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古代遺跡

128 ウルゼッタの想い

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 百二十八話  ウルゼッタの想い


 「ウルゼッタ! うしろ!!」

 「ーー…くっ!!」


 流石に数の暴力。
 数多いる魔物を相手にウルゼッタが敵う訳もなく、ジリジリと劣勢に立たされていっていた。


 「小賢しいですわね!!」


 ウルゼッタが振り向きざまにクリスタルソードを振るうも、攻撃力が足りないのか石像に当たった斬撃はキンと音を鳴らしながら弾き返されその反動でバランスを崩す。
 石像魔物もそんなウルゼッタの見せた隙を見逃さない。躊躇なく剣を振り下ろす。


 「まだまだですわ!!」


 体勢を崩しながらもウルゼッタはその攻撃に反応。片足を軸に上半身をぐるりと反転させて石像の斬撃をクリスタルソードで受け止めた。
 
 
 「ナタリー、そこからどうにかして出られませんの!?」


 ウルゼッタが大量の汗を流しながら私に向かって叫ぶ。


 「うん! やっぱり魔法は使えないみたいだし、この透明な結界みたいなのー…叩いても全く反応ないの!!」


 あれから何度か試みてはいるがやはり何度やっても結果は同じ。結界に向けての攻撃は吸収されていくだけだった。


 「それは本当にピンチですわねー…って、、あなたはそこで何をしていらっしゃるのですか!!」


 ウルゼッタが私を閉じ込めている結界の近くを飛んでいたイルレシオンにツッコミを入れる。

 
 『申し訳ありません。このお方を囲む結界の情報を収集しておりました。』


 イルレシオンは相変わらず無感情のままウルゼッタに視線を向けて答える。


 「え、そうなの!? なんか分かった!?」

 『はい。イルレシオン内部に蓄積されている情報を元に解析した結果、あなたを囲っているその結界は半永久型発動可能な古代イルーナ式の牢獄。あなたの生命反応を察知する限り起動し続けます。』

 
 「私が死ぬまで!?」


 『はい。』


 ー…とんでもない罠に閉じ込められてしまった。
 イルレシオンは私に情報を伝え終えるとウルゼッタのもとへと戻っていく。


 「イルレシオン! さっきの言葉は本当なのですの!?」

 
 ウルゼッタが石像の攻撃を紙一重でかわしながらイルレシオンに尋ねる。


 『はい。なので主人様はこの敵をどう倒すのか考えるのではなく…どう逃げるのかを考える方が賢明かと思われます。』

 
 「そんな選択する訳ありませんわ!!」


 ウルゼッタはイルレシオンに視線を一瞬向けて一喝。そのまま迫りくる石像に斬撃を浴びせていく。


 もちろん私もこのままじっとしてるわけにはいかない。
 魔力は無効化されていてもスキルは使用可能のようだ。現にウルゼッタはスキル【性の解放】の効力が効いてるみたいだし。

 
 「よし…! おいでマルくん!!」


 私はスキル【魔獣契約】で結界内にマルファスを召喚する。
 

 『マルファス再び参上しました!!』

 「うん! マルくん、おちんちん出して!!」

 『ふぇ!?』


 私はマルファスのおちんちんを素早く掴み、前後の擦って大きくさせる。


 『な…ナタリー様ぁ!?』

 「マルくん、【練乳ビーム】をこの結界に向かって撃ってみて! あれなら壊せるかもしれないし!」

 『わ…わかりましたぁー…!!』


 やがてはち切れんばかりに膨らんだマルファスのおちんちんから練乳ビームが勢いよく発射。
 ーー…しかし。


 「え、、うそ。。」


 結界はマルファスの放った練乳ビームを全て吸収。何も変化が起きることなくそのままの状態を保ち続けていた。


 『お…お役に立てず申し訳ありませんんー……。』


 疲れ果てたマルファスはそのまま消滅。魔法陣へと帰っていった。


 「そんな…、あれでも無理だったんですか…!?」


 その光景を見ていたウルゼッタも動揺を隠しきれないようだ。


 「イルレシオン、あの結界はどこかに操作している何かはないんですの!?」

 『はい。強いて言うならあのお方の足元です。』

 「では足元を破壊すればいいではありませんか!」

 『しかし真下には大きな水脈があります。そうすればここは一瞬で水没。お二人ともお陀仏です。』

 「そんな…それではどうしようもないではありませんか!!」

 
 ウルゼッタは石像を無視して私を閉じ込めている結界のもとへ。
 地面を強く蹴り上げて高く跳躍ー…勢いをつけたままクリスタルソードを振り下ろした。


 「ーー…!!?? なんでですの!?」


 渾身の一撃を外部から与えるもその結界にはヒビすら入らず。
 ウルゼッタはその絶望からか剣を振るうのをやめその場で立ち尽くした。
 

 『主人様。ここでそのような体勢を取るのは危険かと。』

 「いえ…これは無理ですわ。」


 戦意のなくなったウルゼッタを石像が後ろから石でできた棍棒で薙ぎ払う。


 『ー…主人様。』
 
 「ウルゼッターー!!!」


 棍棒はウルゼッタの横腹に直撃。ウルゼッタはそのまま宙を舞い数メートル先にドスンと音を立てて落下した。


 「とりあえず私のことは置いていっていいから、先にウルゼッタだけでも上に逃げてよ!」


 私はウルゼッタに向けて大声で叫ぶ。
 しかしその返答はー…


 「お断りしますわ。」


 ウルゼッタは肘をついて上半身を無理やり起こして私の方を振り向く。


 「でもー…!」

 「私、実はヴォラルの一件が終わった時から決めていましたの。ナタリー、あなたが何かを成し遂げたいと思った時…力になれるその日まで絶対一緒にいようと。」

 「ウルゼッタ…?」

 「でも…ここまでのようですわ。あなたがそこから出られずに死んでいくなら私もここで一生を終えます。」


 ウルゼッタのもとへ石像魔物がゆっくりと歩み寄り大きく剣を振りかざす。


 「ー…先に向こうへ行ってお待ちしてますわ。」


 石像魔物の剣はまっすぐウルゼッタめがけて振り下ろされた。




 「ウルゼッタああああーー!!!」



 
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