週末の金曜日

立樹

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ぼんやりとその光景が次々と思い出されてきた。

あの後、盛大にやり合った。
5人をノックアウトした後、帰る途中、渦中の青木とすれ違ったのを思い出した。

「な、な、お前、そんなもん録音してたのか!?」
と、驚く俺の顔を見て、

「まあね。職業柄持ち歩いてるのさ。で、やっと思い出してくれた?」
と、ニッコリと笑った。

「ああ。青木、あの後、何かしただろ?」
「どういうこと?」

「俺、絶対、いい所で謹慎処分だと思ってたんだよ。なのに、注意だけでお咎めだしだった。それとは反対に、奴らの姿はあれから見ていない」

何をした――?

と、じっと青木の目を見つめる。

俺の視線を避けることなく、受け止めるように優しい目で俺を見ながら青木は答えた。
「何も――。ただ、このテープレコーダーを天野に聞かせただけさ」

「……。それだけじゃないだろ。そんなことで、奴が下がるはずない」
「まあ、いいじゃないか。佐藤、この件については、今まで忘れていたぐらいだろ?」
「うっ……」
そう言われたら、もう言い返すことができない。


苦虫を嚙み潰したような顔をしているだろう俺に、再度顔を近づけてくる青木に
「ち、近い!!」
と、言い、両手で青木の肩を押し戻した。

青木はというと……、クククッと面白そうに笑っている。
「なんで、笑ってんだよ?」
ふくれながら聞く俺に、
「照れてるのが可愛くってツボった」
と、お腹を抱えて笑い出した。
「可愛いはいらん!」
フイッと横を向くと、頬にひんやりとした感触があったった。
よく見たら、青木の手だった。
そのまま、くいッと顔を青木の方へと向けられる。

ただ、それだけの事なのに、ドクっと鼓動が跳ねる。
青木と目が合うと、もう笑っていなかった。
真剣な目が俺を見つめていた。

一体、どれがホントの青木なんだよー!
と心の奥で叫びながら、血の気が上昇していくのを止めることができなかった。
この、早い鼓動も、顔に血が昇るのもアルコールのせいだと思いたかった。

頬に手を添えたまま、青木は口を開いた。
「他にもあるんだけど、憶えてないよね?」
首を傾げながら聞く青木に、いろいろとやらかしている俺は、冷汗たらたらだ。
「5年前の一件が、俺にとっては忘れられない事だったんだよ。同期だけれど、部署も違う、そんなに話したこともない、それなのに天野に向かって啖呵を切るお前に俺は惚れたんだ」
 
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