週末の金曜日

立樹

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そんな、豆鉄砲を食ったような顔をしている青木に、ニヤッと今度は俺が笑いながら、

「スマートな青木もいいけど、取り繕っていない今の方が、いい」
と、思った事を口に出した。
言うだけ言うと、青木の手を離して座ろうとした。

けれど、今度は青木が、離そうとする俺の腕を掴み、顔を近づけてきた。

「な、なんだよ」
「『いい』って言ったよな」
不敵な笑みを向けてくる青木に、不気味なものを感じ、身体を後ろにそらす。

「い、言ったよ。それがなんだよ」
「佐藤はショックだって言ってたけど、内と外じゃ違うだろ?」
「ああ」
「一旦、仮面をつけちゃうとさ、剥がすタイミングが分からなくなるんだよね」
「うん、それはさ、分かったから、離してくんない?」
さっきらか掴まれている、自分の手首を見ながら言った。

青木も自分が握っている手を見て、俺はてっきり『悪い』と言って放してくれるのかと、思ったのに、青木の行動は俺の想像を超えていた。

手を握ったまま、自分の方へと引き寄せると、そのまま自分の口元へともっていくと、俺の指に口をつけた。

青木の唇の感触が指から伝わってくる。
それは、思っていた以上に柔らかかった。

驚きで、青木を穴があくほど見つめた。

どういうことだ――。
頭の中が一瞬にして真っ白になる。

そんな俺を、面白そうに、目をすがめながら見てくる。
その目が、いつもの佐藤とは違い、異様に艶めかしい。

鼓動が早くなる。

早鐘を打つ鼓動。
静かな部屋に響くほどにドクドクと脈を打つ。

離れた唇の感触がまだ指に残る。

俺は掴まれている手を振りほどくことも出来ずにいた。

壁に掛けている時計の秒針の音、そして、冷蔵庫などの機械音。
外は雨が止んだのか、時折、通る車の音以外しなかった。
俺も、青木も何も言わなかった。


もう一度、指に口づけた後、青木はやっと俺の腕を離した。

離された腕をまだ動かすことができずに、そのまま宙に浮いたままになっていた。

「青木……?なんで?」
俺の口からでた言葉なのに、まるで他人が言っているようだった。
そんな、俺に、佐藤は口角だけをあげながら、
「なぜだと思う?」
俺に聞いてきた。

「え? いたずらだろ」

「そうじゃなかったら?」
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