼッタの持つ球体をマジマジと調べだす。


 「た…確かにこれは古代イルーナの模様ー…これをどこで!!??」

 「えっと…ナルテアの果実から出てきたんですわ。ホーリーさんこれが何かわかるのですか?」

 「パッと見た限りは分からんがー…少し前の研究結果から、古代イルーナは月の光を利用した魔術を得意としていたらしくての。」

 「月の光ー…ですか。」


 ウルゼッタはその球体を再び月にかざす。
 すると月の光を浴びたその球体に描かれていた模様が柔らかく光だす。


 「あら。これは一体ー…。」

 「ほら! それだよ私がさっき言ったやつ!」


 球体から発せられる光がだんだん強くなってくる。


 「こー…これは…大変じゃ…大変じゃああーーー!!!」


 ホーリー博士は研究所に泊り込む助手たちを起こしに慌ただしく部屋を飛び出す。


 「ナタリー! これ、なんか中で動いてますわ!!」

 「え!? 爆発とかしないよね!!??」

 「なんでそういう恐ろしいこと仰るんですの!?」

 「だってそういう爆弾とかあるっていうじゃん!!」

 「ちょっと待ってください! 激しく動き出したんですけど!!」

 
 ウルゼッタが手に持つ球体がカタカタと音を立てながら大きく揺れだす。


 「ウルゼッタ! それ私を怖がらせるためにわざとやってるんじゃないの!?」

 「そんなことするわけないでしょう! ー…ではこれは本当に爆弾なんですの!!??」

 「早く捨てないと!!」

 「爆死は勘弁ですわーーー!!!」


 ウルゼッタが窓の外に向かって球体を投げようとするー…その時だった。


 ウィーン…という音とともに球体が上下綺麗に半分に割れる。
 そしてー……。


   
 「「ーー…は?」」



 私たちの前に現れたのは、手のひらサイズの女の子。
 背中につながっていた球体がそれぞれ左右に展開。その後機械の羽のようなものが上下に2本ずつ姿を見せた。
 


 女の子は静かに飛翔。窓辺で月の光を浴びながらウルゼッタを見下ろして一言。


 
  『イルーナ式機械人形・イルレシオン…起動しました。』 



 
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