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リビングで待っていたリオンにスプーンを渡す。
「ゆっくり食べろ」と声をかけないといけないほど、一口で食べようとするリオンに、二人して笑った。
口元についたプリンをぬぐってやっていると、藍生がぼそっとつぶやくのが聞こえてきた。
「誠也さんって、なんかパパみたいだ」
「へっ、パパ?」
じっとこっちを見ている藍生と視線がぶつかる。
「いや、手馴れてるからすげーなって」
「ああ、十歳以上年の離れた弟がいてさ……」
俺が言いかけたとたん、プリンを食べ終わったリオンが席を立った。
「待てって、どこいくんだよ」
「かえるー」
慌てて藍生が追いかけた。けれど、つかまえてもバタバタと暴れるリオンを、俺が抱きかかえて藍生に向き直った。
「リオンの着替え持ってきたよな?」
「う、うん」
「じゃあ、脱衣所に置いといて。こいつと一緒に風呂入ってくるから」
「は、はい!」
藍生がリビングの端に置かれた荷物を取りにダッシュした。
俺は、腕の中で「いやー」と不満そうな声をあげているリオンをつれて、脱衣所へ向かった。
「さあ、リオンくん。どれがいい?」
リオンの前に、いろんなキャラクターが描かれた入浴剤の小袋をならべた。
プリンのときと同じように、帰ることから意識をそらすことに成功したようだ。
「わぁー! えっと、これと、これとこれ!」
リオンは、手に持てるだけの入浴剤の小袋をかかえた。
「その中で、一番好きなものを教えて」
「ん。じゃあね。えっと……これ!」
持っていた小袋を床に置いて、その中から一つを手に取ってかかげた。
それは、アニメキャラの人形が入ったものだ。
「誠也さん、これ趣味なんですか?」
着替えを持って戻ってきた藍生が聞いてきた。
「違うよ。この冬に商店街で引いたくじ引きで、子ども用の入浴剤セットが入った福袋があたったんだよ。そん時は、外れくじだと思ったけど、こんなとこで役立つとはな。そうだ、リオンくんが選んだぶん、帰るとき、持って帰って」
「そんな悪いし」
「俺が使うと思うか。それより、喜んでもらえる人が見つかってなによりだ」
「ありがとうございます」
藍生が礼を言ったところで、すでに服を脱ぎおわったリオンが背中をたたいてきた。
「はやく、いれるのー」
「わかった。これ、お風呂に入れてきな」
浴槽に続く扉を開けると、リオンはぱっとかけよってお湯のなかに、なげた。
きゃっきゃと喜ぶリオンの髪と体をあらい、お湯につかる。
お風呂からあがって、リオンの練る支度をして一息ついたときには、十一時を過ぎていた。
リオンは歯磨きをしているあたりからこっくりこっくりし始め、布団に入ると、すぐに寝てしまった。
布団は、藍生が持ってきた子ども用布団で、それを寝室に敷いた。
「おつかれさん」
リビングのソファーで一息ついている藍生に、冷えた麦茶が入ったグラスをわたす。
「いろいろすみません」
「いいけど、大丈夫か」
「はい」
藍生はぐいっと麦茶を一気に飲み干すと、ソファの端によった。
「誠也さんこそ疲れたでしょ。座ってください」
「ありがと」
緊張する。俺、くさくないよな。
リオンと一緒に風呂に入ったものの、それから髪をかわかしたり世話をやいていると、どうしても汗をかいていた。
気にしつつ、となりに座ると、うかがうようにこっちを見た。
「リオンのこと話してもいいですか?」
「ああ」
「リオンは、オレの姉の子です」
「お姉さん?」
「二つ上の姉で、奈々江っていいます。姉さんは高校を卒業したら家を出ていってしまって。もともと、父さんとはよくケンカをしていたけど、自分の店を持ちたいっていう姉さんの意見にに、父さんはダメだの一点張りで」
「それが原因で出ていったのか」
「はい。出ていってから家に帰ってきてないから、父さんはリオンのこと知らないと思います。というオレも数回しか会ってなくて。リオンをオレ一人で預かったこともなくて助かりました」
と言われて、はっと気づいた。
「もしかして、朝、藍生んとこからでてきた女性って、お姉さん?」
「出会いました? 昨日から泊まっていて。明日の夕方帰ってくるはずなんですが……。あと、リオンの父親が、道端で言い合いになっていた相手です」
「え?」
「あれ、姉さんの旦那さんで、見た目は優しそうな人なんだけど、ギャンブル好きで。その人は姉さんと会社を共同経営していて、その会社のお金にまで手を出したらしくって。それが一度や二度じゃなそうで、姉さん、マジ切れして、今朝から話合いに行きました」
「……」
「オレ、その人に初めて会ったとき、父さんに似てるって思ったんすよ。姉さん、出ていっても父さんのこと好きでいたのかなって、どこかでほっとしたのに。だからこそ、なんか許せなくて。オレが怒ることじゃないのかもしれないんだけど、もやもやしてて、……すんません。愚痴ばっかで」
無理して作り笑いを浮かべる藍生になんて声をかけたらいいのだろう。
本当なら、ぎゅっと抱きしめてやりたい。
なにか、気を晴らすような……。
「明日、仕事は休みだよな?」
「はい」
「ゆっくり食べろ」と声をかけないといけないほど、一口で食べようとするリオンに、二人して笑った。
口元についたプリンをぬぐってやっていると、藍生がぼそっとつぶやくのが聞こえてきた。
「誠也さんって、なんかパパみたいだ」
「へっ、パパ?」
じっとこっちを見ている藍生と視線がぶつかる。
「いや、手馴れてるからすげーなって」
「ああ、十歳以上年の離れた弟がいてさ……」
俺が言いかけたとたん、プリンを食べ終わったリオンが席を立った。
「待てって、どこいくんだよ」
「かえるー」
慌てて藍生が追いかけた。けれど、つかまえてもバタバタと暴れるリオンを、俺が抱きかかえて藍生に向き直った。
「リオンの着替え持ってきたよな?」
「う、うん」
「じゃあ、脱衣所に置いといて。こいつと一緒に風呂入ってくるから」
「は、はい!」
藍生がリビングの端に置かれた荷物を取りにダッシュした。
俺は、腕の中で「いやー」と不満そうな声をあげているリオンをつれて、脱衣所へ向かった。
「さあ、リオンくん。どれがいい?」
リオンの前に、いろんなキャラクターが描かれた入浴剤の小袋をならべた。
プリンのときと同じように、帰ることから意識をそらすことに成功したようだ。
「わぁー! えっと、これと、これとこれ!」
リオンは、手に持てるだけの入浴剤の小袋をかかえた。
「その中で、一番好きなものを教えて」
「ん。じゃあね。えっと……これ!」
持っていた小袋を床に置いて、その中から一つを手に取ってかかげた。
それは、アニメキャラの人形が入ったものだ。
「誠也さん、これ趣味なんですか?」
着替えを持って戻ってきた藍生が聞いてきた。
「違うよ。この冬に商店街で引いたくじ引きで、子ども用の入浴剤セットが入った福袋があたったんだよ。そん時は、外れくじだと思ったけど、こんなとこで役立つとはな。そうだ、リオンくんが選んだぶん、帰るとき、持って帰って」
「そんな悪いし」
「俺が使うと思うか。それより、喜んでもらえる人が見つかってなによりだ」
「ありがとうございます」
藍生が礼を言ったところで、すでに服を脱ぎおわったリオンが背中をたたいてきた。
「はやく、いれるのー」
「わかった。これ、お風呂に入れてきな」
浴槽に続く扉を開けると、リオンはぱっとかけよってお湯のなかに、なげた。
きゃっきゃと喜ぶリオンの髪と体をあらい、お湯につかる。
お風呂からあがって、リオンの練る支度をして一息ついたときには、十一時を過ぎていた。
リオンは歯磨きをしているあたりからこっくりこっくりし始め、布団に入ると、すぐに寝てしまった。
布団は、藍生が持ってきた子ども用布団で、それを寝室に敷いた。
「おつかれさん」
リビングのソファーで一息ついている藍生に、冷えた麦茶が入ったグラスをわたす。
「いろいろすみません」
「いいけど、大丈夫か」
「はい」
藍生はぐいっと麦茶を一気に飲み干すと、ソファの端によった。
「誠也さんこそ疲れたでしょ。座ってください」
「ありがと」
緊張する。俺、くさくないよな。
リオンと一緒に風呂に入ったものの、それから髪をかわかしたり世話をやいていると、どうしても汗をかいていた。
気にしつつ、となりに座ると、うかがうようにこっちを見た。
「リオンのこと話してもいいですか?」
「ああ」
「リオンは、オレの姉の子です」
「お姉さん?」
「二つ上の姉で、奈々江っていいます。姉さんは高校を卒業したら家を出ていってしまって。もともと、父さんとはよくケンカをしていたけど、自分の店を持ちたいっていう姉さんの意見にに、父さんはダメだの一点張りで」
「それが原因で出ていったのか」
「はい。出ていってから家に帰ってきてないから、父さんはリオンのこと知らないと思います。というオレも数回しか会ってなくて。リオンをオレ一人で預かったこともなくて助かりました」
と言われて、はっと気づいた。
「もしかして、朝、藍生んとこからでてきた女性って、お姉さん?」
「出会いました? 昨日から泊まっていて。明日の夕方帰ってくるはずなんですが……。あと、リオンの父親が、道端で言い合いになっていた相手です」
「え?」
「あれ、姉さんの旦那さんで、見た目は優しそうな人なんだけど、ギャンブル好きで。その人は姉さんと会社を共同経営していて、その会社のお金にまで手を出したらしくって。それが一度や二度じゃなそうで、姉さん、マジ切れして、今朝から話合いに行きました」
「……」
「オレ、その人に初めて会ったとき、父さんに似てるって思ったんすよ。姉さん、出ていっても父さんのこと好きでいたのかなって、どこかでほっとしたのに。だからこそ、なんか許せなくて。オレが怒ることじゃないのかもしれないんだけど、もやもやしてて、……すんません。愚痴ばっかで」
無理して作り笑いを浮かべる藍生になんて声をかけたらいいのだろう。
本当なら、ぎゅっと抱きしめてやりたい。
なにか、気を晴らすような……。
「明日、仕事は休みだよな?」
「はい」
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