ここはヒロインのための世界です! 〜超ヒロイン推しのお助けキャラは、今日も周囲から溺愛されまくっている〜

雪葉

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学園編

みんなの恋愛模様

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「ギーゼラさんは、僕と同時期に生徒会に入ってね……」

 ハンス先輩は、ギーゼラ先輩との馴れ初め? を語り出してくれた。

「その時からとっても優秀で、仕事の出来る人だったんだ。君たちにもわかるだろう? あの鋭利な瞳に映されている知性、整った美人な顔立ち、所作もすごく綺麗でさ……」
「は、はい……」
「一年生の時、仕事でわからないことがあるといつも助けてくれた。おっとりしているように見えるけれど、彼女、とても仕事が早いでしょう。いつもあの笑顔で「大丈夫ですよハンスさん」と僕を助けてくれるあの姿が……僕は……!」
「あの、もうその辺りで……」

 そろそろ止めないと永遠に続きそうなので待ったをかける。隣に居るアイラちゃんも苦笑いだ。
 ハンス先輩はごめんごめんと笑顔で謝った。この人、普段は穏やかで大人しいのに好きな人のことになるとめっちゃ饒舌だな……。オタクかな……?(それに関しては人のこと言えねえだろっていうツッコミはよくわかる)

「ええと、それで、ハンス先輩はギーゼラ先輩を学園祭デートに誘おうと思ってるんですね」

まぁ、ヴィクトールは「友人とでもいい」って言ってたけど、大抵は婚約者か好きな人を誘うのが定番になってるからなぁ。この学園祭。

「うん。僕はもう心に決めたよ」
「心に決めたにしてはまだ全然悩んでるように見えましたけど」
「うっ! ……だ、だってしょうがないだろう……?」
「しょうがない??」
「その、……ギーゼラさんは、会長のことが好きじゃないか」

 そう言われて、「あ、やっぱりそうなんだ」と心の中ですとんと納得がいった。
 いや、単なる憧れ? の好きなんじゃないのかって思ってたから、ほんとに恋愛としての好きだったんだなぁと。
 だって本人から直接聞いたわけじゃなかったから、どっちなのか判別つかなかったんだ。

「それに、彼女も今年は会長を誘うと思う」
「えっ、なんでそう思うんです?」
「だってこれを逃したら会長は卒業してしまうだろう? 去年は色々あって誘えなかったみたいだし……」
「ああ、そっか……。そういえば兄様は三年生だったな……」
「……君、あんなにヴィクトール会長に大事にされてるのに、意外と会長に冷たいよね」
「えっ?! そんなことないですよ?! ねっ、アイラちゃん!」
「え、ええーと……」

 思わぬ発言にアイラちゃんへ助けを呼んでしまったが、当の本人はさっきから困った顔で私たちの会話を聞いているだけである。困らせてほんとにごめんね!

 すると、ふぅ、と大きく息をついたハンス先輩が言う。

「……でも、僕だって彼女を想う気持ちは一緒だ。遠慮した方がいいかなとか、勝算なんてないんじゃないかとか考えるより、行動あるのみだよね」

 その顔は決意に満ちている。
 それを聞いた私たちは「そうですよ!」とハンス先輩にエールを送った。恋する若者よ、頑張れ。

「とにかくやってみるべきだと思います!」
「そうですね……。私にはそういった恋愛ごとはよくわかりませんが、行動してみないと答えが出ないってことなら、何となくわかります」

 ねえ今天使が「恋愛ごとは分からない」って言った?! 言っちゃった?! えーん、鈍感系主人公なのはよくよく分かってるけど君は乙女ゲームの主人公なんだよ~! もうちょいアンテナ張らないとダメなんだよ~!

「……うん、そうだね。二人とも、話を聞いてくれてありがとう。なんだか目の前が晴れたような気持ちになったよ」

 そう言ってハンス先輩は手を振りながらその場を後にした。

 残された私たちで、なんとなくひそひそと話し合ってみる。女子の内緒話って感じで楽しい。

「ハンス先輩、上手くいけばいいですね」
「ね。でも、ギーゼラ先輩にも悲しんでほしくはないな……もういっそ三人で回るとか」
「どんな修羅場ですかそれ」

 確かに。

「それはそれとして、アイラちゃん」
「はい?」
「アイラちゃんは文化祭、誰と回りたいとかある? もちろん男の人で!」

 笑顔で尋ねてみれば、彼女はうーん、と少し悩んだ顔をした後。

「無いかな」

 はい。いつもの通り、一刀両断の返答が来ました。

(お助けキャラとしては悲しい限りだよ……)

 でもまぁ、学園祭イベは向こうから誘いに来るし! アイラちゃんに興味がなくとも、向こうの男子達が興味深々だと思うし!

 ……大丈夫だろう。多分。

 私は一抹の不安を覚えた胸中をとりあえず置いておいたのだった。


 *


 学園祭の準備に関しては特に何も起こらなかったので割愛です。
 しょうがない。地味な書類仕事しかなかったんだもの。さすが陰で学園を支える生徒会やで……。

 でも忙しいのは確かだった。やること多すぎて生徒会なんか入んなきゃよかったと思うレベルだったよ。

「うんしょっと、よーし。これはここに置いて……」

 何やかんやで学園祭当日。
 休憩時間まではたくさんの仕事があるので、皆走り回っていた。もちろん私もその内の一人です! 逃れられぬ仕事!!

「ふぅ。重かったぁー」

 パンパンと手を叩いて払う。
 安定の雑用係だよ。

 荷物を教室に運び、しっかりと机に置いたことを確認してから教室を出た。

 そして、曲がり角を曲がろうとした時だ。

「あの、会長……!」

(あれ?)

 突然ギーゼラ先輩の声が聞こえてきて足を止めた。
 あれ、何か……焦っているような?

「ん?」

 ヴィクトールがギーゼラ先輩を振り返る。

「お話が、あるのですけれど……!」
「私に……? 何かな」

(お、おおっと?)

 何だかただならぬ気配を感じて、その場に立ち竦んだ。なんか私が出てっちゃ駄目な気がして。

「あ、あの、その……」

 彼女の顔は真っ赤だった。汗をたくさんかきながら、それでも潤んだ瞳で、ヴィクトールを真っ直ぐに見つめていた。

 ……まさかこれって。

「今日の学園祭、わ、わわ、私とっ! 回ってくださいませんか……!!」
「え……? でもギーゼラ、学園祭は友人や、好きな人と回るのが定番で……」

 そう問い返したヴィクトールに、ギーゼラ先輩は一瞬だけ、はく、と口を開け閉めしてから。

「そ、……それで、合ってます。
 私は、会長のことが……っ、……好きです!!」

 と、宣言したのだった。


(やばい告白現場見ちゃったーーーッ!!)

 一方私。
 己の迂闊さに後悔しまくった。なんて所に遭遇してるんじゃ、お前は!!

 どうしよう。音も立てず忍びのように過ぎ去るべきか。
 そんなことを考えていた自分の耳に、ヴィクトールの静かな声が聞こえてくる。

「私は──」

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